時を刻む友人
この時計はもう動かないんだ。
長い……長い時を刻んでくれたんだ。
僕が子供の時からずっと。チクタクチクタクってね。
静かにしっかりと確かに刻んでくれた。
僕が大きくなって恋をして、好きな子を想っているときも。
時が経って大人になっても。
結婚して妻と愛し合っていたときも。
どんな時もこの時計はずっと一緒にいたのさ。
子供が生まれてきたときも。成長して大きくなっていった時も。
いつだってこの時計は僕のそばにいたのさ。
僕が年を取っていって、子供が大人になっていった時も。
僕に孫ができた時も。
僕の、僕の周りのみんなのそばに、この時計はいたのさ。
まるで僕と時計が繋がっていたように。
でも、この時計はもう動かない。僕ももう動けない。
僕はもう長くないから。時計ももう長くないから。
寿命なんだ。僕も時計も。
でもね、楽しかったんだ。時計と過ごした生活は。
僕だけの宝物なんだ。もう僕も時計も動けないし動かないけど。
最後に言うよ。
僕と一緒にいてくれてありがとう。ずっと僕のそばにいてくれてありがとう。
君と過ごした日々を忘れないよ。願わくば次の人生も君のそばにいたいな……
そう言ってボクのおじいさんは息を引き取った。
おじいさんの時計は、おじいさんの死と一緒に動かなくなった。
まるで長年寄り添った夫婦のように。
ボクもそんな人生を送りたいと思いながら、おじいさんに別れを告げた。
『さようなら』
《終》




