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鍵
今の人類は鍵を手にしてはいない、と誰かが言った。
再生させる力など今の人類には無い、と別の誰かが言った。
鍵を手にするなら再生の力が手に入るだろうか。
では、その鍵はいったいどこにあるのか。
誰もが場所も日時もバラバラな中で異口同音に答えた。
鍵の場所など知らないから分からない、と。
鳥たちを養い抱く蒼天の抱擁の最奥なのか。
獣たちを養いゆく自然の大樹の果てなのか。
魚たちを養い呑む大海の境界線の先なのか。
あるいは、あらゆるものを統べる結末に崩された楽園なのか。
誰もが調べてみたが膝をつくほどまでに諦めた。
なぜなら、濃密な虚無に煌めく闇に至ったとしても。
遥か遠くに輝く光の輪にたどり着いたとしても。
再生の鍵を手にする確率は、あまりにも低いのだから。
やがて、人々は望むだろう。再生の鍵が地上に到来することを。
待ち望んでいるなら、再生の鍵のほうから地上に近づいてくれるだろう、と。
遠すぎる距離を向こうから縮めてくれるだろう。
しかし、そう考えることもまた、あまりにも低い確率でしかないのだ――。
《終》