墓地での戦い
深夜の集団墓地は今、一つの戦争に巻き込まれていた。
対人の戦争ではない。
対アンデットの戦争だ。
数ヶ月前の戦時中に現れた死霊使いによって、集団墓地はアンデットの巣窟となっていたのだ。
そして、死霊使いの手によって、再び戦争が引き起こされようとしていた。
その窮地に現れたのは、最強と名高い一人の格闘家だった。
彼は対アンデット用のナックルとグリーブを身につけると、アンデットの群れに突撃した。
常人だったなら、無謀と非難するだろう。
しかし、彼は最強である。
最強である彼は、アンデットたちの攻撃を回避しつつ、格闘技を繰り広げていた。
彼が回し蹴りを放てば、周囲のアンデットは吹っ飛び。
正拳突きをすれば衝撃波で吹っ飛ぶ。
すべてのアンデットが彼に近づくことができず、さらには彼の攻撃によって塵に還される。
戦争どころではない。駆逐だ。
アンデットたちは彼によって駆逐されてしまうのだ。
その事実を悟った死霊使いは、一つの策を思い付く。
死霊巨人を造り出すことによって、彼を葬り去ることを。
急激にアンデットの数が減っていくのを感じた彼は、気配を感じ身構える。
そして、それは来た。
即席によって造り出された存在。死霊巨人アンデットジャイアントが。
未知の強敵に出会った彼は笑った。獰猛な獣のように。
アンデットジャイアントは咆哮する。彼に対して。
威嚇は無縁。だが、彼は叫ぶ。歓喜ゆえに。
アンデットジャイアントと彼の激突。
しかし、押されたのはアンデットジャイアント。
激突した箇所がバラバラとなり塵に還っていく。
悲鳴のような叫びがアンデットジャイアントから漏れる。
しかし、彼は容赦なく激突する。
突きも蹴りも繰り出して、爆裂拳をぶつける。
一方的な連撃がアンデットジャイアントを滅びに近づける。
破散箇所が次々と塵に還っていく。
回避する術もなく。ひたすら一方的に。
そして、アンデットジャイアントの頭部が砕かれ、すべての部位が塵に還った。
残る敵は死霊使いのみ。
アンデットジャイアントが倒されたのを見た死霊使いは、逃亡を図ろうとした。
だが、それはできない。
彼以外の人間が、遠距離から対アンデット用の包囲陣を完成させていたから。
距離も螺旋のように渦を巻いて、幾重もの包囲陣となっている。
死霊使いは逃げられないことを悟ると、彼の手によって滅ぼされた。
塵に還され、その塵をも太陽の光で焼かれることになったからだ。
夜明け前が過ぎ去り、太陽の光が昇る。
死霊使いであった塵は、煙を吐き出すように音を立てて浄化された。
これで、対アンデットとの戦争は終わった。
集団墓地にも平和が訪れるだろう。
彼はそのことを見届けると、どこかへと去って行った。
流浪の旅へとーー。
《終》




