トラブルイーター
とある書物に記された物語ーー
それは東西南北に張り巡らされたトラブルを模造刀が解決していく話。
東に食糧を強奪するトラブルがあれば、容赦無く切り捨てて。
西にトラブルによる苦難が満ちていれば、あらゆる剣技で払い抜く。
南に平和を脅かすトラブルがあれば、急所を穿ち。
北に戦乱のトラブルが密集していれば、徹底的に殲滅する。
刀身をトラブルで満たした模造刀は、魔剣に成り果てるかに思えた。
いや、すでに魔剣となっていたのだ。
《騒動喰らい》トラブルイーターに。
トラブルの諸悪は怖れた。自らを滅する力を有したトラブルイーターを。
ゆえに、東西南北に張り巡らした悪しきトラブルを自らの元に収束させた。
これ以上トラブルイーターに力を与えないために。
その目論見は一旦は成功したかのように思えた。
収束していくトラブルの中に、トラブルイーターが混じっていたことを悟らなければ。
トラブルの諸悪は自らの計算違いに気づいた時には、すでに手遅れだった。
トラブルイーターによって収束していったトラブルがほとんど喰われた後だったからだ。
策を取ろうにも何もできない。
ただ滅びるしかない。
自らの無力を悟ったトラブルの諸悪は、滅びを受け入れた。
最期に諸悪にふさわしい言葉を遺しながら。
曰く、滅んだとしても、別の諸悪が目覚めると。
曰く、世界に休息は訪れないと。
曰く、再びトラブルの諸悪が現れたとしても、トラブルイーターは滅んだあとだとも。
その言葉が事実となるかは分からない。
だが、トラブルイーターの始まりは単なる模造刀からだった。
ゆえに、形を変えながらもトラブルイーターは現れるだろう。
トラブルを吸い抜くことで、《騒動喰らい》トラブルイーターは産み出されたのだからーー。
《終》




