封印の聖剣
伝説に名を遺す勇者は、一振りの剣を地上に遺した。
石の台座に突き刺さっている、聖銀で作られた剣を遺したのだ。
地上を支配しようとした悪魔を封印するために。
簡単に抜けられぬよう、厳重に幾多の魔法をかけて。
だが、悠久の時が過ぎると、人々はすっかり忘れ去ってしまった。
石の台座に突き刺さっている錆びた剣が、悪魔を封印していることを。
そして、剣を抜いてしまえば悪魔が解放されることを。
悲劇は忘却から始まる。そして、思い出した時にはもはや手遅れ。
子供の悪戯で台座から抜かれた剣は、封印する力を失い、悪魔を解放させてしまった。
地上を支配しようとした悪魔を。
後悔しても手遅れだ。
新たなる勇者が現れ、悪魔を撃退しなければ、地上は悪魔の手に落ちる。
だが、新たなる勇者が現れる前に、悪魔を解放してしまった人々は助からない。
悠久に渡り封印された悪魔の憤怒の矛先が向けられるからだ。
自業自得である。
やがて、地上に新たなる勇者が現れ、再び悪魔を封印するだろう。
より強固な封印を施し、剣だけでなく武具を持って分割し封印する。
しかし、悪魔を封印したとしても、悪魔に殺された生命は戻らない。
自業自得だとしても。
ゆえに、人々は忘れてはならない。
封印の伝説を忘れ去ってしまったことが、悪魔解放のきっかけとなったのだと。
伝説はなおも続いていく。時には過ちを繰り返しながらも。
伝説はなおも続いていく。悪魔を永遠に渡り封印するために――。
《終》




