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火口のような夕暮れのなかで
火口にいるように思わせる夕暮れのなかで、女子高生が一人佇んでいる。
どこの高校なのかは分からない。
だけど、夕暮れのなかにいる彼女がきれいだと思う。
思わず目を引いてしまうほどにだ。
何らかの芸術作品のように感じてしまう。
もし、画家がその場にいたなら、夕暮れのなかにいる彼女をモデルに絵を描いてしまうだろう。
さらに、写真家であったなら、夕暮れのなかにいる彼女が最も美しい瞬間を写真に撮るだろう。
また、バーテンダーであったなら、夕暮れのなかにいる彼女をテーマに、若さと夕陽が混ぜ合わされたカクテルを作り出そうとするだろう。
そして、小説家であったなら、夕暮れのなかにいる彼女というシーンを描くために、物語を膨らますだろう。
私は目の前に映る、火口にいるように思わせる夕暮れのなかにいる女子高生を見て、感じたことを表すなら、こう言うだろう。
『あの夕暮れのなかにいる彼女は、あらゆる芸術作品の可能性を秘めている』と。
名前も何もかも分からないが、それで良いと思う。
無用な詮索をすべきじゃないからだ。
ただ、不意に見つけたあの美しさを見て、心が動かされたという事実があるだけで。
それだけで私は十分なのだから――。
《終》




