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墓地に咲かせる花
墓地に咲くのは何の花だろうか。
蒔かれた種によるかも知れない。
墓地に咲くのにふさわしい花は何だろうか。
星の竜の言葉が過る。
「血に咲く雛罌粟の花は戦場の墓標にふさわしいだろう」
埋葬者の命日を願う花はどれだろうか。
生前に好きだった花がふさわしいだろうか。
太陽の巫女の言葉が過る。
「明るい夏の象徴の向日葵の花には向日葵畑がふさわしいものよ」
死者のために供える花は何が良いのだろうか。
墓地を彩るのにふさわしい花は何だろうか。
森林の最奥に住まう魔女の言葉が過る。
「この世とあの世を繋ぐ葉と花が交えることのない彼岸花がふさわしいと思うわ」
遺された遺族の心を慰める花はどんな花が沁みるのか。
決意を抱くのにふさわしい花はどれだろうか。
絶やさぬ祈りを捧げる聖女の言葉が過る。
「希望の花言葉を持つサンザシを活けるのがふさわしいですね」
墓地の管理人は種を蒔く。様々な花の種を墓地の近くの畑に蒔く。
心の気休めだとしても墓に供える花を育てるために種を蒔く。
見た人の笑顔を見るために。埋葬された死者たちを慰めるために。毎日の命日のために。
静かにそっと、種を蒔いて育てていく。
今日も明日も、未来が続いていく限り――。
《終》




