恋人とのんびりしました。-1
メシも食べて一息つくと、俺の恋人様はまだ朝なのにぐったりしていた。
「どうした?……あ、昨日の夜、無理させ過ぎたか?」
このあと、めちゃくちゃ怒られた。
いやだって、朝からぐったりされたら、そう思うだろ。終わったあと「疲れました」っていう様子をありありと見せられて、シーツに沈む背中がとても綺麗だと思った。
「あー……まぁ、いきなり泡になってたら色々と思うこともあるよな?あんま思い詰めんなよ?今日はのんびりしようぜ」
このあと、めちゃくちゃ怒られた。
いやだって、恋人様が泡になってたら、そう思うだろ。俺の恋人様は意地っ張りな反面、繊細な心の持ち主なんだぞ。そりゃあ、疲れの原因が泡になったことだ、ってことくらいすぐにわかるって。
……セクハラをしたのは、何か構って欲しかったからだ。怒られてでもいいから、構ってほしいだろ。恋人だぞ。
「といっても、何も出来ねえしな……DVDでも借りてくるか?」
普段の家デートといったら、まぁ何をするでもなく互いに好きなことしてるだけだったりする。こいつは、本を読んだり、コーヒー飲んだり、気が向いたら俺に構ってくれたりする。で、俺はそんなこいつを眺めている。
だけど、今日は恋人様はできることが少ない。俺はこいつを眺めていれば幸せだが、恋人様は違う。
いつも何かをしながら、チラとこっちを伺い、頬を染めながらも満足そうにしている。直接的に向かい合うより、同じ空間にいる雰囲気が好きらしい。だから、手持ちぶさたになると微妙に不機嫌になる。
「じゃあ、ちょっと借りてくるけど、一緒に行……かないのな。わかったわかった。留守番、頼むわ」
こいつが持ち歩ける状態になったから、四六時中腕の中にいてもらえるかと期待した。いやだって、恋人様が泡になってたら、そう思うだろ。
だけど、泡になって不足の事態が起きたら怖い、という気持ちがあるのだろう。外より家のほうが安全だからな。一番安全なのは俺の腕の中だっていつか思ってほしい。
「DVD、いつものやつでいいのか?……ああ、わかった。じゃあ、行ってくるわ」
確認すると、俺は恋人を残して家を出るのをとても全くもってこれ以上なく残念に思いながら、家を出た。
鍵をかけ、本当にかけたかを三回ほど確かめ、早く帰れるようにダッシュでDVDショップへと向かった。