恋人の反応を伺ってみました。
挨拶をしてみたが、眼前の恋人は変化なし。さっきまでと一緒で、滑らかな表面が光の加減で青っぽく見えるだけだった。
とは言っても、最近は人の姿であっても昔ほどは反応しないのだが。俺が『綺麗』『可愛い』『好きだ』『愛してる』って言いすぎたから慣れたのかもしれねえ。仕方ないだろ、だって事実なんだから。
付き合いたての頃は、ちょっと褒めたり告白しただけで顔を真っ赤にしてあわあわしていた。頬を染めて目元を潤ませて、と頼むから二人きりの時だけしてほしい表情だった。だけど最近は違う。
俺が何か言うと、ふんわりと笑って、鈴のような佳い声で「ありがとう」って返される。その笑顔が綺麗だわ可愛いだわで俺はまた惚れ直す。勿論、この表情も二人きりの時だけしてほしい。
昔の真っ赤な顔も大変愛らしかったが、今の反応はちょっと色っぽい。まぁ結局のところ、どちらも大好きだ。
「……あー、でも何だかんだ反応はあるんだよな」
ていうか、反応がないけどそもそも起きているのだろうか。それすらも判断できない。だって泡だから。
休日だから、普段なら別に寝ていても問題はない。休前日、っていうことで夜更かししたし。
でも、今は起きていてもらわなくては困る。
何故かって、俺はそろそろ起きるわけで。そして昨晩のあれこれで汚れたシーツを変えなければならない。休日に洗濯しないと色んなものが足りなくなる。
で、そのためには恋人に退いてもらわなくてはならないのだが、これが問題だ。
多分、今のこいつは自分で動けない。だって泡だから。
つまり、俺が動かさなくてはならない。
それはつまり、俺がこいつに、その、触れる訳で……。
その触れることについて、今の状況でほぼ確信を持って言えることが一つある。
……こいつ、服着てねえ。だって泡だから。
つまり、俺は服を着ていない恋人に触れる必要がある。俺としては嬉しいことこの上ないシチュエーションだが、恋人様は寝ている間にそんなことになったら流石に嫌だろう。
だから、退かす前に一声かけるのだが、それは聞いていてもらわなくてはいけない。だから、こいつが起きていないのは非常に困る。
「……仕方ねえな」
恋人の安眠を妨害するのは本当に申し訳ないが、もしかしたら既に起きてるのかもしれないけども、確実に起きている状況にするためにあることを思い付いた。
すうっ、と息を吸って肺に空気を溜める。そして、俺はそれを一気に吐き出した。
「好きだぁぁぁああああ!!!!!!!!」
大きな音がすれば起きるだろう、と俺は大声を出した。ご近所さんすみません。
ちなみに、叫んだ言葉は自然と心に浮かんだものだ。
「ふぅ……」
一息ついて呼吸を整える。
多分起きたよな、と恋人の様子を伺った。
「……あ」
眼前の恋人は、滑らかな表面が赤っぽく見えた。