恋人と風呂に入ろうとしました。-1
千里の道も一歩から。
向き合うって決めた以上、解決しなきゃならねえ問題はそれなりにある。俺は全部を一度にこなすなんて出来ねえ。
だから、一つ一つの問題を順番に解決していく必要がある。
で、最優先なのは、目の前に転がってる問題。
「風呂、どうするか……」
泡になったこいつの、風呂をどうするか、だ。
「普通に風呂に入ったら…………」
湯に入ったら、溶けて、排水口に……。
「………………」
……それ以上は考えないようにした。
「……ぐすっ」
あ、やばい。
考えないようにしたのに、涙出てきた。目頭を抑えるが、おさえきれなかった。
「うっ、うっ……あ、ああ。大丈夫……ぐすっ」
ぼろぼろ落ちる滴に恋人様が慌ててる。
今、しっかりしようって決めたばっかりなのに。つくづく俺ってやつは……。
「うん、うん……万が一があったら嫌だからさ、風呂場に近づくのはやめようぜ」
排水口には、絶対に近づけねえ。そう、心に誓った。
「……うん、悪い。泣いちまって」
気持ちを落ち着かせて、問題に向き直る。
「……ぐすっ」
……すぐには無理だった。
風呂の問題って、恐ろしいな。
「場所のことは、とりあえず後にして……」
場所の問題については、しばらく考えたくないからな。別のこと考えるか……。
「とりあえず、お前、1人で入れ……」
入れるか、と訊こうとしたところで、俺より頭がよくて察しのいい恋人様が赤くなった。
「……」
あと、それについては、これ以上話さないほうが良さそうな圧力を感じた。
多分、というか、ほぼ確実に1人じゃ入れねえよな。
つまり、これには俺の助けが必要で。
風呂ってことは、具体的には、洗うとか……。
そこで、思考がショートしかける。
「…………ぐっ」
考えないようにしたのに、鼻血出てきた。鼻頭を抑えるが、おさえきれなかった。