恋人が泡になりました。
誰に、という訳ではないが誰かに聴いてほしいことがある。
突然ですが、恋人が泡になりました。
「……」
人間は、本当に驚くと声がでなくなるらしい。
大好きで大好きで、それこそ世界中の何よりも愛している恋人と昨晩会った。
まぁ昨日の朝も一緒にいたし、一昨日の夜も当たり前のように一緒にいたのだけど、仕事で数時間離れていただけで寂しかった。
言っておくが、俺は寂しがりではない。寧ろ昔はずっと一人だった。
だけどこいつと出会ってからというもの、離れたら寂しいし、会ったら離しがたいし、もうずっと一緒にいたくて仕方ない。いっそ四六時中ずっと俺の腕の中にいてくれねえかな、と割と本気で思っている。この話の途中で動かなくなった弟は中々に失礼だと思う。
話を戻して。そんな恋人と一緒に夕飯を食べ、下らない話をしながら風呂に入り、空白に泣く体を寄せあって一つの布団で寝て、今に至る。朝起きたら腕の中にいたはずの質量が減っていて、焦って跳ね起きたら布団に泡が広がっていた。
何事か、と一瞬思ったが、次の瞬間には俺は自然と理解していた。
この泡は、俺の大事な大事な恋人だ、と。
確信を持ってそう言える。俺の、こいつに関する勘を舐めてもらっては困る。付き合う前から、半径数百メートルにこいつがいれば俺はその存在を感じ取れたんだ。
そこまではわかったが、そんな相手が泡になっていたら流石に悩む。朝日を反射してきらきらと輝くこいつは本当に綺麗だが、そんなことを言っていても仕方ない。第一、こいつはいつでも綺麗だ。
とりあえず、俺の少ない脳が出した結論は一つ。
「おはよう、今日も綺麗だな」
挨拶は大切だよな。






