番外編 魔動歩兵について
本日二本目。番外編で設定解説話です。
俺が魔動歩兵に転生して、そろそろ二か月。今までなんとなしに済ませてきたが、一度俺自身の事、魔動歩兵に付いてまとめようと思う。
まずは一般的な魔動歩兵について。
通常の魔動歩兵は、戦闘用の軍事兵器として設計されていて、人の装備がそのまま使えるように人と同じ姿形をしている。軍に正規採用されている物は頭髪もなく顔は無表情でまるで人形のように感じる。また、目は黒い瞳だけで白目がなく、人の体温…前世風に言うなら赤外線も見えるらしい。…この点は俺が劣ってるな。
活動源は魔素で、周囲の魔素を自動的に取り込んで蓄積。人工筋肉に魔素を流し込んで駆動する仕組みである。また人工筋肉は人の約十倍の力が出せるだけの性能があるが、非戦闘時は通常モードで常人と同程度の力に制限されている。
また反応速度も人間よりも遥かに早く、全力の戦闘モードはおよそ人間の一個小隊程度の戦力となる。
人より高性能である魔動歩兵であるが、欠点がない訳ではない。
まず人工頭脳の問題。知識と知性はあるが感情を司る自我がない。その為直感といった好悪感覚による瞬間的判断が出来ない。
そのため、戦闘中において先読みが出来ない。分析力はあるので時間的余裕がある場合…例えば戦術作戦会議などでは人の予想よりも的確にできる。しかし剣の打ち合いの最中など瞬間的な判断が必要な場合はできない。複数の行動予想を立て、どれが可能性として高いかを検証する…というステップを踏むので、予測する前に結果が出て役に立たないのだ。
また、自我がないので積極的な行動・思考もできない。そのため応用力がなく、行動も単純になってしまう。
なお、シルトガル王国の法で魔動歩兵に自我を乗せることは禁止されている。魔動歩兵が自発的に反乱することを恐れて作られた法であるのだが、実際は人造人間に自我を持たせる技術がまだ存在していないため、現状無意味な法である。…俺を除けば。
次に魔動歩兵は魔法を使うことができない。
これは魔法発動の仕組みを理解しないと納得し辛い事であるのだが、魔法士は呪文と動作で身体に魔術式に基づいた魔術回路を生成し、魔法を発動させる…という仕組みらしい。
それで魔動歩兵の場合、人工筋肉そのものが魔術回路で駆動するため、魔法発動のための魔術回路を生成することができない。仮に無理矢理生成できたとしても、元々の人工筋肉としての魔術回路が破壊され行動不能になって、最終的な魔法発動まで行けないのである。
余談であるが、一般的に普及している機械に応用された魔法技術は、事前に魔術回路が組み込まれ、スイッチで魔晶石に蓄えられた魔素が流し込まれ一定の動作を行うようになっている。前世の技術で考えるならば、魔術回路は電子回路。魔晶石は電池と言い換えることができるだろう。
* * *
次は特別仕様で設計された俺自身について判っている事をまとめる。
外見は十四歳くらいの少年で、栗色の髪にオッドアイと一般的な魔動歩兵とは大きく違っている。この外見はどう考えても設計者であるミリィの趣味だろう。
肉体的なスペックは、ミリィの設計では一般的な魔動歩兵と同じであった。しかし実測してみると通常モードはほぼ設計通りだが、戦闘モードは通常の魔動歩兵の約二倍。
かなりやばい物である。
また、武術修行して感じた事なのだが、肉体の精度が人間よりかなりいい。例えば剣の型を覚えようとする。本来であれば数日は同じ動作をして覚えるのだが、この身体では大体二回か三回もやれば最適化され覚える。さらに俺自身は前世が右利きだったので、何かを行う時は右手で行うが、実は左手でも右手とほぼ同程度の精度で作業をすることが出来る。つまりは両利きだ。
あとは、通常モードで訓練モードの魔動歩兵とやりあった経緯から、知覚速度や反応速度については通常モードでも人よりもかなり高い事がわかった。そうでなければ、あの動きに対応しきれない。
次に、あるまじきことに俺は自我持ちの魔動歩兵である。ばれたら法に乗っ取り解体処分物である。その為、俺は「ミリィの弟子見習い」として人間のフリをしているのだ。
中身は異世界で死んだ人間なので、人間のフリってのも変だけどな。
なお自我をもっているのは本来の設計ではなく偶然の事故らしい。
また、俺には補助頭脳という装置が追加されている。本来この身体を制御する人工知性は、この補助頭脳にインストールされている状態だ。ただ、この補助頭脳をどういう意図で搭載しているのかは、今のところ不明ではあるが。
一応、今のところはちょっと高性能な魔動歩兵程度の存在と思えるが、まだなんか俺自身が気づいてない機能がありそうである。




