第2話 名前をつけよう
前回から時間的に続いています。
状況説明。
俺、先ほどまでミリアエルの着ていた白衣着用。中身全裸。
目の前のミリアエル、真紅のジャージ上下。
本にあふれた彼女の書斎の応接セットにて、向かい合って座る裸白衣ショタと赤ジャージ・アラサー女。
…なに、この混沌?
あぁ。きっとこれは夢だ。
<<否定。現実。十七歳。>>
…逃げ道を塞ぎますか、補助頭脳くんは…って十七歳?
<<訂正。赤ジャージ十七歳乙女。>>
…………。
<<再答。赤ジャージ十七歳未婚処女。>>
…なんか色々情報追加されていってるが、なんで十七歳に拘るんだ補助頭脳くん。
<<……死。>>
怖いよっ!返答フォーマットが今までと違うしっ!
…というか何故か補助頭脳くん自身が怯えてる雰囲気だな。
<<参照。>>
突然、補助頭脳から非言語情報…要は画像イメージが流れ込んできた。
そのイメージを言語化すると大体こんな感じ。
まるで鮮血に染まったような深紅のジャージを着た般若が、ドス黒いオーラを炎のように全身から吹き出しながら掴みかかってくる鬼気迫る情景。効果に『ゴゴゴ…』というゴシック体ベース飾り文字貼り付ければ完璧。
……あ、死んだわコレ…。恐怖突き抜けて諦めまで逝けるわ。
わかった。彼女の年齢については触れないで置く。
…まぁ、年齢なんてどうでもいいか。そういう事にしておく。
いのちだいじに。
ミリアエルは口にしてたティーカップを置くと、俺を見て言った。
「さて。これからあなたをなんて呼びましょうか。」
「一応、前世は『ナカタイチロウ』って名前ではあったがな。」
「…そのまま名乗る?変な名前だけど。」
どうしようか、ちょっと迷う。
前の人生と繋がりあろうがなかろうが、あまり関係ないしなぁ…
「いっその事、心機一転新しい名前でいいかもな。」
俺がそう答えると、ミリアエルは嬉しそうにほほ笑んだ。
「じゃあ、新しい名前考えよっか。う~ん。」
口元に指を添えて思案するミリアエル。しばらく思案してポツリと
「あ~るナカタ」
「待てやっ!なんでそれがでる!どうしてでる!屈辱のあだ名がなんで出てくる!」
「ん~…なんとなくのひらめき?ダメ?」
「却下だ却下!」
嫌な思い出だ。名前が似ているからと古いマンガのキャラクターっぽいあだ名で呼ばれ続けた小学生の日々…。ロボットじゃないよ。魔動歩兵だよ。
「じゃあRe:ナカ…」
「なんで前世の名前絡める!Re:って返信タイトルかよ!帰れ言ってるのか!?」
「ん~…神の呼び声?」
「そんな神は海の底に沈めてしまえ!」
…なんかちょっと頭痛がしてきた。
魔動歩兵作ったりするから、頭がいいと思っていたんだが、ネーミングセンスはかなり妖しい。
「じゃあポチ。」
「犬の名前かよ。」
「タマ?」
「俺は猫じゃねぇ!」
「タマナシ。」
「ぶるぅぁああっ!!」
事実だが許すまじ暴言。ちょっとキレた。…なんか本気でセンスないなミリィ…。あ、俺の名前もだが、ついでにミリアエルの呼び方も決めておくか。
「そうだ、ミリヤエル…ミリアエル。」
「なに?」
「ミリィって呼んでいいか?ミリアエルは語感的に不慣れで呼び辛いから。」
口にするとやっぱり言いにくい感じがするな。発音すると「ミリヤエル」となりそうだ。できれば愛称で呼ばせてもらいたいが。
「いいわよ。でもいつ私の名前知ったの?名乗ってなかったはずだけど。」
「ああ。補助頭脳がいろいろ疑問に答えてくれているんだ。錬金術師ミリアエル・ゲオルク殿。」
俺の返答に、彼女はちょっと考え込んでいた。
「おかしいわ…補助………………演算……設計……。」
よく聞こえないがブツブツ呟いている。
「ねえ。後で検査させてね。」
俺の身体事体、特別仕様っぽいしミリィ以外どうこうできる訳でもないだろう。了承する。ただし。
「解剖だけは止めてくれよな。新しい人生、早々に終わらせたくないし。」
「…チッ!」
「する気だったんかい!」
危ない危ない般若怖い。
「冗談は置いといて、あなたの新しい名前を決めましょう。そっちはアイデアない?」
絶対冗談じゃないなアレ。何はともあれ俺の新しい名前ねぇ。今の俺の特徴といえば思いつくのがオッドアイ。頭を取って…
「オットー…。いやダメだな。」
「なんで?『私のオットです。』って人に紹介できるじゃない。」
ぬかったー!それがあったかーっ!
「なおさらダメだよ、っていうか発音違ってる!」
つか俺を夫にしたいんか?あんたショタコンかよ。だったら付けろよ(ぴーー)!
…いかん、突っ込みが止まらない。
ミリィはなんかむくれてるけどあえて無視。俺としては某ゴム人間…あ、海賊の方じゃなくって「時は未来」の方ね…を思い出したからNGとしたんだがな。あとは…
「ホムンクルス…それから取って…」
「ホムホム?」
「なんか響きが間抜けっぽくて嫌だなそれ。」
何となくだが時間操作を得意とする魔法少女を思い出してしまったってのもある。そうなると取るなら後ろの方で…
「クルス…ならいいかな。」
「え~?ホムホム可愛いじゃない。」
「いや可愛いよりかっこいい方がいいだろう。一応、性別男っぽいし。」
付いてないけど。
「む~…。わかったわ。じゃあ、あなたは今からクルスね。」
そういや姓とかどうなるんだろ?
<<解説。姓は特権階級のみ。一般庶民はない。>>
ふむ。そういう文化なのか、ここは。ならば問題ないな。
ん?そうなると、ミリィは貴族ってことか?
<<否定。錬金術師は師弟で姓を受け継ぐ。>>
つまり、ミリィはゲオルク流の錬金術師って考えればいいのか。
あ、俺自身の命名ついでに補助頭脳にも呼び名をつけようか。色々俺に教えてくれるから、「シエ
<<警告。禁則事項に付き、その名は却下。>>
……禁則事項ってなに?ダメなの?この名前。
<<警告。禁則事項。>>
…ダメだしされてしまった…。いい名だと思うんだがな…シエ
<<警告。警告。>>
…よほどダメらしい。
「じゃあ、クルス。早速、検査するわよ。」
「え?」
「補助頭脳の挙動が仕様と違うのよ。だからどうして違うか調べないと。」
そういうとミリィは後ろから俺の頭を掴み、引きずって地下の研究室…俺が最初に目覚めた場所へ連れて行った。
せっかく新たな名まで得たのだ。解剖されないこと祈ろう。
* * *
再びカプセルに監禁されて、精密検査。
検査結果。問題なし。
いやそうじゃない。仕様とどう違うかという話だ。
補助頭脳、本来の仕様はただの計算機でしかなく、俺の疑問に答えるような物ではないらしい。
どうやら俺の魂が主頭脳に入り込んだため、本来主頭脳にインストールされるはずであった知識と知性は補助頭脳にインストールされたという事らしい。つまり補助頭脳の言動が本来の魔動兵士ってことだ。
俺というイレギュラーのせいで、玉突き式にバグが出てきたわけか。他にどれだけ設計仕様と異なるか考えると怖いな。
そういう訳で、主人公に新しい名前が付きました。
※10/16 気付いた誤字の修正。




