表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

第13話 戦争に行こう 終戦後

(ミリアエル視点)


 応接室に私は二人の軍人を迎えていました。

 一人は筋肉の塊という感じで、根っからの軍人という雰囲気を出している、特務小隊隊長ゴルドー中尉。もう一人は彼の補佐官ストリア少尉です。

 彼らは私とホムホムに対し、頭を…それも地面につくかというほど深々と下げていました。

「あなた方の大切な家族である、クルス臨時曹長を連れて戻れず申し訳ない。」

 彼らはクルスの直属の上司で、クルスが戦死した事を伝えに来たのです。

 クルスが戦死?そんなことはありえません。ただはぐれてしまっただけです。だって彼は特別なんですから。

 私はそう伝えましたが、彼らは困ったような表情を見せ、クルスを見た最後を教えてくれました。

 彼らの部隊は敵部隊を混乱させる目的で、遊撃を行う任務についていたそうです。ところが任務の最中に謎の襲撃を受け、部隊は撤退することになったのですが、その際に敵部隊と謎の襲撃者たちの足止めをするために、自ら進んで殿(しんがり)を務めたそうです。そして部隊は無事撤退できましたが、クルスだけは戻ってこなかった…ということです。

「我々は、彼に命を救われました。そして彼は自らを省みずに人を救う事の出来る勇敢な少年であった。そのことは誇っていいと思います。」

 すべてを語ると彼らは再度、深々と頭を下げ連れ帰れなかった事を謝罪し、立ち去りました。

 私は考えます。

 本当に戦死したのでしょうか?能力的に考えれば、可能性は低いでしょう。ですが万が一もあります。今の私に出来ることはないでしょうか…多分、なにもありません。

 私はお茶を飲みたくなったので、隣に座るホムホムに声を掛けました。しかしなにも反応を示しません。

 彼女はこの日を境に、機能を停止しました。


 * * *


「これは、クルスくんの事がショックだったんだね。」

 ホムホムの容態を見たマダラ(にぃ)はそういいました。確かに設計上、自我を保持するために何らかの(かなめ)が必要で、マダラ兄の発案でクルスを要にしたのですが、それが裏目に出てしまったようです。

「復活させるには、要の再設定でできるだろうが、そうなると記憶の齟齬で異常を起こしかねないね。かといって自我事体をまるまる作り直すと、見かけだけが同じ別物になるし…難しいところだよ。」

 そのあたりは私も考えていましたが、やはりマダラ兄も同じ見解でした。

「ただいまー。」

 その時、玄関から聞き覚えのある声が…。


(ミリアエル視点 終了)

================================================


 ようやく館にたどり着いた。

 色々あったが生きてたどり着いた訳だし、ひとまずは良しとしておこう。さて、ミリィやホムホムは元気にしていたかな?

「ただいまー。」


 ……しーん……


 おや?お出かけ中?

 そう思いつつ中に入ると、奥からドタバタドタバタと慌ただしく走る音が聞こえてきた。しばらくすると奥からミリィとマダラ師が飛び出してきた。

 あれ?ホムホムがいない?

 そのことには気付いたが、それよりも二人の表情にちょっと疑問が。なんというか幽霊を見ているというか、困惑しているというか、なんか微妙な感じ?

 少なくとも、帰還を喜んでいるような感じではないと思われる?

「…クル…ス?」

 ミリィはゆっくり近付き、確認するように聞いてきた。

「それ以外の誰に見えるかっての。」

 俺の返答に、ミリィはいきなり飛びかかり抱きしめた。

 …えーと…?

 そんな俺達の姿を見て、マダラ師も安堵のため息を漏らした。

「クルスくん…君は戦死扱いで、ミリアエルもそう聞いていたんだよ。」

 …あちゃー…なら、この反応判るわ。

「そういう事なら仕方ないかぁ…。じゃあ、ホムホムは?」

「それは、君に眠り姫の王子様になって貰うことになるかな。」

 マダラ師はそういって苦笑した。

 …眠り姫って何?


 * * *


 場所は変わってホムホムの部屋。

 ベッドにはホムホムが死んだように横たわっていた。

 事情はマダラ師に聞いたが、これは自我持ち人造人間の欠点でもあるだろう。自我を得たといっても、やはり感情の幅の許容範囲が狭く、それを超えるとこうなってしまう。

 それを哀れに思いながら、俺はベッドに腰を下ろして彼女の額を撫でた。

「ただいま。」

 ゆっくり撫でていると、呼吸が始まった。

 そしてしばらく待つと瞼が開き、青と赤の瞳が俺を見つめた。

「にい…さま…?」

「よう。お目覚めか?」

 俺の声に、彼女の瞳にどんどん涙が溜まっていき、飛び起きると俺に抱き着いた。

「心配かけて悪かったな…。」

「いいえ…いいえ…」

 ホムホムは存在を確認するかのように俺の胸に顔をこすりつけ、俺は彼女の頭を撫で続けた。


 しかし、あっさり目覚めて助かった。

 これが童話でありがちなパターンとかじゃないとダメとか言ったら、どうしようかと思ったし。


 * * *


 場所はミリィとマダラ師の待つ応接室に移す。

 ホムホムは安心してそのまま眠ってしまったので、部屋に置いてきた。


「さてと、どう説明したものか…。」

 二人に、今まであったことを説明しようと思っているのだが、こっそりと色々やらかしているので、ちょっと困ってる。

 ひとまずは誤魔化す方向で話しましょう。

「えーと、軍事機密もあるので詳細は言えないけど、大雑把に言えば帝国に行ってました。」

「……。」

 あ、二人とも絶句してる。

 まぁそうだよな。戦争中に敵国に行ってすんなり帰ってきてるんだから。

「…よく無事に帰ってこれたね…。」

「そこはそれ、ミリィのお守りのおかげだよ。」

 マダラ師に胸元のペンダントを見せて行った。宝石を見て機能を見取ったようで、師は納得したように頷いた。

「それで、戻るのに手間取って今までかかった訳です。」

 とりあえずはそう締めくくると、二人とも盛大にため息をついた。


 実際あったことをそのまま述べると、多分本一冊分くらいのイベント満載だったんだけど、そこはそれ全部省略!まぁ、何があったかだけを言うと…


 まず軍に入隊したら、第一軍の特務小隊に配属された。ここは特種な遊撃任務を主とする部隊で、俺の能力を一番生かせる所への配属だったようだ。

 それで帝国軍と交戦時、本隊援護として敵右翼部隊に対して遊撃任務に就いたのだが、その時に翼を持つ一群の襲撃を受けた。帝国軍も自軍も関係なしに攻撃するので戦場はかなり混乱。うちら小隊も撤退することになり、俺が殿(しんがり)を務めるた。

 その後は、帝国軍の生き残りと協力する形で翼を持つ一群と戦闘。実はこの時、王国軍の標準装備とは異なる魔装鎧を装着していたものだから、帝国軍の傭兵と勘違いされていたというオチもあったのだが。

 次に、この戦闘が終了した後、俺は帝国軍の数人と翼を持つ一群をこっそり追跡。拠点で情報を入手したのち、一群…天使族っていうらしいが…を殲滅やらかしました。だってこの戦争自体がこいつらが暗躍して仕込んだ計画ってわかった訳だし。

 ただ…全力で魔法使いまくって帝国軍の兵士にドン引きされたけど。まあ一個大隊相当を、ほぼ一人で殲滅した状態だったもんな。俺自身やらかしちまった…と後で頭おさえたくらいだし。

 その後、帝国の王都で皇帝…ガルドスティア帝国の皇帝ってエルフ族とドワーフ族の二人いるとは思わなかったが…と謁見。そこで所属ばらして一悶着起こし、なんだかんだと皇帝に気に入られ、国王宛ての親書を預かって戻ってきたわけだ。


 ね?概略だけでも、すごいでしょ?

 …というか良く無事に生きて帰ってこれたな…俺。


 まあ、このあたりは軍事機密なくてもミリィやホムホムには言えない内容だけどさ。


「それで、これからどうするつもりだい?」

 俺があんなことやこんなことを思い出していると、マダラ師が聞いてきた。やらなきゃいけない事は決まっているので、あとは何時どの順番で…という話である。

「ひとまず、今日は家で休んで、明日登城して報告しようと思ってます。」

「それじゃあ、明日の朝はうちの工房に来なさい。一緒に登城しよう。」

 ひとまずそういう事で話はまとまり、俺は半月ぶりに落ち着いて休むことができた。


 * * *


 翌日、登城したとき、直属の上司であるゴルドー中尉を始めとする特務小隊隊員に手荒い歓迎を受けた。これはまあ仕方ないかな…。

 ただ、その後のエルトラント国王殿下との謁見で渡した皇帝からの親書は、城内が大騒ぎするほどの爆弾であった。とりあえず俺の役目はこれで完了した…と安心したのもつかの間。情報規制という意味で俺は城に隔離軟禁されてしまったのはちょっとした失敗だ。軟禁生活事体は、出歩く事と人に逢う事を制限された以外、酷い物ではなかったけど。


 それから十日して俺は解放された。

 帝国との間に休戦協定が結ばれたので、情報規制が解除されたのだそうだ。休戦協定とは名ばかりで、内容的には不可侵条約に等しいらしいが。

 さらに、俺は解放された時点で軍役も終了することとなった。

 元々、年齢的な問題もあり、今回の戦争中のみという条件で従軍していたのだから問題はない。ただ解放された時に所属していた特務小隊は任務で出動していたため、挨拶をすることが出来なかったのが心残りと言えないこともないが。


 さて、解放された俺はすぐに館に戻った。

「ただい」

「このバカーッ!」

 喰い気味に罵られると同時に、頭部にすさまじい衝撃を受け、俺は玄関から外へ吹き飛ばされた。

 ………………………?

 ……なんか…意識が……。

<<回h-。ミaIア3$ルの攻撃。ダ<2o=ジ狂。>>

 ………。

 ……。

 …。

 玄関前の地面に大の字になって横たわっている俺。

 あれ?俺、いままで何やってた?

 とりあえず、身体を起こして朦朧とする頭を振る。…そういやさっき、補助頭脳(サブ・ブレイン)がなんか言ってたみたいだな。

<<機能修復中>>

 …なんと!?補助頭脳(サブ)くん壊れただと!?

 戦場でも壊れることがなかったのに、どんだけのことがあったんだ?

 早く中に入ろう。


 俺が館に入ると、ミリィが筒状の何かを構えて座っていた。

 …よもや、アレで何かを俺に打ち込んだ?

「おかえりなさいませ。兄様。」

「ああ、ただいま。ホムホ…」

 声を掛けられ、そちらを向くとフライパンを振り上げている我が妹の姿が。

 ……え?…あれ?俺、二人とも怒らせてる?…なんで?

「兄様。どうして十日も連絡も無かったのですか?」

 ちょっと、どういうこと?

「クルス。どういうことか、説明をお願いできるかしら?」

 …やばい…なんか背後で般若がロケット砲構えてる感じがひしひし…。

 マダラ師!説明してたんじゃなかったんですかーっ!?

 打撃と砲撃を食らいながら、心の中で理不尽さに嘆いた。


 最後は締まらなかったが、こうして俺の戦争は終わった。

 

一番ダメージを与えたのがミリィというオチがついて、戦争話は終わりです。

ボツネタとしては、戦闘で下半身失って「やあ!俺、てけてけさん!」と現れるクルスというのもあったんですが、ブラックきつ過ぎるかと止めました。


次回、最終回となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ