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第12話 戦争に行こう 開戦前

 ゆらゆら

 ゆらゆらゆら


 俺は今、カプセルの中で一部を作りかえられていた。ミリィの説明ではあと半日ほどで出来上がるそうだ。

 どうしてこうしているか、思い出してみよう。

 それは一週間前の事だ


 * * *


「なんか、帝国がきな臭いことやってるらしいな。」

 買い出しに行った市場で、そんな会話が聞こえた。

 帝国。正しくはガスドスティア帝国というのだが、この国の東にある漆黒の樹海の向こうにある魔人たちの国だ。

 魔人とは、亜人とも呼ばれる人に似て人と異なる人種の中で特に魔素(マナ)の保有量の高い種族の総称だ。俺の前世の世界でも知られたエルフやドワーフ、フェアリーなど知性の高い種族が集まり作った国が帝国だ。

 聞いていた話では、シルトガルなど人の国とはあまり友好的ではなく、国交は断絶。一部商人が個人的に取引している程度らしい。

 聞き耳を立てていると、どうも帝国がこの国に戦争を仕掛けようと準備しているらしい。

 俺としてはそんな事になって欲しくないな…とは思うが。


 買い出しを済ませて館に戻ると、ホムホムが血相を変えて飛んできた。

「兄様!大変です!」

「なにかあったのか?」

「戦争が始まるんです!」

「なんだって?」

 先ほど市場で聞いた噂は本当だったらしい。俺は買い出しの荷物を片づけるとミリィの書斎へと向かった。

「ミリィ。なんか大変な事になったらしいじゃないか。」

 開口一番にそう話しかけると、ミリィは眉間に指を当ててぼやいた。

「大変なことねぇ…他人事みたいに。」

「今のところはまだ他人事だろ?俺は軍人でもないし。…あ、もしかしてミリィは徴用でもされそうなのか?」

 俺の言葉に、ミリィは盛大にため息を漏らした。そして一枚の紙を俺に差し出した。

 俺はその紙を手に取り、中を見た。

 まずは、国の紋章と王家の紋章の型が押されているのが判った。どうやら国の公式な文書らしい。そして書かれている内容と言えば…


 召集令状。

 クルスを兵士として徴用する。


 あとは細かい内容が色々書かれていて、最後に第一軍将軍ボルダ・グローニンの署名と国王エルトラント・シルトガルの署名があった。


 徴用されたのは俺かよ!

 でも、なんで俺?表向きの年齢は十四歳だから、徴兵されるにしてもあと二年先じゃね?…あぁ、多分なんかの間違いだ。これはクレームを言ってくるしかねーな。

 はっはっはっ!

「一応説明しておくけど、それはグローニン将軍本人が出向いて持ってきたわ。」

 …なんと!?

「将軍はね、年齢は届いてないが既に一騎当千の実力を持つならば、国のために役立ててほしい…と言ってたわ。」

 将軍とは面識ないが、やっぱり城での魔動歩兵(ホムンクルス)倒した騒動とか、ホムホム救出騒動とか、耳に入ったんだろうなぁ…。

 そう考えながら、もう一度書面を見る。

「下級士官じゃなくって、一兵卒だよな…この文言だと。」

 考えてみれば当たり前である。年齢的に士官とか指揮官には成れないだろう。寧ろ本来ならば見習い扱いだ。以前、近衛兵へと誘われた時にしたって実力的には即戦力だが立場的には見習いから…と言われていた訳だし。

 今回は戦争だから即戦力として、見習いではなく兵士として…ってことか。

「拒否権はあるのか?」

「無いに等しいわね。ただ少々特権を与えられるとか言っていたわ。」

 だよなー。

 でもそうなると、色々問題あるな。例えば下の外見とか。

「…逃げようか…」

「その方がいいかもしれないんだけど、そうするとマダラの立場がねぇ…。」

 あー…城勤めだし、俺との関わり合いも強いしな。板挟みだ。

 俺としてもマダラ師に恩義があるから不義理なことはしたくないし…。逃げ道なしだな。問題は俺の正体についてのみか。その事をミリィと相談する。

「行くとした場合、俺の正体ばれないようにすることは、かなり難しいだろう。注意しても全裸見られたら一目瞭然だし。」

 付いてないもんなー。

 俺の言葉にミリィは頭を抱えて悶えていた。

「ぬぅぅぅぅぅぅ…何とかできないことは無いんだけどぉ……」

 ん?何とかなるのか?

「それやっちゃうと、行かなきゃならなくなるじゃない…」

「どういうこと?」

「だから行って欲しくないよの!」

 ミリィは立ち上がると、俺を抱きしめた。

 …え?あれ?ほわぃ!?…って顔がなんか埋もれ…何気にボリュームあるな胸…ってそうじゃない。なんか唐突過ぎて混乱してる?

「あなたは…うぅん。あなたもホムホムも、私にはとても大切な家族なのよ。家族に危ない所、行ってほしくないのは当たり前じゃない…。」

 …なんというか目から鱗。ミリィが俺達をそういう風に考えていたとは…。

 考えてみれば心当たりがないわけではないが、はっきり言葉にされるとそれはそれでむず痒い。口に出しはしないが、俺もまたミリィやホムホムを大切な家族だと思っているしな。

 ミリィの背中を軽くたたいて解放してもらう。

「ミリィ。ここで俺が拒否したり逃げたりしたら、ミリィやホムホムにまで害が及ぶよな。じゃあ、俺のやることは一つじゃないか。」

「…でも。」

「それに!」

 ミリィが否定しようと声を上げるが、俺はそれを遮る。

「俺はミリィの作ったトンデモな魔動歩兵(ホムンクルス)なんだぜ?死ぬわけないだろ?」

 俺はミリィを安心させるためニヤリを笑う。まぁどう見えたかは判らないが、ミリィは諦めたようにため息を吐いた。

「…あなたは…ホムホムの時もドラゴンの時も…なんで危ないことしようとするのよ…。」

「そりゃ、ミリィの作ってくれたこの身体を信頼しているからさ。」

「!!」

 俺の言葉にミリィは驚いたように俺を見つめる。それから再び俺を抱きしめた。

「…わかったわ。」

 そして、俺は再調整のためにカプセルに入る事に決まった。


 * * *


 六日ぶりにカプセルから出ると、ホムホムが毛布を手に駆け寄ってきた。

「気分はどう?」

 ホムホムに毛布を掛けてもらっている俺に、ミリィがそう話しかけた。見ればミリィはどこか疲れやつれているような感じだ。

「俺より、ミリィのほうが具合悪そうだぞ?」

「ちょっと徹夜で作ってた物があるのよ。」

 そういうと、ちょっと顔を赤らめながら横を向いた。そんな仕草に疑問を抱きつつ、今回の調整の成果を確認すべく股間に視線を移す。

 おー!付いてる付いてる。家出した息子さんが帰ってきた気分だ。

 見た目は、可も不可もなく年相応って所だな。というかやや小ぶり?

「注意しておくけど、それはあくまで飾り。機能はないから。」

「機能なし?それって生殖能力がないってこと?もしくはウェイク・アップ!しないってこと?」

「後者よ後者!」

「EDなのか…」

 …まぁ、これは仕方ないか。本当にダミーの飾りって事だな。でもショック…。

「…兄様、あの…ご立派ですので…その…。」

 …ホムホム…俺を慰めようとするのはありがたいが、お前の幼女な外見でそれいうと、色々問題ありなんだがな…。それは兎も角。

「で、ミリィはいつまで横向いてるんだ?」

「!!早く着替えてきなさいよ!」

 もしかして、見慣れてない?

<<回答。十七才処女。>>

 …よもや、ネタじゃなくマジですかっ!?


 さて場所は移って、いつもの書斎。

 俺は、いつもの黒ジャージに着替え、ミリィの座るデスクの前に立っている。

「さてと、これで準備はできたが、将軍に対する返事は明日でよかったんだよな?」

「そうね。明日使いの人が来るって言っていたから。」

 そういうと、ミリィは引出から黒い小箱を取り出し、俺の前に差し出した。

「これは?」

「私からのプレゼント。ちょっとしたお守りよ。」

「お守り?」

 小箱を受け取り空けてみると、中に赤い大粒の宝石をあしらったペンダントが入っていた。俺はペンダントを取り出し自分の首にかけた。

「ミリィの事だから、ただのお守りじゃないんだろ?」

「そうね。それを使えば、人前で戦闘モードになっても誤魔化せると思うわ。」

 使えば誤魔化せる?

「どういう事だ?」

「そのお守りを付けたまま、戦闘モードになってみて。」

 …とりあえず、試してみればわかるか。

 俺は、ミリィに言われた通りにペンダントを下げたまま、戦闘モードに切り替えた。

 第二の心臓が活動を始め、大量の魔素が全身を駆け巡る…が、胸元のペンダントに魔素の一部が吸収されていったと思ったら、ペンダントから黒い何かが飛び出し、俺の身体に纏わりついた。

 それは、ほんの一瞬の出来事で俺自身なんの対応も取れなかった。しかし気付いた時には、俺の恰好は黒い鎧のようななめし革でできた全身スーツのような、妙なコスチュームに変わっていた。しかも顔を隠すようなヘルメットまでつけて。

「これは一体?」

「それは特殊な魔装鎧よ。基本的に物理・魔法防御の魔術回路が組み込まれているだけなんだけどね。戦闘モードの能力もその鎧の力と言い張れば誤魔化せるよね。」

 ホムホムの持ってきた姿見で見てみる。

 …わー…リアル、仮面ドライバーだぁ。

 ブラックというかWの道化師×2というか、ベルトは無いが胸元の赤い宝石がワンポイントになっている、そんな恰好だ。なんか内心思いっきり呆れてしまった。

「兄様!とても凛々しくてご立派です!」

 ホムホムが目をキラキラ輝かせて褒めてくれた。もしかしてこういうのが好きなのかな…前世の世界だったら日曜朝はテレビの前に噛り付いていそうだ。

 グローブで覆われた手で、ホムホムの頭を慎重に軽く撫でてやると、彼女は嬉しそうにほほ笑んだ。

「その宝石に収納の魔術式を組み込んであって、あなたの魔素(マナ)をキーに鎧を纏わせる仕組みになっているわ。あと通常モードに戻れば自動的に収納されるから。」

 言われた通り、通常モードに戻ると鎧は解けてペンダントに消えた。

 何気にすごい技術だよな……というか、才能の無駄遣い?

「一応、基礎設計と個人個人の調整が必要という欠点はマダラに渡してあるから、試作品って言い訳もたつはずよ。」

「まぁ、ミリィの失敗の傾向から筋力増幅とかいう機能があってもおかしくないしな…。」

 俺がそういうと、ミリィは頭をデスクに落とした。文字通りゴトリと。

「…うぅぅ…そーよねー…だけど、だからこそ言い訳が出来るよねぇ…珍しく設計通りにできたのに…理不尽だわ…。」

 あ、結構気にしてるっぽい。

「まあ、なんにせよこれで生存率も上がった訳だな。」

「だから、必ず帰ってきなさい。」

「わかってるよ。」


 そして、その三日後。俺は戦場へ旅立つことになった。


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 聖歴九八五年十月十五日 第一軍、帝国軍と交戦。

 同年十月十八日 戦場に謎の勢力介入。両軍壊滅。

 同年十月二十日 謎の勢力消失?両軍、一時休戦を宣言し撤退。

 同年十一月五日 シルトガル王国、ガルドスティア帝国間にて休戦協定締結。事実上の終戦となる。


 シルトガル王国 第一軍特務小隊所属クルス臨時曹長。

 謎の勢力介入時に消息不明となる。

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