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風の精(スプライト)  作者: 花一匁
一章 風と学院
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風 Ⅲ

Ⅲ 情報





サカルサについたレイとそれに付き従う妖精ウィーは、ここまで護衛をフィレ・ミューヘズと別れた後、真っ直ぐに宿屋へと向かう。


「いらっしゃい!……って、レイじゃねぇか!!どうしたよ、人恋しくなったか?」


「エディル、うるさい」


宿屋兼酒場を経営している男の店主、エディル・クリーズがレイが店に入ってくるなり、仕事を放り出して大声を上げながら近づいてきた。


「悪ぃな。こういう性分でな。んで、どうしたんだ?」


「〈レイヴィス魔法教養養成学院〉」


「ほぅ、それに関してなら俺から渡すものがある。……まあ、実際は俺じゃなくて、そこの理事長なんだけどよ」


エディルは、適当に座ってろ、といって店の奥へと引っ込む。

レイは言われたとおり、適当な場所、人が少なそうな場所を選びそこに座る

座った時に、軽く息を吐くと妖精のウィーが心配そうにレイの顔をのぞく。


『レイ様、お疲れですか?』


『まさか。別に身体に支障はない。それに、疲れるとしたらこれからだな』


窓の外から見えるでかい建物を見ながらウィーにしか聞こえない言葉を発する。

別に普通に会話することも可能だが、ウィーと話すときは自然とこちらのしゃべり方になってしまう。長い習慣と言うものなのだろう。


『あれは何ですか?』


『あれこそが、〈レイヴィス魔法教養養成学院〉。まあ、簡単に言えば子供用の監獄だな』


レイヴィス魔法教養養成学院、通称レイヴィス学院。

世界各地から身分の高い子供や、国からの推薦によって選出された子供、魔力などが著しく他のものより逸脱しているものたちが通う学院である。

しかし、学院といっても見方を変えればレイの言ったように監獄と表すことも出来る。

レイヴィス学院は一度入学をすると卒業資格が取れるまで学院から出ることは出来ない。

レイヴィス学院の名は絶大で卒業すれば色んな国からスカウトされることもある。

しかし、卒業資格が貰えないものは例えどれだけ修業年数がいっても、学院から出ることは許されない。実際にあった話では十年以上も通い、ようやく卒業資格が貰えた生徒もいるとのこと。


(本当に、監獄だな)


「悪い、待たせたな」


心の中で学院を見ながらそんなことを思っていると、トランクを持ったエディルが戻ってきた。


「これが必要な荷物だ。こっちは手紙な」


「手紙?」


「ああ。理事長様から直々に俺に届けに来たんだよ。レイに渡すように、ってな」


エディルから封筒を受け取ったレイは封を切り、中身を取り出す。


「……………」


「何が書いてあるんだ?」


「あのババァ、俺が今日この街に来ることを予想してやがる」


「はぁ?いや、いくらあの人でもそれは……ていうか、よくババァなんて言えるよな。世界中で探してもお前しかいねぇぞ、そんな呼び方出来るの」


「本当のことだ。実際はいくつなのか聞き出したいくらいだ」


「殺されるぞ。……んで、何が書かれてたんだ?」


「レイヴィス学院に入れ、だとさ」


手紙を封筒の中に戻し、トランクを手に取る。

別にレイヴィス学院に入ることに対しては何も不快なことはない。ただ、気に食わないだけである。

レイはその理事長に従うことしかできない。その人がいるから今ここに風使いレイがいれる。それほどまでに、その人の権力というものはデカいのである。

では何が気に食わないのか、それはレイが今日、この街に来ることを知っていたからである。

手紙ではすでに手続きは済ましてあると書いており、試験とかもすべて免除で現時刻から明日までに学院の方に来るようにと書かれていた。


「まあいいじゃねぇか。お前もどこにでもいる一介の生徒になれよ。まだガキなんだからよ」


「風が一介の生徒って、無理だろ」


「そうじゃねえ。学生生活を満喫しろって言ってんだよ」


レイの頭をわしゃわしゃと撫で回す。レイはそれを払いのけるでもなく、ただ黙ってやられている。

満足したのかエディルはレイから手を離してこれから学院に行くのか尋ねる。


「ん。手続きが終わってるならもう行く」


「そうか。んじゃ気をつけろよ。あまり無理すんじゃねえぞ?」


「ん」


短く返事をしてレイはトランクを持って宿屋兼酒場を出て、レイヴィス学院へと向かう。


『学院に入る前に何か仕入れますか?』


『別にいらないだろ。最低限に必要な物はトランクに入ってるみだいだから』


「アストレスさん?」



読んでくださってありがとうございます

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