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「お前たちのような屑は捨てられても仕方がない――そういうわけだな」
…こいつは今何を言った?
禿げていようが、鼻がでかかろうが、気持ちが悪かろうが、仮にもこいつは教師だろう?
子供たちを教育する立場の人間だ。子供たちに将来の道筋を示す者だ。子供たちの味方であるべきものだ。
もう一度だ。今こいつは何を言った?
ひろし、咲、優太。
この3人は幼き頃に親に捨てられた。心に傷を負っている。
それは深く深く、気安く触れることは許されない赤く抉れた傷。
この男が今言った言葉はその傷に塩を思いっきりねじ込むようなものだ。
子供たちを、俺の弟子たちを地獄に突き落とす言葉だ。
咲の目には大粒の涙が浮かぶ。ひろしはぶるぶると震えだす。
「おい、ハゲ」
俺の怒りのボルテージはとうに限界メーターの先まで振り切ってしまっている。
もう止められない、止まらないかっぱえ○せん状態だ。
ぼりぼりばりばり粉々に砕いても収まらんぞ。
「…ししょー、大丈夫ですよ。僕たちは大丈夫だから。ししょー。べつに気にしないんだよ、僕たちは。こんなの…いつものことですから」
優太が気丈にも笑う。誰よりも気弱で泣き虫の優太が、だ。
こいつは賢いからわかっているのだ。
所詮学生の俺が大人であり、教師であるこのハゲ男に逆らったらそういう末路が待っているのか。
俺は優太の頭を力強く撫でてやる。
「心配するな。この俺を誰だと思っている」
俺は腕を大きく天に突き上げ、深く息を吸い込み、伸びをした。
その腕はまだ下ろさない。
この腕を振り下ろすのは――
あいつのでかっ鼻を力いっぱい潰す、その時だ。