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『俺は仙人である。

正確には自称仙人ということになるのであるが、仙人に資格も糞もあるまい。

自分自身が「俺は仙人である」と自覚できてさえいればそれでよいのだ。

コギト・エルゴ・スム――我、思うが故に我あり、そう…俺が自分が仙人である証明などそれで充分だ。


さて、将来有望な諸君達はきっとこのような質問をすることだろう。

「仙人とはどういう存在なのか、そしてどうすればなれるのか」――と。


そう焦らずともよい。この正真正銘本物の仙人であるこの俺、天地覇王てんちはおう様がゆっくり教えてやるから安心するがいい。

これは悩める子羊に送る仙人になる為の秘伝が詰まった「センドーの秘伝書」なのだ。


まず仙人とは一言でいえば超人である。

人間の限界を超えた神に近い存在――超越者だ。無論、俺も超越者であることは諸君も重々承知のことだと思う。

宙を舞い、風を操り、雨を呼ぶ。そんな超人的能力を体得している。

そして、仙人とは誰よりも自由で、そして人生を彩り深く味わうことができる人物のことである。

これが大切だ。

さあ、さあ…仙人の魅力にそろそろとり憑かれてきた頃合ではなかろうか。


しかし、仙人にはそう簡単になれるものではない。

厳しい修行が必要だ。山に籠り、己と向き合い、邪念を取り払う。

時に修行を投げ出したくなる時もあるだろう。だが、決してあきらめてはいけない。

厳しい修行を乗り越えた時、諸君に待っているのはこの世の下らない人間関係や先の見えない将来、不安や孤独に悩まされる日々とは無縁のバラ色の毎日である。

よって、諸君らは今の修行に「何の意味があるのだろう」であったり「これだまされてないか?」等という馬鹿げた考えは捨てるべきなのだ!


俺を信じよ! 俺は仙人だ! 神だ! 天と地を統べる天地覇王様なのだ!』


「なーに、また馬鹿みたいなこと書いてるんだ!」

「ぐはぁああっ!」

突如、脳天をトールの雷の如く一撃が襲う。

「む、何をするのだ」

俺は襲撃者へと目を向ける。

そこに立っていたのは勝気な表情が似合う俺の幼馴染である中野由佳子なかのゆかこであった。

相変わらず細いのに出るところは出ているそのスタイルの破壊力は抜群だ。

「そんなのずっと授業中に書いてたのね。呆れるわ…」

ふん、人を憐れむような顔で見おって。

「俺に言わせれば、どこか遠くの国の歴史を学ぶことの方がよっぽど時間を浪費していると言えるがな」

今は午前の授業が終了した昼休み。窓際の最奥地の俺の席から見回すと、呑気な連中は弁当を買いに行ったり、授業の復習をしたりバタバタとせわしない。

もっと心に余裕を持つべきだ、この俺のようになっ!


グゥー―――――…と腹の虫が鳴く。


「もっとモノローグと腹の音を統一すべきなんじゃないの? 天地覇王こと山田太郎君」

「ちっ、人の心の声を勝手に読むな。そしてその名で呼ぶんじゃなーい!!」

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