第十章:崩れ落ちる虚栄
一ヶ月後。
「アステリズム・エナジー」は、リアム・ハリソンの全面バックアップを受け、世界中のメディアを札幌に集めて、歴史的な記者会見を行った。
「常温超伝導の完全実用化。これにより、世界のエネルギー問題は過去のものとなります」
檀上で淡々と語る健一の姿は、もはや「万年主任」の面影は微塵もなかった。
会場には、世界中の自動車メーカー、電力会社、そして大統領特使までもが列をなし、健一の一言一言に耳を傾けていた。
一方、帝国電産。
爆発事故の責任を問われ、黒田は即座に解雇された。それだけでなく、社内の機密データを不正に利用したとして、警察の捜査が入っていた。
「待ってください! あれは佐藤が勝手にやったことで……!」
かつての「権力の亡者」は、警察官に両脇を抱えられ、フラッシュの嵐の中を引きずり出されていった。
会社は株価が暴落し、倒産の危機に瀕していた。
そして、その様子をテレビで見ていた、もう一組の親子がいた。
「……嘘。嘘よ……。あの健一が、あんな……」
美紀は、家賃も払えなくなったボロアパートの片隅で、震える手で画面を見つめていた。
不倫相手の佐藤に全財産を持ち逃げされ、残ったのは消費者金融からの借金だけ。
結衣と愛梨は、ブランド物のバッグを質に入れ、毎日のように美紀を罵っていた。
「ママのせいだよ! パパを追い出さなきゃ、今頃私たちは……!」
「……そうよ。健一さんは、お人好しだわ。泣いて謝れば、きっと……」
美紀の瞳に、浅ましい希望の光が宿った。




