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オーボエファイター木村

作者: Aju
掲載日:2026/03/04


しいな ここみ様の『瞬発力企画2』の参加作品です。

今回のお題は『オーボエファイター木村』(なんちゅうタイトなお題じゃ!)



 わずかに残された過去の資料の中からそのワードを発見したとき、ジュンゴ・キムラは首をかしげた。



    = オーボエファイター木村 =       Aju



「オーボエファイター木村?」

 木村という名前からすると、どうやらジュンゴのご先祖様らしい。

 漢字という古い文字が名前に使われているところをみると、半世紀以上前の人物なのだろう。


「オーボエとは何だ? どんな武器だ?」


 こんな世界になってからデータのほとんどは失われた。

 わずか半世紀前の過去でも、当時を知る資料はほとんど残されていない。

 このひどい惨状の中、人の平均寿命も50年をきっているから、当時を知るような人も残ってはいない。

 第一、1週間誰にも会わないというほど人口密度も減ってしまっているのだ。


 ジュンゴは端末で『博物館』を検索してみた。

 幸い近くに中継基地が生き残っていたらしく、電波が立って『博物館』にアクセスできた。

 「オーボエ」の情報を見る。


 2枚の薄いリードを振動させて音を出すダブルリードの木管楽器。フランソワール語の「高い音の木」が語源。甘く哀愁漂う音色が特徴。


「楽器?」


 こんなものがどうして武器になるのだ?


 ジュンゴはファイターである。今も1匹の魔物を倒してきたところだ。

 もとは人間だったといっても、人の姿をしてもいなければ、人の意識も持っていない。ただひたすらに人口を減らす——といった目的を持つ異形の生物。

 なぜこんなものが生まれてきたのか。


 ジュンゴの武器は『クリスタルナイフ』だった。

 指を高速で振動させ、空気中の水蒸気を一瞬で結晶化させる。氷のナイフだ。

 それを皮膚の振動で巻き起こす風に乗せて、一瞬で魔物(てき)をズタズタに切り裂く。血を浴びて感染することもない。

 ジュンゴの持つ特殊能力があってこその戦い方だった。

 この特殊能力ゆえに、ジュンゴにはファイターとしての二つ名がある。


 『クリスタルのキムラ』


 呼ばれている村まではまだ2日の行程がある。その間にも何体の魔物と遭遇することになるだろう。

 だが、そのことよりもジュンゴには気になることがあった。


 もし『オーボエファイター木村』がジュンゴのご先祖様だとしたら、彼はどのようにして魔物と戦っていたのだろう?

 二つ名を残すほどだ。その力は圧倒的だったに違いない。

 あんな楽器で‥‥どうやって‥‥?


   *   *   *


 遡ること69年。


 木村は10体の魔物と向き合っていた。

 大きく息を吸い込み、口を開ける。


 その喉から(ほとばし)るのは「声」ではあったが‥‥

 超低周波から超音波まで。自在に空気を振動させるその特殊能力は、魔物を寄せ付けることなく一瞬でその悍ましい体を粉砕した。

 その特殊能力ゆえ、彼は二つ名を持っている。


 『大吠えファイター木村』




      m(_ _)m




おあとがよろしいようで。。。


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