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沖田さん令和に惑う  作者: NoV


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8/26

──令和の保護者・桐島美咲、まさかの人斬り以蔵に懐かれる──



 サイレンが響き、以蔵は救急隊に運ばれていった。

 だが担架の上で、必死に美咲の袖を掴んで離さない。


「て、てめェら……雑に運ぶんじゃねェ……!

 俺の傷ぁ……深ぇんだよ……!」


「患者さん、落ち着いてください! 暴れないで!」


「う、うわぁ美咲さんこの人めっちゃ強いんだけど!?」


「皆さんっ、この人ほんとに危険な人じゃないんです!

 ただちょっと時代が違うだけで!」


「“ちょっと”じゃねぇだろ美咲殿!!」

 沖田の叫びがむなしく響く。




 治療室ではさらに大混乱が起きていた。


「麻酔しますね〜」


「ま、麻酔……?

 なんだそれは……切られんのか……?」


「切りませんよ!」


 以蔵、完全に怯える。


 注射を見て目を見開き、腕を引く。


「お、おい待て……それは毒か……?

 俺ぁ毒は嫌いだ……!」


「だから毒じゃないってば!」


 医者と看護師が困っている中、

 美咲がひょこっと顔を出した。


「以蔵さん、大丈夫ですよ。

 これしないと治らないんです」


 その瞬間。


 以蔵がピタッと静かになった。


「……美咲、が言うなら……まあ……」


 医者(えっ今この子の一言で従った……?)


「じゃ、じゃあ麻酔しますね」


「さっきのより……痛くねェようにしろよ……?

 美咲の前で……情けねェ姿は……見せたくねェ……からよ」


 完全に“美咲基準”で大人しくなっていた。




「だいじょぶ、以蔵さんは強いですよ」


 美咲のその言葉に、

 以蔵の頬が赤くなる。


「……おめェ……

 俺ァな……

 “強い”なんて言われたの……

 いつ以来だっけな……」


 ぽつりと呟く。

 そのまま麻酔で意識が落ちかけ——


「美咲……どこにも行くんじゃねェぞ……」


「は、はい……行きませんけど……?」


 とろり、と眠りに落ちた。


 医者と看護師は顔を見合わせる。


「……あの子の言うことしか聞かないタイプか」


「犬じゃん、もう……」



 数日後。

 治療を終えて退院した以蔵は、

 なぜか病院の前で美咲を待ち伏せしていた。


「お、おはよう……美咲」


「お、おはようございます……?」


 美少女を見るギャルではない。

 命の恩人を見るわけでもない。


 なんか、

 野良犬が懐いたみたいな目 をしている。


「な、なんでここに……?」


「……いや、別に……。

 暇だったから……。

 沖田もいねェし……。

 その……おめェの顔見りゃ……安心すんだよ」


「は、はい???」


 沖田は横でため息。


「……懐かれたな、美咲殿」


「や、やめてそれほんとに犬みたいな……!」


 一方の以蔵はというと——


「美咲、今日も学校……行くのか……?

 おめェ……その……道中危なくねェか……?

 送ってやろうか……?」


「え、いや大丈夫、普通に安全だから……この国」


「そうか……

 じゃあ……帰りまでにはここに戻る……」


「えっ待って何その忠犬ムーブ!?」


 令和最強の女子高生、

 ついに“人斬りの保護者”ポジションに就く。




 帰り道。

 沖田がぽつりと呟く。


「……俺のときは、あんなふうに懐かなかったな」


「えっ?

 沖田さん……ちょっと拗ねてます?」


「拗ねていない」


(完全に拗ねてる!!)


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