──令和の保護者・桐島美咲、まさかの人斬り以蔵に懐かれる──
サイレンが響き、以蔵は救急隊に運ばれていった。
だが担架の上で、必死に美咲の袖を掴んで離さない。
「て、てめェら……雑に運ぶんじゃねェ……!
俺の傷ぁ……深ぇんだよ……!」
「患者さん、落ち着いてください! 暴れないで!」
「う、うわぁ美咲さんこの人めっちゃ強いんだけど!?」
「皆さんっ、この人ほんとに危険な人じゃないんです!
ただちょっと時代が違うだけで!」
「“ちょっと”じゃねぇだろ美咲殿!!」
沖田の叫びがむなしく響く。
⸻
治療室ではさらに大混乱が起きていた。
「麻酔しますね〜」
「ま、麻酔……?
なんだそれは……切られんのか……?」
「切りませんよ!」
以蔵、完全に怯える。
注射を見て目を見開き、腕を引く。
「お、おい待て……それは毒か……?
俺ぁ毒は嫌いだ……!」
「だから毒じゃないってば!」
医者と看護師が困っている中、
美咲がひょこっと顔を出した。
「以蔵さん、大丈夫ですよ。
これしないと治らないんです」
その瞬間。
以蔵がピタッと静かになった。
「……美咲、が言うなら……まあ……」
医者(えっ今この子の一言で従った……?)
「じゃ、じゃあ麻酔しますね」
「さっきのより……痛くねェようにしろよ……?
美咲の前で……情けねェ姿は……見せたくねェ……からよ」
完全に“美咲基準”で大人しくなっていた。
⸻
「だいじょぶ、以蔵さんは強いですよ」
美咲のその言葉に、
以蔵の頬が赤くなる。
「……おめェ……
俺ァな……
“強い”なんて言われたの……
いつ以来だっけな……」
ぽつりと呟く。
そのまま麻酔で意識が落ちかけ——
「美咲……どこにも行くんじゃねェぞ……」
「は、はい……行きませんけど……?」
とろり、と眠りに落ちた。
医者と看護師は顔を見合わせる。
「……あの子の言うことしか聞かないタイプか」
「犬じゃん、もう……」
⸻
数日後。
治療を終えて退院した以蔵は、
なぜか病院の前で美咲を待ち伏せしていた。
「お、おはよう……美咲」
「お、おはようございます……?」
美少女を見るギャルではない。
命の恩人を見るわけでもない。
なんか、
野良犬が懐いたみたいな目 をしている。
「な、なんでここに……?」
「……いや、別に……。
暇だったから……。
沖田もいねェし……。
その……おめェの顔見りゃ……安心すんだよ」
「は、はい???」
沖田は横でため息。
「……懐かれたな、美咲殿」
「や、やめてそれほんとに犬みたいな……!」
一方の以蔵はというと——
「美咲、今日も学校……行くのか……?
おめェ……その……道中危なくねェか……?
送ってやろうか……?」
「え、いや大丈夫、普通に安全だから……この国」
「そうか……
じゃあ……帰りまでにはここに戻る……」
「えっ待って何その忠犬ムーブ!?」
令和最強の女子高生、
ついに“人斬りの保護者”ポジションに就く。
⸻
帰り道。
沖田がぽつりと呟く。
「……俺のときは、あんなふうに懐かなかったな」
「えっ?
沖田さん……ちょっと拗ねてます?」
「拗ねていない」
(完全に拗ねてる!!)




