「沖田、現代医療に戸惑う」
翌日、美咲は沖田を連れて近所の総合病院へ向かった。
病院の自動ドアが“ウィーン”と音を立てて開く。
「……ぬおっ!? 扉が勝手に開いたぞ!?」
「落ち着いて! センサーだから!」
「せ、せんさー……? 妖術ではないのか……?」
妖術と言われ、受付の看護師さんが思わず吹き出しそうになる。
受付を済ませ、レントゲン室へ移動すると、沖田はまた固まった。
「……こ、これは……棺桶のような……なにかか……?」
「違う違う! 体の中を撮影するための機械!」
「体の……中……? 撮る……?」
説明すればするほど混乱していく。
そしてレントゲン撮影後、モニターに映し出された自分の胸部写真を見た瞬間——
「……な、なんと……骨が……わしの骨が……見える……!?
天の目でも借りぬ限り見えぬはずのものを……!」
沖田は畏怖のあまり言葉を失った。
医師が淡々と説明を続ける。
「うん、典型的な結核の影だね。でも安心してください。
適切に治療すれば必ず良くなりますよ」
「……医師殿……この病が、治ると申されるのか……?」
「はい。薬がとても効く病気です」
その言葉を聞いた沖田は、胸に手を当て、静かに深く頭を下げた。
「……かたじけない……
このような世が訪れるとは……武士冥利に尽きる……」
医師は「武士……?」と首をかしげていたが、
美咲は微笑んだ。
未来に触れるたび、沖田は何度も救われていくのだ。
⸻
◆ 美咲の親友、現る
診察がひと段落ついたところで、病室の扉が開いた。
「みさきー! 心配したんだよ! 倒れた人って聞いたけど——って、え?」
入ってきたのは、美咲の親友・水瀬ゆり(みなせ ゆり)。
明るく華やかな、クラスのムードメーカー。
だが、沖田を見た瞬間——
——時間が止まった。
ゆりの目がまんまるになり、顔がみるみる赤くなる。
「……だ……誰……この……超絶イケメン侍……?」
「さ、侍……?」
沖田は戸惑う。
しかしゆりは感嘆するように手を胸に当て、
「美咲……
あなた昨日、ファッションビルの帰りに人助けしたら
歴史画から抜け出してきたみたいな美形拾ったってこと……?」
「いやそこまで言ってない!」
「こ、これは反則……!
美しすぎる……尊い……! なにその瞳の光……!
欧州の貴公子×武家の気品みたいな顔面偏差値……!」
完全に語彙力が崩壊していた。
「ゆ、由梨殿……とおっしゃるのか……?」
「ゆ、ゆり! はい! 水瀬ゆりです!
ていうか殿呼び尊い……あの……あのっ……!」
ゆりは顔を覆いながら震えた。
「推せる……生きててよかった……」
「推す……?」
「気にしないでいいから!」
美咲は思わず頭を抱える。
その横で、沖田は不思議そうにゆりを見つめていた。
「……水瀬殿は、お優しいな。
このような者に、笑顔を向けてくださるとは」
「ひっ……ひぃ……っしぬ……っ
美咲……これ、イケメンに不意打ちで褒められた時の破壊力、
法で規制されるべきじゃない……?」
「落ち着けってば!」
そのやり取りに、沖田は首をかしげつつ微笑む。
病院の白い光の下で、
令和の女子高生と、幕末の剣士と、その親友。
妙な三角関係の幕が、静かに上がった。




