表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沖田さん令和に惑う  作者: NoV


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/26

「戦いの後は」

半次郎一派との激闘から数日。

 警察署襲撃という前代未聞の事件のわりには、世間の反応は妙にぼやけていた。


「“暴力的な外国人グループによる犯行の可能性あり”ってニュースにされてたな」

 スマホを眺めながら、斎藤が乾いた笑いを漏らす。


「情報が伏せられすぎてますね……」

 沖田も頷きながら、紅茶を飲む。現代のティーバッグにすっかり慣れ、ちょっと嬉しそうだ。


「警察も手ぇ出せへん異能持ちやしな……国家権力ごと圧されてる感じやで」

 以蔵が伸びをしながら言った。


 だが、いまは束の間の平和。



●放課後、商店街へ


「ねぇ沖田くん! 斎藤さん! 以蔵くん!

 帰りにみんなでクレープ食べに行かない?」

 美咲が手を振りながら呼びかける。


「く、クレープ……というのは、その……甘味の一種でしょうか」

 沖田は未だ現代スイーツに弱い。


「食べたら世界変わるで。うんまいから」

 以蔵が肩を叩く。


 そんな様子を少し離れた所で見ていた沙羅が、ふわっと一歩前に出た。


「……わたしも行っていい?」

 声は小さいが、確かに以蔵へ向けたものだった。


「おう、来たらええやん。ほれ」

 以蔵は何気なく沙羅の買い物袋を持ち上げた。


「あっ……いいよ、自分で持てる……」

「ええから。怪我してへんのに荷物持てへん男とか、侍の恥や」


 沙羅は頬を赤くした。

 だがその表情を、以蔵は全く気づかない。


 (ほんと……鈍感なんだから……)

 沙羅は心の中でため息をついた。



●クレープ屋でのひと幕


「おいし〜! やっぱり生クリーム最高!」

「こ、この柔らかさ……まるで京の薄焼き菓子より……はるかに……!」

 沖田は目を輝かせ、現代スイーツの進化に震えている。


 一方で――


「沙羅ちゃん、その……いちご食べる?」

 美咲がこっそり耳打ちする。


「え、なんで?」


「だって以蔵くん、無意識に沙羅ちゃんの方ばっか見てるよ?」

「ッ!?」


 沙羅は思わずクレープを落としそうになる。


 しかし当の本人は――


「……なんや? 生クリーム付いとんで、口の端」

「あっ……ど、どこ……?」

「ここや」

 以蔵はそっと指で示した。


 ただそれだけの距離が、沙羅には心臓が跳ねるほど近かった。



●斎藤の観察


 店の外で見守っていた斎藤が、小さく笑う。


「……あの二人、妙にしっくりしてるな」


「うむ。以蔵殿は気づいていないようだが……沙羅殿の眼差しは明らかに恋のそれだ」

 沖田がしみじみ頷く。


「で、お前はどうするんだ?」

 斎藤が沖田の横目を覗き込む。


「……わたしは……美咲殿を守る。それだけです」

 沖田はほんのわずかに目を伏せた。


 斎藤は言わないが、知っている。

 沖田の胸にも、別の形の想いがすでに芽生えていることを。



●日常の裏に潜む影


 笑い声の響く商店街の奥。

 暗い路地裏で、半次郎一派の影がひっそりとその光景を見ていた。


「ほう……楽しそうにやっとるやないか」


「どうします、半次郎様?」


「今は動くな。

 ヤツらを潰すんは、その日常ごと粉々に砕ける瞬間――

 そのほうが、より深い絶望を刻める」


 闇が静かに笑う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ