「襲撃」
深夜、都内・某警察署。
当直の警官たちが眠気と闘いながら書類を処理していた。
そこへ――
突如、影がひとつ、すべり込む。
「……な、なんだ? この黒い靄……」
空気が震えた。
次の瞬間、署内の照明が一斉に落ちる。
闇の中に立っていたのは、中村半次郎。
その背後には、
彼と同じく“異能”を持ちながら転生してきた幕末の志士たち。
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◆異能:闇走り
半次郎の足元の影が、液体のように蠢く。
そこから黒い刃が生まれ、警察署の装甲ドアを音もなく貫いた。
「ば、馬鹿な……! 防弾合金が……!」
警官たちは戦慄した。
半次郎は静かに言う。
「……我らは、すでに“斬れぬもの”などない」
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■“砕刃” 田中新兵衛
拳を軽く振るうと、壁が粉末のように崩れ落ちる。
「銃弾? 鉄? そんなもの、握り潰せば終わりだ」
弾丸を素手でつまんで落とす姿を見て、
若い警官は腰を抜かした。
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■“雷迅” 池田七三郎
身体に稲妻をまとい、銃撃を高速移動でかわす。
「遅いぞ、現代の兵法は……!」
彼が踏み込んだ床は焦げて割れ、
電撃で十名がまとめて意識を失う。
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■“心読” 山野辺義久
警官たちの心理を読み取り、恐怖心を増幅する。
「……抵抗する気はもうないな。
なら、手を上げて座っていろ」
警官たちは心を折られ、立ち向かうどころではなかった。
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公安の上層部は、
半次郎一派の存在をすでに把握していた。
だが――
◆銃は効かない
◆装甲車が破壊される
◆監視カメラに映らない(映像が歪む)
◆GPSもレーダーも位置を捉えられない
◆部隊を送れば壊滅する
◆生存者は精神汚染(心読能力の副作用)
つまり、
――通常戦力では対応不能。
“テロ”というより
現代の軍事・法執行の枠にない、新種の怪物集団。
内閣官房は密かにこう判断した。
「国家権力を投入すれば、
被害は数百人単位で増える。
対処すればするほど、国が壊れる……」
つまり、
『国家が彼らを追えない』
『手を出せば国家そのものが負ける』
この恐ろしい現実が、政府中枢を沈黙させていた。
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◆――半次郎の目的はただ一つ
半次郎は署内の制圧を終えると、
拘置室の前で立ち止まり、静かに笑う。
「俺は“復讐”をしに来たわけではない。
ただ――この国の歴史を、正しい道へ“戻す”だけだ」
解放された幕末の同志たちが半次郎を囲む。
「半次郎様、次の標的は……?」
半次郎の瞳が、闇より黒く光る。
「――沖田総司だ。
あやつが令和にいる限り、
我らの“新しい日本”は始まらぬ」
背後の影がひとつの獣のように蠢き、
警察署の窓ガラスがすべて砕け散った。
そして半次郎一派は――
夜の街へ溶けるように消えた。




