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沖田さん令和に惑う  作者: NoV


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22/26

「潜入」

翌朝。

東京都内のとある高校。


始業前の廊下は、制服姿の生徒が談笑しながら歩き回る、平和そのものの光景だった。


その中に――

妙な空気をまとった“異質な影”がひとつ。


黒いスーツ。

無駄な動きの一切ない歩調。

背筋の伸びた、異常に美しい立ち姿。


斎藤一、その人だった。


しかし周囲の誰も、彼が“幕末最強クラスの剣士”だとは知らない。


「ねぇ……あの人、誰? モデル? 俳優?!」


「こわ……なんか圧が……!」


「あの顔で怒られたら泣く自信あるんだけど……」


生徒のざわつきの中心で、斎藤は冷静に周囲を観察していた。


(……ここが“学校”か。

子どもが集まり学ぶ場所……ふん、江戸の寺子屋とは大違いだな)


しかし目的はただ一つ。


――沖田総司の所在を探ること。


そして、美咲という少女の存在が重要だと、

昨夜の出来事から察していた。




教室へ入る直前、美咲は廊下で硬直した。


「えっ……えっ……ちょ、ちょっと待って……」


斎藤は静かに会釈する。


「あなたが桐島美咲殿か。

総司……沖田総司の知己と聞いた」


「は、はいっ……え? え? なんで知って……?」


美咲の脳内は混乱しすぎてショート寸前。


その横で、朝からテンション高めの紗耶が叫ぶ。


「み、美咲ァ!!

今日イチのイケメン爆誕!!

誰この人!! 先生!? 芸能人!? 超こわいんだけど顔が綺麗すぎて!!」


斎藤:「心外だ……別に怖くするつもりはない」


言葉は冷静だが、眼光が鋭すぎて逆効果だった。




そこに職員室から出てきた担任――


坂本龍馬(教師モード) が現れる。


「おー、斎藤。やっと来たか!」


生徒たち:「え? 先生この人知り合い!?」「なんなんこの学校!」


龍馬は笑顔で肩を叩く。


「この人は今日から赴任する“臨時職員”じゃ。

科目は……そうだな。“歴史”でええろ?」


斎藤:「……勝手に決めるな」


龍馬:「えいがや。どうせそっちのほうが自然じゃき」


生徒たち大歓声。


「か、カッコよすぎる歴史の先生……!?」


「無理……今日から授業が戦争になる……」


美咲は完全に混乱しつつ、

斎藤の視線が自分へ戻ってくるのを感じた。


「美咲殿。

沖田に会わせてもらえぬか」


その声は低く、どこか切実だった。


(あ……この人……沖田さんのこと、すごく……)


美咲は息を呑んだ。



「総司……

どうせまた、無茶をしようとしているのだろう。

今度は俺が止める。

お前は、もう二度と死なせん」


そのつぶやきは誰にも届かなかったが、

確かに令和の空気の中で、静かに燃えていた。


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