「集う影」
雨の夜、
赤いパトランプが乱反射する新宿の裏路地へ、
沖田総司は駆け込んだ。
濡れたアスファルトの奥から感じる――
獣のような殺気。
「……半次郎――!」
沖田が叫んだ瞬間、
半次郎はゆっくりと振り返る。
「ほう。総司か。
こんな化け物のような街にまで、追ってきたんかい」
その声は、雨より冷たかった。
沖田は歩み寄る。
「半次郎殿……刀を収めていただけませんか。
ここは戦いの場ではない」
半次郎は笑う。
「おまんらもか……
なら、おもろい。斬り合おうやないか」
刃が雨を裂いた。
沖田も反射的に身構える。
二人の間の空気が一瞬で張り詰め――
まさに斬り結ぶ寸前。
だが――
龍馬の手が、沖田の肩を掴んだ。
「待て、総司!!」
沖田:「龍馬殿……! しかし――」
龍馬の目は、
この未来で教師として生きてきた者の冷静さと、
幕末を駆け抜けた男の鋭さを併せ持っていた。
「いまここで半次郎と斬り合うたら……
警察も巻き込んで、大惨事になるき!!」
「だが――!」
「違う。
半次郎は“誰も斬ってない”。
あいつはただ……時代が変わって困惑しちゅうだけじゃ!」
沖田の手が震える。
半次郎は無言で二人を見ていた。
まるで二人の会話のすべてを見透かすような視線。
そして――
「龍馬。
……おまんは昔から変わらんのう」
静かに刀を下げ――
次の瞬間には、闇へ溶けるように姿を消した。
以蔵:「あっ……! 兄さん、追うがか!?」
龍馬は首を振る。
「いや……あいつは“逃げた”んじゃない。
仲間を探しに行ったんじゃ。
この時代を、壊すためにな」
美咲が震えながら尋ねる。
「仲間……って……?」
龍馬は雨に濡れた髪を払い、
重い声でつぶやく。
「――半次郎派は、幕末にもいた。
“維新も開国もいらん。
武士の世こそ正義”と信じた過激派じゃ」
以蔵がさらに顔をしかめる。
「兄さん……まさか……」
龍馬は頷いた。
「おそらく……
半次郎と同じく“令和に転生した者”が、既に動きよる。
そして半次郎の周りに――集まり始めたがよ」
美咲:「そんな……!」
そのとき、紗耶がスマホを見て叫んだ。
「み、みんな……これ……!!
SNSで動画が……!」
画面には――
路地裏で半次郎が街灯を斬った瞬間がアップされていた。
再生数は瞬く間に
十万、二十万、五十万……
龍馬は顔を青ざめさせた。
「いかん。
あいつの存在は、もう世間に知れ渡り始めちゅう」
沖田の目に緊張が走る。
「――急がねば。
半次郎殿の“同志”が集まれば……」
龍馬:「令和は戦場になる」
美咲は唇を震わせながら、小さく呟いた。
「……これから、何が起きるの……?」
龍馬は雨雲の向こうを見据え、答えた。
「――幕末第二幕じゃ」




