「薩摩の人斬り、警察と遭遇す」
雨の新宿。
路地裏で、斜めに切り落とされた街灯が火花を散らし続けている。
その異様な光景へ、真っ先に駆けつけたのは警察官二名だった。
「こちら110当直! 新宿西口裏で器物損壊! 刃物所持者!!」
「誰かケガしてるか!?」
二人が懐中電灯を向けると、
そこに立つ男は――まるで“時代劇の悪霊”のようだった。
濡れた着流し、剥き出しの刀。
そして、獣のように細められた眼。
中村半次郎。
警察官:「おい君! 危険だ、その刃物を捨てろ!」
半次郎は首をかしげた。
「……刀を捨てよ? 何を言うちょる。
これがなけりゃ、何も斬れんじゃろうが」
警察官:「撃つぞ! 刀を捨てろ!」
その“脅し”の意味が、彼には通じない。
次の瞬間――
バシュッ!!
半次郎の影が、雨の闇へ溶けた。
警察官:「なっ――」
ヒュン!
一瞬の斬撃。
懐中電灯が真っ二つになって地面に落ちた。
光だけが消え、警察官は腰を抜かす。
「し、信じられねぇ……ま、待て!!」
半次郎は、刃についた水滴を軽く払う。
「……これが“こっちの世”の武士か?
気迫が足りん。
まるで紙を斬るようじゃ」
その声音には、まるで罪悪感がない。
警察官が震えながら無線で叫ぶ。
「包丁どころじゃねえ……
こいつ、戦闘力が異常だ!
応援求む! 全隊急行!!」
サイレンが次々と集まり、
新宿の裏路地に赤い光が反射する。
半次郎はその光景を見て、
不敵に笑った。
「……面白うなってきた」
雨粒が刀に落ちる音が、
やけに冷たく響く。
⸻
◆ ――その頃、沖田たちは
龍馬が突然振り返り、声を張り上げた。
「……来たぞ。あの気配、まちがいねぇ」
以蔵が青ざめる。
「兄さん……あの化け物みたいな殺気……
間違いなく半次郎や」
美咲:「え、え!? もう危険なことが起きてるってこと!?」
龍馬:「ああ。おそらく警察が接触したはずじゃ。
だが相手が悪すぎる」
沖田は静かに立ち上がる。
「行かねばならぬ。
あの殺気が……令和を壊す前に」
紗耶が震える声で叫ぶ。
「危ないよ! 今の警察でもダメなら……沖田さんだって!」
沖田は振り返り、
まるで新撰組一番隊組長だった頃のように微笑む。
「だからこそ、わたしが行くのです」
雨の中、ひとつの決意が燃え上がった。
――沖田総司 対 中村半次郎。
令和で、幕末最凶同士が邂逅する。




