表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沖田さん令和に惑う  作者: NoV


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/26

龍馬の告白

とある夜

学校から帰った沖田、美咲、以蔵、紗耶は、

龍馬の呼びかけで、学校近くの小さな古い喫茶店に集まっていた。


照明は暖かく、静かなジャズが流れている。

だが空気は、どこか張り詰めていた。


龍馬はコーヒーの湯気を見つめたまま、しばらく口を開かなかった。


やがて、静かに言う。


「──わしが、みんなより先に令和に来てしもうた理由。

それを今日、話そうと思う」


四人の視線が、龍馬一点に注がれる。




「わしが死んだ、あの夜……

寺田屋で斬られた時のことじゃ」


語り出す声は、普段の朗らかさを欠いていた。


「血が床に広がって……

ああ、これでわしの役目も終わりかと思うた。

じゃが次に目を開けた時……」


龍馬は窓の外を指す。


「そこにあったがは、高い高いビル。

光る看板。鉄の馬のような車。

……令和の東京じゃった」


沖田と以蔵が息を呑む。


「最初は夢じゃと思うた。

じゃが、どうしても信じたくないことがあった」


龍馬は唇を噛みしめた。


「ここにきて……自分の“死”を調べてしもうた。

どういう最期で、

誰に斬られ

その後どう歴史が進んだか」


手がわずかに震えている。


美咲も紗耶も、言葉を挟めなかった。



「歴史書に載っちゅう‘坂本龍馬の死’はな……

思っとったより、ずっとあっけないもんやった」


龍馬は握ったコーヒーカップを置き、両手を重ねる。


「わしが命をかけた日本は……

維新のあとも戦が絶えず、

幾度も失敗と悲劇を繰り返し……

結局、わし一人が騒いでも、何も変わらんかったんじゃないかと……」


その言葉に、以蔵が目を見開く。


「龍馬兄さん……!」


沖田も胸を押さえた。


「龍馬殿……」


龍馬は微笑み、しかしその目はどこか寂しい。


「おまんらの死に様も、わしは知っちょる。

総司も……以蔵も……。

読んだとき、胸が裂けるかと思うたわ」


沖田と以蔵は言葉を失う。



龍馬は深く息を吸う。


「けんどな。

それでもわしは、未来も過去も恨んだりはせん。

この時代を見て、思うたんじゃ」


「わしらの命は、無駄ではなかった。

未熟でも、遠回りでも……

ちゃんと未来に辿り着いちゅう」


沖田の瞳が揺れた。


龍馬は続ける。


「だからこそ、わしは教師になった。

この時代の子どもらが迷ったとき、

背中を押してやれる存在になりたかった」


その時、紗耶がぽつりと呟いた。


「……龍馬先生は、ずっと一人だったんですね」


龍馬は少し驚いた顔をして、

そして静かに笑った。


「せやな。

ずっと一人やった。

……総司や以蔵に、もう一度会えるとは思わんかった」



沖田はゆっくり立ち上がり、龍馬の前に歩く。


「龍馬殿。

歴史がどうであれ……

あなたが残した志を、わたしは忘れません」


以蔵も席を立ち、拳を握る。


「兄さん……

この未来で、生き直そうやないか」


美咲と紗耶も微笑む。


龍馬は一瞬だけ目を伏せ、

そして顔を上げると、いつもの明るい笑顔を見せた。


「……ありがとなあ。

わし、もう一度みんなと未来を歩ける気がしてきたき」


喫茶店のノスタルジックな照明が、五人を温かく包む。


ここに、時代を越えて再び集った“仲間”がいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ