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沖田さん令和に惑う  作者: NoV


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14/26

「時を超えた再会」

放課後の廊下。

 生徒たちが帰り支度をしてざわつく中――


 龍馬がふと視線を向けた先に、

 壁に寄りかかる包帯姿の男がいた。


 鋭い眼光。

 荒れた雰囲気。

 しかし、その奥にある“迷子のような気配”を、龍馬だけは知っている。


「……以蔵?」


 その名を呼ばれた瞬間、

 以蔵の肩がびくりと跳ねた。


「……龍馬、か?」


 令和の光の中で、二人の間だけ時代が逆流する。


 以蔵は目をそらした。


「オレ……おまえの前に、顔出す資格なんかねぇよ」


 その声は震えていた。


「土佐にも戻れん。

 あの頃のオレは……もう、人斬り以蔵でしかねぇ」


 令和の空気の中で、その言葉だけが幕末のまま。


 だが――


「……馬鹿たれ」


 龍馬は、歩いていき――


 

そのまま、以蔵を抱きしめた。


「う……え?」


「ワシはのう……

 おんしが生きちゅうだけで……嬉しいがよ」


 以蔵の目が大きく見開かれる。


「裏切った? 構わん。

 血を流した? 知っちゅう。


 けんどな――

 以蔵、おんしは“ただの人”じゃき。

 生きて、笑って、苦しんで……

 今、ここにおる。それでええ」


 龍馬の声は、昔と何一つ変わらない大きな包容力を帯びていた。


「なんで……なんでそんなこと言えるんだよ」


「おんしの全部を、ワシは許すきに」


「……っ」


 以蔵の喉が詰まり、言葉が出ない。


「許されるわけ……ねぇだろ……

 オレは……あんとき……」


「許すがやき」


 龍馬は強く抱き寄せた。


 その一瞬、

 “人斬り”でも、“武市の手足”でもない。


 ただの 岡田以蔵 に戻った。


 以蔵の目から、一滴だけ涙がこぼれた。


 

 遠くから、静かに見つめる沖田。


「龍馬……お前は……いつだって……」


 自分にはできない“救い方”を、平然とやってのける。


 胸の奥が少し熱くなる。


「……羨ましい男よ」




 廊下の陰で震える美咲と沙羅。


「ちょ……あれ……完全にドラマのクライマックスじゃん……」


「無理……なんか泣けてくる……てか龍馬先生イケメンすぎない?」


「ねぇ見て……以蔵くん、あんな顔できるんだ……」


 沙羅の頬がほんのり赤くなる。


(……ずるい。あれ見たら……好きになっちゃうじゃん……)


 


 ようやく龍馬が腕を離すと、

 以蔵は照れくさそうに顔をそむけた。


「……オレ、あんま変わってねぇぞ」


「変わっちゅうさ。

 こうして令和で歩いちゅう。それがすごいがよ」


「龍馬……」


 以蔵は小さく息を吸い、


「……ありがとよ」


 その言葉は、誰よりも重かった。

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