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沖田さん令和に惑う  作者: NoV


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12/26

沙羅と以蔵


 その日、美咲は沙羅を家に呼んだ。

 理由はひとつ。


「沖田くん、そろそろ外にも慣れてほしいし、友達を紹介したくて」


「……友達、ねぇ」


 沙羅は頬を染めつつ、髪を整えた。

 あの日、病院で見た沖田の横顔が、未だに脳裏から消えない。


(はぁ……あの透明感……あれは反則でしょ……)


 呼吸が整わないまま、玄関を開けると――


「沙羅殿、またお会いできて嬉しい」


 沖田が微笑んでいた。

 優雅で落ち着いた所作。声は柔らかくて、耳が甘くしびれる。


「……っ、ど、ども……」


(無理……こんなん惚れる……)


 沙羅は心の中で転げ回る。


 


 だが――その横に、包帯だらけの男がしゃがんでいた。


「おう、美咲の友達か。おまえ、顔が赤ぇぞ? 熱か?」


「ひゃ、ひゃい!? なんで触るの!? え、待って近っ!」


 人斬り以蔵は、心配そうに沙羅の額に手を伸ばしていた。

 殺気も威圧もない。ただ、不器用な好奇心。


「赤いから、怪我でもしてんのかと思ってよ」


「ち、ちがっ……!!」


 沙羅は全力で後ずさる。

 だが以蔵は、素朴な犬みたいに首を傾げた。


「そっか。なんだ、元気ならよかった」


 その瞬間――沙羅の胸に、微妙な感情が残った。


(……え。なんでちょっと優しいの)

(ていうか、かわ……いやいやいや!? 私は沖田くん派でしょ!?)


 心がぐるぐると揺れる。


 


 美咲が飲み物を用意してる間、三人はソファに座ることになった。


 沙羅の隣:沖田

 沖田の反対側:以蔵

 という危険配置。


 緊張で固まる沙羅の横で、沖田が静かに言った。


「沙羅殿。令和の女子は皆、その……美しいのだな」


「~~~~~~っ!!!」


 心臓が跳ね上がった。

 直球すぎる。罪が深い。解釈違いで死ぬ。


 しかし――


「そうか? 沙羅ってやつ、顔は普通だろ」


「……は?」


 沙羅の視線が以蔵に向く。


 だが以蔵は悪気ゼロで続けた。


「でも――声は、なんか聞きやすくて好きだな」


「…………は???」


 沙羅の脳内は完全に混線した。


 ※沖田の甘い褒め言葉

 ※以蔵の素っ気ないが自然な好意


 このギャップが、妙に心に残る。


 


● 帰り際、静かに落ちた“フラグ”


 日が落ちて、帰る時間。

 沙羅が玄関で靴を履いていると、後ろから声がした。


「……沙羅」


「え、以蔵? どうしたの」


 包帯越しの鋭い目なのに、今日だけは柔らかい。


「おまえ、その……また来いよ。美咲の家」


「……っ」


 それは“俺はお前が嫌じゃない”という意味。

 不器用な男の精一杯。


「べ、別にいいけど……美咲目当てじゃないの?」


 からかうように言うと、以蔵はなぜか目をそらした。


「……おまえも、悪くねぇ」


 短く、照れたように呟く。


 沙羅の心が、一瞬だけ跳ねた。


(……あれ? なんか……可愛い?)

(いやいやいやいや!! 私は沖田くん!! はず!!)


 自分の心が揺れていることに、彼女は気づかぬふりをした。


 


● 玄関の奥でそれを見ていた男


 沖田は静かに、しかし複雑な眼差しでその様子を見ていた。


(……以蔵。お前……)


 嫉妬とも違う。

 ただ、自分では踏み込めない何かを、あの男は自然にやってのける。

 そんな感情が胸の奥をかすめた。


「沙羅殿、また来てくだされ」


「っ、う、うん!!」


 沙羅は真っ赤な顔で手を振って帰っていった。

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