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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第十章
98/123

王立図書館 (2)

 




「ーーーあった」




 リオは本棚に並べられた膨大な量の本の中から一冊の本を選んで抜き取った。

 そして紙に書かれている文字と本の表紙のタイトルを確認する。


 よし、これで最後だ。

 ようやく紙に書かれていた本の最後の一冊を見つけたリオは、その一冊を抱えていた本の一番上に乗せた。



 ……さて、どうするか。

 それなりの量となった本を両手で抱えなおし、リオはしばし思案する。

 全ての本を見つけてきたが、まだ図書館の利用登録などをしていないリオはシルバーがいないと本を借りることはできず、しかしそのシルバー本人は不在。


 まあ、おそらくまた戻ってくるだろうし。

 それまでは当初の予定通り自分も何か本を探すことにするか。



「…しかし本当に広いな」



 リオは顔を上げてぐるりと図書館内を見渡す。

 図書館の中は、外から見た印象をはるかに超えるほど、広々とした空間が広がっていた。


 真っ白な外観とは異なり、内部は重厚で温かみのある色調に包まれていた。

 高い天井は緩やかに弧を描き、天井一面に緻密な絵が描かれている。

 壁面を覆うのは、濃い木目の美しい書架。見上げるほどの高さまでずらりと本が並べられ、その背表紙は革装丁や金箔で彩られている。

 床には磨き抜かれた木材が敷き詰められており、通路の随所には彫刻や石像が飾られ、厳かな空気を漂わせていた。

 窓から差し込む自然光が柔らかく室内を照らし、その光に反射して、天井の金装飾がきらりと輝いた。

 まるでひとつの巨大な芸術作品の中に迷い込んだような、そんな感覚だった。



 実は図書館を訪れる事自体、リオはこちらの世界に来てからこれが初めてだった。

 そしてリオが今いるこの王立図書館は、その資料と規模はアルビオン王国一なのだとか。


 ーーーーここなら、もしかしたら元の世界に戻るための手がかりが見つかるかもしれない。


 テータムでは本屋はあれど図書館はなかったため、詳しく調べることは叶わなかった。

 いつの日かシルバーが言っていた召喚魔法に関する本はないかと、リオは本棚の間を歩きながら探し始める。



 それにーー

 私は、もっとこの世界のことをちゃんと知らなければならない。


 魔法、魔族、精霊、この世界の歴史ーーー。

 私はいまだにこの世界について知らないことが多すぎる。


 そうして、しばらく本棚を物色した後。

 リオは腕の中にさらに数冊の本を積み上げると、空いている席を探すことにした。シルバーが来るまでのあいだ、それらを読んで待つつもりだった。



 その途中で、リオは見覚えのある顔ぶれを見つける。

 


「……あんた、馬鹿?」

 

「俺、お前にだけは言われたくない」

 

「いやいや、だって、それあたしでもわかるわよ」

 

「……!う、嘘だ…!!」

 

「まあまあ、落ち着いて。ほら、教えてやるから絶望しない」

 

 

 リオは、思わず席を探していたその足を止める。

 

 生誕祭の時に会った学生たちだった。

 屋上で会った三人と、下の階の酒場で見かけた三人。

 あの時とは違い私服の彼らは、六人揃って、机の上にノートや参考書のようなものを広げていた。

 


「…勉強、かな」



 橙色の髪の少年が頭を抱えながら唸っている様子を見る限り、彼は勉強があまり得意ではないらしい。

 そんな彼に、青髪の少年と水色の髪の少年が何やら参考書を指差しながら勉強の面倒を見てあげているようだ。

 赤髪の少女は呆れたような目を橙髪の少年に向けているが、隣にいる黄色髪の少女に軽くたしなめられているところを見ると、彼女自身も勉強不得意組なのかもしれない。そんな一連のやり取りを、淡い紫色の髪の少女が苦笑しながら見守っていた。



 彼らの様子に、元の世界にいた頃の記憶がリオの脳内に蘇る。


『涼!この問題の解き方教えて!』

『どれ?…ってこれ、この前先生が解説してたじゃん。あんたもしかして寝てた?』

『受験期なのに流石に寝ないよ、私も!聞いてたけど分からなかったの!!』

『…』

『憐みの目でこっち見ないで!!教えてください涼先生!!』

『はあ。仕方ないな…』


 目の前の光景に、元の世界の自分と友人の姿が重なったリオは、一度目を閉じ、一呼吸すると、再び席を探しに歩き出す。

 


 しかし、



「ーーーあれ?あそこにいる人って…」

 

 彼らの方へと背を向けた瞬間、そんな声が後ろから聞こえた。

 リオは特に気にせずその足を進める。

 

 そして、然程離れていないところに空いている席を見つけた。

 机の上によっこいしょ、と本の山を置いたところで、今度は確実にリオに向けて声がかけられた。

 かけられた、というより叫ばれた。



「あーー!やっぱり、生誕祭の時に屋上にいた人!!」



 少女の声が、広々とした図書館の中に高らかに響き渡った。

 その叫び声に、図書館内の人たちが、何事かと一斉にこちらを注目する。

 声の主である少女は、赤い髪を揺らして勢いよく席を立ち、リオをまっすぐに指差していた。

 突如として集まる視線の波に、リオは思わずその顔を引き攣らせる。

 

 

 まさか、叫ばれるとは…。

 

 

 その後、騒ぎを聞きつけた司書に注意されたのは、言うまでもない。

 





GWも終わってしまったため、しばらくの間更新ペースを落とします。

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