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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第十章
97/115

王立図書館 (1)

 






「うわあ、立派な建物ですね」



 リオは目の前にそびえ立つ建物に思わず感嘆の声を漏らした。

 先日訪れた王宮には及ばないものの、それでも十分すぎるほど堂々とした造りだ。

 目に映るのは、真っ白な石造りの壮麗な建物だった。白亜の外壁は陽光に照らされ柔らかく輝き、入り口と思われる中央の大きなアーチには繊細なレリーフが施されている。

 

「…で、ここは何です?」

「…図書館だ」


 その答えに、リオは美しい図書館から視線をシルバーへと移し、その横顔をじっと見つめた。

 

「へえ、なんかシルバーが図書館って意外ですね」

 

 正直なんか似合わないなと思いつつ、リオはここに来るまでのことを振り返る。






 **

 ****

 ******



 王宮への召集から数日。


 召集の次の日から、式典の打ち合わせなどで忙しそうなシルバー達とは反対に、暇を持て余していたリオは、再びハイラム家の使用人達のお手伝いをして過ごしていた。


 そして今日の昼下がり。

 珍しく早く帰ってきたシルバーがリオに言った。


「ちょっと付き合え。どうせお前暇だろう」


 開口一番に言うことがそれか。

 確かに暇ではあるが。


 そのあんまりな言い方にイラッとしたリオは言い返そうとして……止めた。

 こちらを見るシルバーの顔が、あまりにも酷かったからだ。

 

 僅かに怒りをたたえたその顔は、それ以上に疲労の色を強くうつし、普段なら美しく輝く青みがかった銀色の瞳も濁って見える。

 まるで、死んだ魚のような目だ。

 ……あれ?

 いつだかも同じようなことを言ったような気がする。

 

 よって、シルバーの顔を見て、反論するよりも先に心配する言葉が出てしまったのは至極当然の流れであった。

 

「…シルバー、大丈夫ですか?」

「これが大丈夫に見えるか?」

「………いいえ」

 

 リオの言葉に、シルバーは深くため息を吐くと片手でガシガシと頭をかいた。

 

「……この前、しばらくアルジェンテに戻れないかもしれねぇって言っただろう」

「そういえば言ってましたね」


 シルバー本人がここ数日ハイラム達と忙しそうにしていたので、その訳を聞けていなかったことを思い出す。


「ハイラムにはめられた」


「…一体何があったんです?」

 

 リオは首を傾ける。

 リオの問いに、シルバーは忌々しげに語りだす。

 

 この数日で、冬の式典に向けての準備の計画、大まかな役割分担等が決まった。

 本格的に制作を始めるのは夏頃になるだろうとのことで、それまでほとんどの職人たちは一度自身の店に戻ることになった。

 ハイラム達の作品の構想が出来上がるまでは動けないし、式典の作品制作で店を空けるとなると相応の準備が必要となるからだ。

 本来であればシルバーも同じように夏頃までは特に王都に留まる必要はないはずだったのだが。


「そしたら、あの野郎……自分はこれから式典のことで忙しくなるが、それでも普段から請け負っている仕事や依頼をないがしろにするわけにはいかない。だからそれを手伝えって言いやがった……」

 

「…ご愁傷様です」

 

 シルバー。

 また、いいように使われてしまったんですね。

 いや、"これから使われる"のか。

 

 式典の準備で忙しくなるため、その分手が回らなくなったものをシルバーに補わせようということだ。


「だからって、なんで俺なんだ……ちくしょう」

「……」


 疲れたようにそう呟き項垂れるシルバーだったが、何となくその答えが見えてしまっているリオはかける言葉が見当たらない。


 ハイラムがシルバーを選んだ理由はいくつか思い浮かぶ。

 アルジェンテは普段から閑古鳥の鳴いている店なのだから、仕事が忙しいとは決して言えない。

 時間的にも余裕があり、かつ魔石細工職人の中でも秀でて優れた腕を持つシルバー。

 ……うん、これほど使い勝手の良い人材は他にいないだろうね。


 ハイラムの考えに納得しながらもシルバーにほんの少しだけ同情したリオは、せめてストレスで彼の美しい銀髪が散ることのないようにと密かに祈りを捧げたのだった。




 ******

 ****

 **




 図書館の中へと足を進めながら、リオは隣を歩くシルバーに尋ねる。


「どうして図書館に?」

「魔石細工を作るのにいくつか資料が欲しくてな」

「なるほど」


 魔石細工作りの資料となる本を借りにきたらしい。シルバーらしい理由である。

 しかしどうして自分を連れてきたのかと思っていると、シルバーが一枚の小さな紙をリオに手渡す。

 それを受け取ったリオは首を傾げる。


「何です?これ」


 その紙には、何かのリストが書かれていた。


「リオてめぇはこの紙に書いてある本を探してこい」


 パシリかよ。

 まさかそのために私を連れてきたのかこの男。

 それくらい自分でやれよと思うリオだったが、そんな思いが顔に出ていたのか、シルバーは付け足すように言う。


「興味ある本があったらついでに持ってくればいい」


 まとめて一緒に借りてやる、とそう言い残してシルバーはどこかへと行ってしまった。


 一人残されてしまったリオは紙を片手に小さく溜め息を吐く。

 …まあ、雑用を押し付けられたのは誠に遺憾だが、本を借りれるというのは大変魅力的だ。

 仕方ない、紙に書かれている本をさっさと見つけて、その後に自分も読みたい本を探すことにしよう。


 リオは広い図書館の中、紙を見ながら本を探し始めるのだった。





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