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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第九章
90/123

家族写真 (1)

 

 

 

 


 翌朝、リオはハイラム、シルバーと共に朝食を食べていた。

 

 以前訪れた時も思ったが、さすが貴族。

 ご飯が豪華で美味しい。

 

「食べ終えたらすぐに出発するぞ」

 

 ハイラムがシルバーに言った。

 行き先は言わずもがな王宮である。

 今回お呼ばれされていないリオは、大人しくフィニアン邸でお留守番だ。

 シルバーは視線をハイラムに向けることもなく、ナイフで皿の上のソーセージを切りながら返答する。


「わかってる。で、やっぱり理由は教えねぇつもりか」

 

 結局、まだシルバーは召集の理由を教えてもらっていないらしい。


「まあ、別にいいだろ。この後どうせ知ることになるんだ」

「なら、なおさら今言ってもいいじゃねぇか。なんで教えねぇんだよ」

「ん?ただ、黙ってた方が、知りたくてイライラしているお前の反応が面白いからだが?」

 

 うん。そんな事だろうと思った。

 心の中でリオはそう呟く。

 曇り一つない大きな窓から柔らかく射し込む朝日が少し眩しい。

 そして、はっきりと本音を包み隠さずそう言い切ったハイラムの笑顔は実に爽やかだった。


「……ハイラム、てめえ!そんな理由で黙ってやがるのか、この野郎!!」

「……シルバー、落ち着きましょう。それがハイラムさんを面白がらせてるんですよ」

 

 ハイラムが教えないのは、案外……いや、かなりくだらない理由からであった。


「まあ、俺が教えなくてもカールはすぐに気づいたぞ」


 カールか、久しぶりに名前聞いたな。


「カールも呼ばれているんですね」

「ああ。あいつは直接王宮に転移するとか言っていたな」

「……馬鹿だろあいつ。王宮には防御の魔法が幾重にも厳重に張られてるってのに…壊して入るつもりか」


 呆れたように言うシルバーに、ハイラムはあえて何も言わずに朝食を食べ進めた。

 

 ……カール。

 あの人に常識というものはあるのだろうか。

 ふとカールのことを不安に思うリオであった。



 その後、ハイラムとシルバーを見送ったリオは、フィニアン家の使用人達へと挨拶をしに行く。


「おう、リオじゃねえか!」

 

「あら、久しぶりねえ」

 

「また話し相手になってくれよ!」

 

「あ、リオさん!この前言っていた本の続きが発売されましたよ」

 

 リオは以前ここでお世話になった時に何度か彼らの手伝いをした事があり、みんなリオのことを覚えてくれていた。行く先々で温かい言葉をかけてくれる。

  本日お留守番となったリオは今回も彼らのお手伝いをするつもりだった。

 

 一通り挨拶を終えたリオは、さっそく働き始める。


 まずは、厨房での食器洗い。

 普段からシルバーと共に行なっているので、慣れた手つきでかなりの量の皿を洗っていく。

 

 次は、洗濯物を干す手伝い。

 

 そして、それが終わったらーーーー。

 

 



 ーーーーそうして、あちこちで動き回っているうちに、空はだんだんと赤く染まっていった。


 外の景色が黄昏色に染まるその様子を、リオはフィニアン家のとある一室の窓から眺める。

 何の部屋かは知らないが、使用人さんの手伝いで、この部屋の掃除を任された。

 床を掃除し、シックなデザインの棚の上を拭く。

 すると、その部屋の机の上に写真立てが置かれているのを見つけた。

 本当にたまたま目に入ってしまっただけなのだが、そこに写っているものに、リオは掃除をする手を止めてその写真立てを手にとる。

 


「これは…シルバーに、カール…それから、ハイラムさん?かな」



 そこには、今よりも幼い顔の彼らが写っていた。


 僅かに写っている背景には青空と、何処かの庭だろうか、緑と遠くに小さく見える花々。

 そして写真のフレームいっぱいに写る彼らの姿。



 左端でにこやかに笑っているのはカールだった。

 太陽の下にさらされた黄緑色の巻き毛は艶を放っていて、緑と金の双眸を細めて笑うその表情はリオが知る彼の笑みよりもずっと無邪気で、まるで天使のようだ。

 今もそうだが、幼い時の彼は本当に女の子のようにしか見えない。

 そして、写真の中の彼は白地に緑や茶色の刺繍が施された服を着ている。黒いローブ姿しか見たことのなかったリオの目には、黒以外の色を身に纏う彼がとても新鮮に映った。

 

 右端には、顔を横にそむけながら仕方なく、といった様子で目線だけカメラに向けているシルバー。

 緩やかに癖のついた髪は今よりも短く、縛ってこそいないが恐らく今と同じように梳かすなんて事もせず適当に放ったらかしたままなのであろうことが伺える。

 ……この人、昔っからこうなんだな。

 そしてこの表情である。

 なんか、すごく捻くれてそう。

 

 そんな二人の間に立つのはハイラムだった。

 あ、この人の笑顔は変わらないな。

 シルバーをからかって楽しんでいる時と、同じ顔だ。

 子供の頃だからか、今よりも髪の色が薄く、より金色に近い色をしていた。

 さらによく見ると、ハイラムの手がシルバーを逃さないためにかシルバーの片腕を掴んでいる。

 


 ーーーーそして、その三人の後ろにいる人物。

 

 


「……誰だろう?」

 


 後ろから、三人をまとめて両腕で抱え込むように抱きしめている。


 その男性だけは明らかに大人で、少し、背を屈めているようだった。

 長く綺麗な金髪がサラサラと肩に落ちていて、優しそうな顔は温かい笑顔を見せている。

 笑っているその金色の瞳の奥に、腕の中にいる三人の子供達への愛情のようなものが見えた気がした。

 リオは、まじまじとその男性の顔を見ているうちに、もしかして、とその人の正体が思い浮かんだ。

 


「この人、ハイラムさんのお父さん…?」

 

 口にしてみて、より一層、そうではないかと思う。


 父親にしては些か若すぎるような気もするが、その端正な顔立ちと、笑顔の時の目元がそっくりだった。

 

 





 

「ーーーーーリオ?」

 


 写真に気を取られていたリオは、突然名前を呼ばれびくりと肩をはね上げる。


 声がした方を振り向くと、部屋の入り口にハイラムが立っていた。

 

 

 


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