信頼度ゼロ (7)
「何でだ!!てめえといい、ルイスといい、レックスといい…!!そんなに俺は信用ならねえのか!!」
俺からしたらてめえらの方がいろいろな意味で信用出来ねえ…!!とシルバーは呻きながら髪をかき乱す。
ああ、せっかくの綺麗な髪がぼさぼさに……。
隣に座るリオはカップをテーブルに置き、手を伸ばしてシルバーの銀髪をさり気なく直す。
「俺のどこが信用出来ないんだ?というかお前の場合は本当に思い当たる節がないか、自分の胸に手をあててよおく考えてみろ。色々あるだろうが」
態とらしく穏やかな声で話すハイラムに対し、シルバーの額にはピキリと筋が浮かび上がった。
そして怒りにその手を震わせながらハイラムの胸元に指を突き付ける。
こら、人に指を差すんじゃない。
「てめえこそ自分の胸に手を当ててよおおおぉぉく振り返ってみるんだな。今まで散々人の事を騙して揶揄って悪戯してきたのはどこのどいつだ」
シルバーの言葉にハイラムはやれやれと首を横に振る。
「あのな。それはシルバーが良い反応をしてくれるからいけないのであって、俺はお前以外に対しては至って常識的且つ模範的な人間だ」
……それは、シルバーのことを叩いたら良い音の鳴るおもちゃだと言ったも同然では?
当然、シルバーの目には剣呑な光が宿る。
と、同時にシルバーが立ち上がったため、直していた銀髪はリオの手をすり抜けていった。
「てめえ、喧嘩売ってるのか。売ってんな?売ってるよな?よし上等だ、その喧嘩買ってやらあ!!」
「ははは!ほら、そういう所だよ、シルバー。これだからお前を揶揄わずにはいられないんだ」
怒るシルバー、笑うハイラム。
まるでシルバーが毛を逆立てた猫のように見え、それを揶揄うハイラムのやり取りに……猫と鼠が追いかけっこをする某有名アニメの図を思い浮かべてしまったのは許してほしい。
全く、シルバーも学習しないなあ。
そうやっていちいち噛み付くからハイラムさんも面白がってやめてくれないんだって。
そんな事を思いながらも、2人のじゃれ合いを尻目にリオは1人お茶を楽しむ。
まあ、正直ハイラムさんも良い大人が何してるんだって感じはするけれども。
「ーーーー本っ当に、てめえといると苛ついて仕方ねえ!!」
しばらくすると、シルバーが一段と大きな声でそう言い放った。
その言葉を聞いた瞬間ハイラムの唇が何かを企むように弧を描く。
おっと…?これは何か流れが変わったぞ。
リオはカップを置き2人のやりとりに注目する。
「ははっ、なら今すぐにここを出て行ってくれても構わないんだぞ?」
「言われなくともそうしてやるさ!」
条件反射のようにそう言い放ち、すぐさまその場を離れようとしたシルバーだったが、そこで2人の勝敗が決まった。
「まあ、もっとも、」
顎に片手を当てながらハイラムは実ににこやかに、優雅に微笑む。
「この時間から宿を探すのは骨が折れそうだがな」
その一言に、ついにシルバーは沈黙した。
そして口を閉ざしたシルバーをよそに、ハイラムはリオに話しかける。
「リオ、今日はもう遅いからここに泊まっていくといい。元々明日だってそうする予定だったからな」
「ありがとうございます」
「部屋は前と同じ所を好きに使ってくれていい」
「分かりました」
意図的にシルバーを外して進められる会話に、シルバーはついに口を開く。
わずかに俯いたその顔は前髪に隠れていて、表情までは読み取れない。
「………ハイラム」
「どうした、シルバー」
「前言撤回だ。さっきのことは謝る。俺も泊めてくれ」
おお。
意外と素直な反応だと内心リオが驚いていると。
「仕方ないな。お前も泊めてやるか」
おっとこちらも意外とすんなりと許可を出したぞ、大人の対応だ。
しかしこれで一件落着だと思ったのが甘かった。
「シルバーの部屋は…ああ、お前は廊下のソファがあれば十分か」
ーーー前言撤回。
この人、大人気ねえ……!!
ハイラムの言葉に思わずリオの顔が引き攣る。
ハイラムは再び愉快そうな笑みを浮かべてシルバーの様子を伺っていた。
当然、ハイラムの一言にシルバーはバッとその顔を上げて噛みつく。
「は?何でそうなる!どうしてリオには部屋があって、俺はソファなんだ!?」
「だって、この前お前があんまりにもあのソファで気持ち良さそうに寝ていたから…」
「あれはてめえが連れ回したせいで疲れが溜まってたからだろうが!!」
ラウンドツーと言わんばかりに再び始まってしまった2人の大人気ない言い争い。
部屋好きにしていいって言われたし、もう寝ようかな…。
リオは2人を放置して、自分にあてがわれた部屋へと足を運んだのだった。




