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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第九章
87/126

信用度ゼロ (5)

 




 結局、その後ルイスがリオの元に戻ってくることはなかった。


 それよりも先にシルバーがリオをむかえに来たからだ。

 クレイグと談笑しながら見学をしていたはずが、途中から話の雲行きが怪しくなり。

 何故か「最近は魔獣の被害も多く物騒だから自己防衛できるにこしたことはない」と謎の特訓が始まりそうであったその時に、救世主が如くシルバーは現れた。


 あまりのタイミングの良さに、夕陽を背負いながら姿を見せたシルバーをリオは思わず手を合わせ拝んだほどだ。



「シルバー有難うございます、今この時程貴方に会えて感謝の念を抱いたことはありません」


「あぁ?何言ってんだお前」



 しかも何気に失礼だな、と言ったシルバーはなにやら初めから不機嫌そうであった。


 これは王宮で何かあったなと確信しながらもリオは一応聞いてみる。



「………機嫌がよろしくないようですが、一体何があったんです?」


「………ハイラムがいなかった」



 シルバーはぶすりとした表情で無愛想に言い放つ。


「………意味が分からないのですが」

「俺だって意味が分からねえ」


 吐き捨てるようにそう言ったシルバーは何やらスイッチが入ってしまったのか、王宮で溜め込んだのであろう鬱憤をぶちまけるかのように怒涛の勢いで話し始める。





「ルイスの言う通り王宮にハイラムがいるもんだと思ってみりゃあ何処にもいねえ。どうしたもんかと思ってりゃあ、あれよあれよと連れてかれた先で鬼畜野郎のいる部屋に閉じ込められるしな。一体何が悲しくて俺があの鬼畜野郎と2人きりで椅子で向かい合わなくちゃならねえんだ、拷問か。ああいや拷問だったな、ずっと笑顔で毒を吐きやがって。そんなに人を痛めつけるのが楽しいかあの野郎。俺じゃなかったらあんな陰湿な言葉攻め少なくとも1ヶ月は立ち直れねえぞ。それにハイラムだっててめえが俺を王都に呼ぶためにあんな手紙まで用意するに至ったんだろう、なのに鬼畜曰く今日は来ていないとかふざけんな。呼び出しておいて本人が不在とかあり得ねぇだろうが、こちとら王都まで5日はかかったんだぞ、おい。それにハイラムがいねえおかげで俺はこんな時間まで鬼畜野郎の話に付き合わされたしな。というか彼奴も仕事しなくていいのか、暇人かよ。あんなのが次期国王で大丈夫なのかこの国は、不安しかねえよ。あんな鬼畜野郎が王とか、彼奴が即位したらいっそ他の大陸へ亡命するか。結局王都に呼ばれた意味も分からず終いだし、大体、ハイラムの野郎は昔っから、」


「ーーーーシルバー!貴方の不満はよく分かりましたから、一旦ここでやめにしましょう!!」



 凄まじい剣幕と勢いに耐えられなかったリオの声に遮られ、シルバーの話は強制終了となった。

 シルバーにここまで言わせる鬼畜野郎とは一体どんな人物なのか。気にはなるものの藪蛇をつつきたくはないリオは思うまでに留める。

 リオの隣ではシルバーのあまりの勢いにクレイグが顔を引き攣らせていた。





 と、そんなやりとりがあってからシルバーとリオはハイラムの元を訪ねる事になったのだが、そこでさらにシルバーの怒りが募る展開が待っているとは誰も想像していなかった。

 それはハイラムにとっても予期せぬ出来事であった。



 騎士団を後にした2人は途中で馬車を捕まえ、王都の帰路を行く人達を眺めながらフィニアン邸へと向かった。

 すでに日も落ち、夕闇が辺りを覆い始める中で光を灯す大きな邸は相変わらず立派で、中からは執事がリオ達を出迎えてくれた。

 以前会った時には立ち振る舞いに一切乱れのなかった執事が、リオ達を目にして一瞬驚いたようにその目を見開いていた。

 今思えば、その時点で微かな違和感はあったのだ。


 通された先ではハイラムが見るからに高そうな椅子に腰をかけていた。

 そしてシルバーとリオを目にした彼が開口一番に言い放ったのは。




「久しぶりだな、シルバーにリオ。今日は一体どうした?」



 どうした、だと…?

 リオは予想だにしないハイラムの一言に、思考を止め固まった。

 しかし不思議そうに眉をひそめながらこちらを見るハイラムの表情に、彼が本心からシルバーとリオが何故フィニアン邸を訪ねたのか疑問に思っていることを悟る。


 ほぼ同時に、己のすぐ隣から何かがブチリと切れる音が聞こえた。



「どうした、だァ………?」


 シルバーは地を這うような声と共にゆらりと体を揺らしながら一歩、また一歩とハイラムに近付く。

 そして次の瞬間、シルバーの両手がガッとハイラムの襟首を掴んで締め上げた。



「ふざけんなよこの野郎。てめえが俺を王都に呼び出したんだろうが」


「………は?」



 ハイラムの目が見開かれ、ようやく何かがおかしいと気づいた様子を見せる。

 普段より格段に低い声で、珍しくシルバーが怒鳴らずにいるのが逆に怖い。

 それでもまだいまいちピンとこないらしいハイラムの様子にシルバーが無言で両手に力を込める。



 ぎりぎりとさらに締まる首元にハイラムは降参とでも言うように両手を上げ、かすれた声で言葉を絞り出した。



「………待て、シルバー。きちんと話し合おうじゃないか」




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