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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第九章
79/123

騎士の訪問 (4)

 




 はあ、と何度目になるかわからない溜め息がシルバーから聞こえた。

 しばしガシガシと頭をかき乱していたが、やがてこのままでは話が進まないと思ったのだろう。

 色々と認めたくはないがハイラムのせいだということは分かった、と不服そうに言ってから、ジトりとルイスを半眼で見やる。


「で、何でわざわざてめぇを寄越すんだよ。それに、確認と保険って何なんだ」


「あー、それはさ。 "王家の紋章にはシルバーも従わざるえないだろう。" って思う一方で、 "いや、シルバーのことだから紋章に気づく前にハイラムさんからだと思って手紙を破り捨ててるかもしれない。紋章に気づいたとしても気にせず無視するかもしれない。" ってみんな不安になり始めちゃったんだよねー」


「流石に王家の紋章付いてて無視なんざしねぇぞ!俺はそこまで不敬になった覚えはねぇっ!!」

 

 

 怒ったシルバーが噛み付くようにルイスに言葉を返す。

 

 シルバー。

 貴方の人望って、一体……。

 

 

「そこで王の配下にある騎士団の中で、お前の友人である俺に白羽の矢がたったワケ。ちゃんと確認しに行ってこいってね。シルバーが手紙の内容を拒否するようなら王都まで引きずってこいってさ」

 

 ルイスはどこか投げやりな様子で肩をすくめてみせた。

 一通り経緯を聞き終えたシルバーは忌々しそうに舌打ちをする。

 

「ちっ。俺のことなんだと思ってやがるんだ王都の連中は」

「それは今までの行いが悪かったからじゃない?」

「あ"ァ?ルイス、そりゃどういう意味だ。ていうか、それにしてもてめぇ、何でこんなに早く来たんだ。まだ約束の日まで十日以上はあるだろう」

「お前が王都に行かないって言った場合を想定して、お前を説得する時間が含まれてんの」


 ルイスの言葉にリオは思わず憐みの目をシルバーへ向ける。



「シルバー、貴方とことん信用がないんですね……」

「黙れリオ」



 ルイスはやれやれとでも言うように首を左右にゆるく振りながら続ける。


「全く、こっちの身にもなって欲しいねー。ここまでくるの、本当にしんどかったんだからさ。俺が転移使えないの知ってるくせに、あの鬼畜!!」

 

 くぅ!と泣き真似をしながら愚痴り始めるルイスに、シルバーは本格的に嫌そうな顔をした。

 

「…………で、てめぇはどうするんだ。俺はちゃんと王都へ行くつもりだから、別にてめぇが見張る必要も、俺を引きずって連れて行く必要もない」


「…………それは帰れと?はるばる五日かけて王都からやってきた俺にさっさと帰れと言ってる?」

「随分察しがいいじゃねえか。その通りだ。今すぐ王都へ帰りやがれ」


 しっしっと追い払うようにシルバーはルイスに片手を振る。

 そんなシルバーの言葉と態度に、ルイスがわっと泣きわめくように声を上げた。


「酷い!シルバー、お前がこんなにも薄情な奴だとは思わなかったぞ!!俺、すっごく疲れてるってのに………………せめて…………せめて一晩泊めてやるくらいの優しさはないの!?」


 ルイスの訴えにも一切動じずに、シルバーは真顔で言い放つ。


「てめぇは一晩泊めたらずっと居座り続けるだろ」

「……」

「図星か」

 

 

 そこでルイスはこほん、と一つ咳払いをすると、幾分か落ち着いた口調で話し始めた。

 

「確かに、今のお前は王都へ行くって言ってるけど……シルバーは気分屋だからな。実際に王都へ出発する直前までどうなるかわからない」

 

 うーん。

 ありえなくは……ないな。

 今までのシルバーからして、リオはルイスの言葉を完全に否定することはできなかった。

 


「…………ってことで、俺はここに居座る!お前と一緒に王都へ行く!!」

 

「行くぞ、俺は絶対王都へ行く!だからてめぇは帰れ!!こんなうるせぇ奴と一緒に一週間以上もなんて堪えられるか!!」

 

 

 シルバーはシルバーでルイスと一緒ってことが堪えられないのか。

 結構必死な様子で叫んでいるのを見て、相当嫌なんだな、とリオは思う。

 

 しかしルイスも引き下がらない。

 まるで何かに取り憑かれたかのような表情でシルバーに迫る。

 

「あのね。もしこのまま王都へ帰って、約束の日に王都にお前の姿がなかったら俺が殺されるの。あの鬼畜にシめられるの。オーケー?」


 先ほどから出てくる鬼畜とはいったい誰なのか。

 ルイスにとっては余程怒らせたくない、恐ろしい人物のようだ。

 一方のシルバーは、必死さがにじみ出るルイスの声にもなんのその。

 間髪入れずに容赦なく叫び返す。


「知るか!だいたい、俺は行くって言ってんだから何も心配することはねぇだろう!」


「もしかしたらシルバーが何か魔石細工の依頼を引き受けて約束の日に遅れる可能性だってあるじゃん!?だってお前、変なところで他人に甘いし!」


「あー確かに。困ってる人見たらその人優先しますね、絶対」


「だよね!?いや、それはいいことだよ!いいことなんだけど、それで間に合わなかったら俺の命が危ない!!あいつ予定狂うの嫌いだから!!」


「その時は潔く死ね!!」

 

 


 

 それからもしばらく言い合っていた二人だったが、やがてルイスの相手に疲れ果てたシルバーが折れることで決着がついた。

 

 


 

 

 

 


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