騎士の訪問 (3)
「ま、それじゃあ本題に入ろうか」
ルイスはパン、と軽く手を叩いてからリオとシルバーに話し始める。
「まず、王家の紋章付きの手紙が届いたと思うんだけど、」
「はい、ストップ!!」
耳を疑うような単語に、冒頭からリオは思わず待ったをかけた。
「王家?紋章付きの手紙?それって、どういうことです?誰から、誰に手紙が届いたと?」
「え?王家から、シルバー宛にだけど」
その言葉に、リオの脳内は活動を停止した。
王家から、シルバー宛に?
一国の王族から、一魔石細工職人のシルバーに?
………はは。
リオは乾いた笑いを零しながら、ルイスの話は何かの悪い冗談だと決めつけシルバーに話しかける。
そんな手紙届いてねぇぞ、と言ってくれるだろうと期待を込めて。
「ちょっとシルバー。この人、シルバーに王家から手紙が届いてるはずとかなんとか言ってくるんですけど」
「ああ、届いてるぞ」
「ですよねー。王家から手紙なんて届いてなーーーーはあっ!?」
届いてる、だって?
何でもないことのようにさらりと肯定したシルバーに、リオはスンと真顔になると片手を小さく上げて言った。
「………シルバー、詳しい説明を求めます」
「大会から帰ってきた次の日に、ポストを確認したら、俺宛に王家の紋章付きの手紙が届いてた。それだけだが?」
しれっと言い放つシルバーにリオは溜め息をついた。
「それだけって。それだけで片付けていいんですか、それ……」
どこか肩を落として話すリオに対し、シルバーは相変わらずの調子で言葉を続ける。
「ぶっちゃけ、高そうな封筒だったから、ハイラムの野郎かと思ってすぐに破り捨てようとしたんだが…」
「……シルバー。流石に、その中身も見ずに手紙を破るのはやめたほうがいいと思います」
「で、そしたら手紙の封蝋に、王家の紋章があったから、流石に破くわけにはいかねぇ。渋々中身を出して読んでみたら、」
「みたら?」
一瞬言葉を切って間を開けたシルバー。
リオは同じ言葉を繰り返し、彼に続きを促す。
「冬白の月1日に王宮に来いって書いてありやがった」
「………シルバー。貴方、王家から呼び出されるなんて、一体何したんです?」
まさか本当に何か犯罪でも犯したんじゃないだろうな……とでも言いたげなリオの疑惑に満ちた視線に、シルバーは銀色の目をつり上げる。
「なんだよ、その目は。俺は別に何もしてねえぞ!」
そこで二人のやりとりを黙って見ていたルイスが口を開く。
「とりあえず、手紙はちゃんと読んでくれたんだね?あーよかったー」
ふぅ、と安堵したように一息つく。
そんなルイスを見て、シルバーの鋭い視線が今度はルイスに向く。
「おい、何一息ついてやがる。こっちはまだ何も分かっちゃいねぇんだよ」
その言葉に、ルイスは目をぱちくりさせて、不思議そうに小さく首を傾けた。
「え?何で?手紙に書いてなかったの?」
「王宮に来い、しか書いてなかったから聞いてんだろうが」
「マジ?」
ルイスは目を見開いて驚いたような声を上げると、その後、はあ、と小さく溜め息を吐く。
「えっと、どこから話そうかなー」
ルイスはうーん、と悩むような声をあげる。
「まあ、最初にぶっちゃけると、俺もお前が王宮に召される理由は知らない」
「知らねぇのか。使えねぇ」
ルイスの言葉に、シルバーが容赦なく言い放った。
正直リオも同じことを思った。
「悪かったね!ただ、俺が来たのは、シルバーが手紙読んだかの確認と、お前がちゃんと王宮行くための保険」
「はあ?何だそれは」
「ここからはちょっと長くなるけど、ちゃんと聞いてねー」
ルイス曰く、現在ハイラムが国中の優秀な魔石細工職人に、王都へ来るように声をかけているとのこと。
そこで、シルバーとカールの二人が問題となったらしい。
「カールさんは放浪中で居場所がつかめないでしょ?で、シルバーはシルバーでハイラムさんが呼び寄せたんじゃ絶対王都に来ないでしょ?」
「…」
「…」
確かに、と思ってしまったリオはシルバーと共に沈黙する。
「ハイラムさんは王からの命令を受けて職人を集めてるらしくてさ。だから今回は、シルバーとカールさんをどうしても呼び寄せなきゃいけなかったんだ。――ってことで、最終手段に出たってワケ」
「……最終手段って、あの手紙のことか」
「そうそう。ハイラムさん、国王陛下にシルバーやカールのことを申し上げたらしいんだよね。『二人に関しては、私の力だけではどうにもなりません』ってね。そういうワケで、お前のところに手紙がいったの」
ハイラムさん、そんなことを国王陛下にお話ししたの?
一国の王にそんなくだらない内容を申し上げてよかったのだろうか。
「ハイラムの野郎…」
「流石に王家の紋章見たらシルバーでも従うしかないでしょ?それに、あいつも個人的に会いたいって言ってさ。もう、王宮に呼んじゃえ!みたいな?」
…………軽くね?
え、そんな軽いノリで王宮に人呼んじゃっていいの?
リオは、この国の王族に対するイメージがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。




