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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第九章
77/123

騎士の訪問 (2)

 



 

 

「いやー!!ごめんごめん!」

 


 爽やかに笑いながら謝る男をシルバーが忌々しそうに睨んでいる。

 場所は変わり、落ち着いた男をリビングへと連れてきたリオとシルバーは先ほどの説明を求めたのだった。


「まずね、シルバー以外の人間が出てきた時点で俺パニックだったワケ。ここシルバーの家じゃないのかなー?って思ったら合ってるって言うし」


「……それで?」


「で、シルバーの奴、この可愛い子とどういう関係が!?って再びパニック状態。だって、シルバーに恋人とか聞いたことなかったから、シルバーの子供ではないでしょ?そもそも似てないし、子供にしても年齢的に大きいから違うなって」


「聞くのも馬鹿らしくなってきたが、それで?」


「うんうん、それでねー。リオ君の手が目に入ったワケさ」

「私の手?」

「随分手荒れが酷かったからさー。てっきりシルバーが何処かから攫って身の回りの家事でもやらせてこき使ってるのかなって」

 


 そこまで、酷いのか。私の手荒れ……。

 自分でもちょっとは思っていたが、そんな風に思われるくらい、酷かったのか。

 一応リオだって女だ。

 流石にへこむ。

 ………………早くクリーム買おう。

 


 全て聞き終えたシルバーが、呆れ果てたように言う。

 

「……てめぇの頭ん中はどうなってんだろうな。よくそんな事が思いつくもんだ。劇とかの脚本家にでもなれんじゃねえか?」


「本当?ありがとう」

「褒めてねえよ」

 

 ぴしゃりと言い放つシルバーに男は笑いながら謝る。

 

「だから悪かったってー。俺もパニック状態でまともな考えできなかったんだよ」


 その様子からは全く反省の色は伺えないが。


 それで、この人は一体誰なのだろうか?

 ルイス、とか言ったっけ?

 リオは淹れた茶をテーブルの上に置きながら男を観察する。

 

 パーマがかかったようにゆるゆると波打つ茶色い髪と、同色のタレ目。

 その甘いマスクは常に笑顔の状態で保たれている。いつも笑顔のカールと良い勝負かもしれない。

 店の入り口で見た限りではシルバーよりも背が高く、一見細身のようだがふとした動作で服の上からでも筋肉が浮かび上がるのが分かるため、相当鍛えているのだろう。


 シルバーの知り合いっていったら同じ魔石細工職人かと思ったけれど、そんな感じじゃないよな、この人。

 そう、むしろーーー。

 


 男は礼を言いながら出された茶を飲み、リオの視線に気づいたのかあっ、としたように声をあげた。

 

「いやーごめん。俺、リオ君にちゃんとした自己紹介まだだったよね?」

 

 カタン。と茶を置くと男は朗らかに笑った。

 

「俺はルイス。ルイス・レインナート。好きに呼んでいいよー」

「あ、はい。私もリオで結構ですよ」

「あ、本当?呼び捨ての方が楽だから助かるわー」

 

 と、そこでシルバーが面倒臭そうに口を開く。

 

 

「で?騎士団の副団長様々がはるばるこんな街外れの店まで、何の用だ?」

 

 

 ………はい?

 リオは驚いてルイスを振り返る。

 シルバーの言葉に、ルイスは初めてニヤリ、と口元だけで笑みを作った。

 


 騎士団、だって…?


 リオはそれまでの爽やかな笑顔とは違い、目の前で食えない笑みを浮かべるルイスを凝視する。

 

 しかも、副団長!?

 なんでそんな人がうちに来るんだよ!?

 っていうか、さっきまでと違ってその笑顔が怖い!

 

 すると、ルイスの笑みを見てシルバーはますます嫌そうに顔を顰めた。

 


「わざとらしく表情作ってんじゃねえよ。リオがビビってんじゃねえか」

 


 その一言に、ルイスはすぐにその表情を崩した。

 


「えー?だって、ここってそういう場面じゃないの?俺の正体が明かされて、え!?副団長!?何でそんな人がここに!?ってところでついに始まる超シリアス展開だと思ったんでちょっと意味ありげに口角あげてみました☆」

 


 キャハッ、とでも言うように最後はウインクまでつけるルイスに、シルバーは心底気分が悪そうだった。

 

 正直、最後のウインクにはリオも引いた。

 思わず無言で茶を持って数歩ルイスから離れてしまったくらいだ。

 

「ちょいちょい。リオ、その反応は流石の俺でもちょっと傷つくよー」

「"ちょっと"ですか……」

「ん?何か言った?」


 

 リオは小声で、しかし真剣な声色でシルバーに進言した。

 


「シルバー。貴方、自分の交友関係について考え直した方がいいのでは?」

「……同感だ」

 





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