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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第九章
76/115

騎士の訪問 (1)

 

 

 

 


 森を彩っていた木々もその葉を散らし、最近では昼間でも肌寒く感じる秋の終わり。

 本日も街外れの魔石細工店アルジェンテでは、閑古鳥が鳴いていた。

 

 

「あと十日もすれば冬白の月に入るんだもんな……寒い訳だ」

 

 

 リビングで一人、リオがぶるり、と身体を震わせながら呟く。

 

 寒くなるにつれ空気も乾燥してきているのか、最近では家事による手荒れがひどい。

 

「クリーム欲しいなあ」

 

 今度出かけた時に買おう。

 まだ店を開けるには早いため、少し茶でも飲もうかと思ったその時。

 

 


 ドンドンドン!

 

 

 

「……ん?」

 


 何やら、店の方からドアを叩く音がする。

 こんな朝っぱらから一体誰だろう、とリオは階段を下りてドアを開けに行く。

 ドンドンドン、という音はずっと続いていて時おり「おーい」と言う声も聞こえる。

 普通、すみませんとかごめんくださいじゃないの?と思いながらリオはドアを開けた。

 

 

「「………どちら様ですか?」」

 


 ………ハモった。

 咄嗟にその言葉が頭に浮かんだ。

 

 いやいや待て待て待て。

 私がどちら様?と聞くのはまだ分かる。

 なんでこの人がどちら様?と聞いてくるのか。


 リオが困惑しながらももう一度相手の顔を確認すると、目の前の人物も困惑の表情を浮かべていた。

 


「あっれー、おかしいな。ここシルバーの家であってるよな?あれ、俺地図間違えたのか?」

「いえいえ、あってますよ。ここはシルバーの家ですが」

 

 首を捻りながら言う彼に、リオはここがシルバーの家であることを伝える。

 シルバーの知り合いだろうか。

 


「あ、だよなあ。そうだよなあ………って、ぇぇぇえええええええ!?マジで!?え?どゆこと!!!?」

 


 リオの言葉に男は少しほっとしたように何度か頷いていたが、その途中でいきなり叫び出す。

 この人一体何なんだ、と思いながらもリオは声をかける。

 

「……大丈夫ですか?」

「え、あんた誰!?マジで誰!?何者!?」

「リオです」

「ああ、リオっていうんだね。俺はルイス。どうぞよろしく……ってそうじゃない!」

「……大丈夫ですか?主に頭の方」

  「何で!?何でシルバーの家にいるの!?まさか弟子!?シルバーの弟子とか!?というかサラッと失礼なこと言ったね!?」

「いえ、弟子ではありませんが」

 

 何か相手にするのが面倒になってきたぞ、とリオが一人騒ぐ男に冷めた視線を送っていると。

 

「だよね!あいつが弟子とかとるようには思えないし!え、いつからいるの?どうして!?え、本当意味わかんな、」

 

「うるっせえな。一体何事だ」

 


 男の声が店の奥まで響いていたのか、不機嫌面のシルバーが現れた。


 

「シルバーァァアアアア!!!」

「うおっ!?」

 

 シルバーの姿を目にした男が叫び、そのままシルバーに詰め寄る。

 

 男の顔には焦りと、何故か恐ろしいものでも見たかのような表情が浮かんでいた。

 そして震える声で続ける。

 


「お、お前!いつの間に…!どこからこんな子供を攫ってきたんだ…!!」

 


「はい?」

「はァ?」

 

 思わぬ男の一言に、リオとシルバーが素っ頓狂な声をあげる。

 

 子供?攫う?シルバーが?

 つい最近同じようなセリフを聞いたが、それはあくまでシルバーも冗談で言ったものだった。

 しかし、目の前の男の声と表情が本気だと語っていた。

 

 一体どうしてそんなことに?とまだ状況を飲み込めていないリオだったが、男の視線がちらちらと自分に向けられていることに気づく。

 え、まさか…。


 リオは嫌な予感がした。

 それはシルバーも同じだったらしい。

 

「待て待て待て待て。子供って、誰だ?まさか……リオのことか?つーか、何でテメェがここにいやがる?何でそんなにうるせぇんだ?」

「そうだよ!?そうだけど!?リオ君のことだけど!?」

「うるせぇな……これじゃ会話にならねぇ。少し落ち着け」

「友人が犯罪犯したかもしれないっていうのに落ち着けっていう方が無理だよ!!」

「だから、どこをどうしたら俺が犯罪犯したってことに繋がるんだ」

「証拠ならここにいるリオ君で十分だって!!」

「はあーー!?!?」

 

 

 シルバーの叫びをBGMに、やはり子供とは私のことか、とリオは自分の嫌な予感が的中していたことを悟る。

 悲壮感漂う表情で男はシルバーの肩に手を置く。

 

「うっ、うっ……シルバー、いくらリオ君が可愛かったからって、それはいけないよ」

「おい、何勘違いしてやがる、リオは、」

「何が…一体何があったんだシルバー。何が君をこんな風に、」

「人の話を聞きやがれ」

 


 それからもしばらく会話を試みようとしていたシルバーだったが、それでも変わらぬ男の様子に、ついに呆れてしまったようだ。

 うんざりした顔で、溜め息を吐く。

 

「だからっ………はぁ、アホらし。こんな馬鹿の相手してられるか」

「何故、何故なんだ……」

「あーもう分かったって」

「リオ君もかわいそうに。まだこんな子供なのに」

 

 ……子供子供うるさいな。

 私はそんな子供じゃないっての。

 

 

「……今年で20になりましたが」

 


 あまりにも子供子供言われ、かちんときたリオが笑顔で言い放つと、男はパッと驚愕の表情でリオを振り返った。

 

「年齢詐欺!?」

「失礼ですね」

「リオ、もうやめとけ。この馬鹿に何言っても無駄だ。こっちが疲れるだけだぞ」

「シルバー何でそんなに落ち着いてんの!?何でそんなに冷静なの!?もっと君は短気だったはずだよ!?どうしちゃったの!?」

「テメェ!俺を一体なんだと思ってやがんだ!!どうしちまったんだはこっちの台詞だボケ!!マジで意味わかんねえ!!つーか本気でうぜぇ!!」

「あ、今ちょっと安心した」

 

 シルバーの怒声に、ようやく男は落ち着きを取り戻したようだった。

 ……いつだったか、カールも同じような反応したことあったよね。

 


 それを見たシルバーが、さらに目をつり上げたのは言うまでもない。

 


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