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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第七章
53/123

黒ガ意味スルモノ

 

 





 

 

「……行っちゃいましたね」

「ああ」

「寂しいですか?」



 笑いながらシルバーに尋ねれば、「調子乗ってんじゃねえ」と軽く頭を叩かれてしまった。



「で、どうする?シルバーに、リオ、それからカールも。今日は、俺の家に泊まってい、」

「全力で遠慮する」


 シルバーはハイラムに最後まで言わせずに必死の形相で言った。

 その様子に、けらけらとカールが笑いながら言う。


「僕も、遠慮するよぉ〜」

「なら、馬車を出そうか」

「んー、それも必要ないかなぁ。あ、そうだ。シルバーとリオも、僕が送ってあげるぅ」

「…本当か?」


 カールの言葉に、少し驚いたような表情をするシルバー。

 そして、その言葉に甘えたリオ達は、カールの魔法でアルジェンテへと転移した。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 


 

 もう、見慣れてしまった光から解放されると、リオはしみじみと呟く。

 

「魔法って、便利ですね」



 そして、同じく光から出てきたカールは早速ソファへとダイブする。

 

「ーーーっはぁ。つっかれたぁ〜」



 リオは三人分のお茶を淹れる。

 既にソファへと腰をかけたシルバーが、ソファに埋もれるカールに尋ねた。

 

「で?てめぇはなんで審査員なんかしてたんだよ」

「それ、聞いちゃう〜?」

「気になるだろうが」


 カールは、ソファから体を起こす。


「ま、そんな大したワケでもないけどぉ。一言で言うなら、連行、だよねぇ」

「連行?」

「そ。なんでも、審査員の一人が風邪引いたらしくてさぁ〜。それで、たまたま僕の目撃情報を得たハイラムが、僕を捕まえに来たってワケ。何も僕じゃなくてもよかったと思うんだけどねぇ〜」


「……それは、気の毒だったな」

「まったく感情のこもっていない慰めをありがとぉ、シルバー」

「……俺じゃなくて、よかった」

「……なかなか酷いこと言うね、シルバー」

 

 シルバーの言葉に、珍しくカールが笑顔を消して呟く。

 そこへお茶を持って行き、リオもソファに座る。


 そこからは、互いに別れた後の出来事について話した。

 ………途中、カールの置手紙のくだりに入った時、シルバーはカールのフードを引っ張り、その首を絞め上げていたが。

 


「ーーーけほっ、けほっ。…そっかあ。狼の群れなんて、リオちゃん達も、大変だったねぇ」

「ええ」

「僕が行った先でも、似たような話を聞いたよぉ〜」

「……そうか」

「確か、マースディンの方は結構酷いみたいだよぉ。何軒か、魔獣の魔法で家が消し飛ばされたって」


 カールはにこやかに言うが、それは笑いながら言う内容ではないだろう、とリオは心の中でつっこむ。


「魔獣って、魔法を使うんですか」

「ん?そうだねぇ、使う奴もいるよぉ」

「じゃあ、魔獣は魔力を持ってて、魔法を使うことができる動物、ですか?」

「それはぁ、ちょっと、不正解〜」


 リオの言葉にカールはにっこり笑う。


「そんなこと言ったら、人間も含めてみーんな魔獣になっちゃうよぉ。この世界の生き物は、みんな魔力を持っているからね」

「…へぇ」

「それに、魔獣以外にも、魔法を使える動物は存在する」


 では、魔獣とは一体何なのか。

 リオが少し思考を巡らせ始めると、カールの声がそれを遮った。

 


「魔獣はねぇ、闇の属性を持ってるんだよぉ」



 そして、リオが顔を上げると、緑と金の双眸と目があった。

 


「ーーーねぇ、リオちゃん」

 

 

 カールの手がリオの方へとのびる。

 突然のことで、リオはそれに反応することが出来ない。

 

「どうして、黒い髪や瞳を持つ人間がいないか、知ってる?」


 リオの髪を縛っていたリボンが解かれ、黒い髪が、肩に落ちる。

 その黒髪を一房手に取ったカールは、それを口元に引き寄せた。


 そして、カールは妖しげに光る瞳をこちらに向けながら、言った。

 

 


「それは、人間が闇の属性を持たないからだよ」

 




 ーーーー息が、止まった。

 

 

 

 

 


「ーーーーカール」


 金縛りにあったように動くことのできないリオの耳に、諌めるような声が響いた。

 


「は〜いはい。そんな睨まないでよぉ、シルバー」


 いつものようにヘラヘラと笑い、カールは、ぱっとリオの髪から手を離す。


 シルバーはカールの手から青いリボンをひったくると、リオの背後にまわった。

 そして、口にそのリボンをくわえながら、両手でリオの髪をまとめ始める。

 まだ呆然とした様子のリオに、カールは眉を下げながら謝る。


「ごめんねぇ、リオちゃん。怖がらせちゃったかなぁ?」

「あ、いえ。大丈夫です。少し、驚いただけですから」

 

  いつも通りのカールの雰囲気に、リオはようやく我に返る。

 そう、驚いた、だけだ。

 

「ん、出来たぞ」


 その声で、シルバーがリオの髪を結び直してくれたのだと気づく。


「ありがとうございます」



 シルバーは、リオの背後からソファへと移動した。

 


「カール、てめぇは、帰れ」

「…分かったよぉ。シルバーの言うとおり、大人しく出て行くことにするよ〜」



 そして、カールはぴょん、と立ち上がった。

 片手で、黒いローブのフードを被る。

 

 

 

「じゃあね、シルバー、リオちゃん」

 

 


 ひらひらと手を振るカールは、光に包まれて、消えた。

 

 

 

 


  ***

 

 


 

 カールが去ってから風呂に入ったリオは、風呂から上がり、ふと、鏡に映った自分の姿を見る。


 リボンをつけていない、自分の髪。

 濡れた黒い髪の隙間から、黒い瞳が覗く。

 

 カールの話を聞いて、全てに納得がいった。


 この世界で、黒い髪と瞳の人間を見かけないワケ。

 シルバーが、あんなにも必死に隠せと言った理由。

 

 

「全部、そういうことだったんだ」

 

 

 黒は、闇属性の色。

 そして、人間は、闇属性を扱うことは出来ない。

 

「闇の属性を持つのは、」

 

 それを使うことが出来るのは。

 リオは、片手を額に当てる。

 濡れた前髪が、ぐしゃり。


 シルバーはバレるのは危険だと言った。

 それは、単に黒い色を持つ人間への興味や、好奇心からくるであろう危険だけでは、なかったのだ。

 黒い色は魔獣の、魔族の象徴であったから。

 



「ーーーー知られてはならないんだ、絶対に」

 

 


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