表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第七章
51/123

終幕

 

 

 

 

「さあ!残り1分をきりました!!」


 

 100分が、もう終わりをむかえる。

 


「5…!4…!3…!2…!1……終了ーーー!!!」

 


 再び、ビイィィーーという音が鳴り響いた。

 ステージの上の出場者達がその手を止める。

 出場者達は、みなそれぞれの表情を浮かべていたが、共通して、その顔に僅かに疲れを滲ませていた。

 今は秋であるにもかかわらず、ジャックは夏の時のように額に浮かんだ汗をぐい、と拭っていた。

 しかし、疲れてはいるようだが、その表情は晴れ晴れとしている。

 

 

「では、出場者達の作品を見ていきましょう!!」

 

 

 その声とともに、出場者一人一人の魔石細工について、司会者が実況をし始める。

 そして、出場者達には自分の魔石細工について説明する時間も与えられた。

 リオは、それぞれの作品を興味深げに見ていく。

 

 

 まずは、一人目。

 暖かいものをイメージしたと言っていたとおり、その人は暖炉を作っていた。

 ……うん、暖かいよね、暖炉。

 無駄に完成度の高い暖炉を見て、何とも言えない気持ちになる。

 なんか、微妙な感じがするけど、デザイン自体はお洒落かもしれないな。

 

 

 続いて二人目。

 その人もやはり、暖かいもので思い浮かんだものを表現したと述べた。

 それは、人の手の形をしていた。

 なかなか考えたなぁ、とリオは少し感心する。

 

 

 そんな感じで、三人目、四人目と続いていった。

 


「…スープ、火…太陽?……風呂?は?…」

 

 説明される作品が変わるたびに、ぶつぶつと声を洩らすシルバー。

 

 

「…なんか、どれもこれも、変わんねえな。つまんねぇ」


「そうですか?風呂とか、出場者の方には失礼かもしれませんが、私結構ツボに入りましたよ?」

「てめぇはそれでいいかもしれねぇけどな。どいつもこいつも、陽を表す形しか考えてねぇ。中身が、ねぇよ。…まあ、唯一しっかり込められてんのは、今の所、あの手の魔石細工くらいか」

 

 なかなか、シルバーの評価は厳しいものであるようだ。

 

 

「続いて、本日最年少の出場者、ジャックの作品に移りましょう!!」


 

 ついに、ジャックの番が来た。

 途端、ザワザワと騒めく会場。

 

「お、おい…アレって」

「…今回のテーマは、陽だよな?」

「あれは、陽とは関係ないんじゃないか?」


 観客達の戸惑うような声。

 司会者も、少々その声に困惑の色を滲ませた。

 


「おや…?これは、一体…」

 

 一瞬、言葉を詰まらせた司会者に、ジャックは自分の作品の説明を始める。

 


「俺の作った形に、皆さん戸惑っていることでしょう」

 

 そう、前置きをしてから、言葉を続けた。

 

「俺の陽は、」

 

 そこで、一呼吸。

 

「俺の陽は、今まで俺を支えてくれた人達。両親、友達、師匠ーー。その人達への、感謝の気持ち」

 

 子供とは思えぬ、静かな口調、深い色を見せる、紺色の瞳。

 

 

「それと、俺の今の気持ち。夢を叶えたい、前へ進みたいという、俺の願望、決意。ーーーそれが、俺の陽です」

 


 会場の騒めきは消え、マイクを通したジャックの声だけが、こだまする。

 まだ、13、4歳くらいの子供に、みんな呑まれている。

 

「だから俺は、そういったものを、この魔石細工に込めて作りました。ーーー以上です」

 


 そうして、ジャックの作品の説明は、静かに終わった。

 

 

 


 あの子は、本当に、すごい。

 リオは、ごくりと喉を鳴らした。

 

「子供が成長するのって、早いですね」

「……ああ」

 

 ジャックが作ったのは、初めてシルバーに見せたのと同じ、青い鳥だった。

 けれども、あの時とはまるで違う仕上がりになっていた。

 上手く言葉でそれを説明することは出来ないが、シルバーの言葉を借りて言うならば、きっと、そう。


 生命が宿っている、と言うのだろう。


 ジャックの姿を見つめながら、シルバーは優しい声で言った。

 

 

 

「ーーやっぱり、あいつは、天才だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 こうして、大会は幕を閉じた。

 会場の外で、リオとシルバーはジャックが出てくるのを待つ。


 そして、会場の奥から紺色がこちらに向かって近づいてきた。


 

「ーーシルバー、リオ」

 

 顔を上げたジャックに、リオは優しく微笑む。

 

「ジャック、すごかったですよ。本当に、素晴らしい魔石細工でした」

 

 その言葉に、ジャックは目に涙を溜めた。

 

 


「でも、でもっ…俺ーーーーーーー優勝出来なかった…!」

 

 

 小さく叫ぶジャックに、リオは少し眉を下げる。

 

 

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ