終幕
「さあ!残り1分をきりました!!」
100分が、もう終わりをむかえる。
「5…!4…!3…!2…!1……終了ーーー!!!」
再び、ビイィィーーという音が鳴り響いた。
ステージの上の出場者達がその手を止める。
出場者達は、みなそれぞれの表情を浮かべていたが、共通して、その顔に僅かに疲れを滲ませていた。
今は秋であるにもかかわらず、ジャックは夏の時のように額に浮かんだ汗をぐい、と拭っていた。
しかし、疲れてはいるようだが、その表情は晴れ晴れとしている。
「では、出場者達の作品を見ていきましょう!!」
その声とともに、出場者一人一人の魔石細工について、司会者が実況をし始める。
そして、出場者達には自分の魔石細工について説明する時間も与えられた。
リオは、それぞれの作品を興味深げに見ていく。
まずは、一人目。
暖かいものをイメージしたと言っていたとおり、その人は暖炉を作っていた。
……うん、暖かいよね、暖炉。
無駄に完成度の高い暖炉を見て、何とも言えない気持ちになる。
なんか、微妙な感じがするけど、デザイン自体はお洒落かもしれないな。
続いて二人目。
その人もやはり、暖かいもので思い浮かんだものを表現したと述べた。
それは、人の手の形をしていた。
なかなか考えたなぁ、とリオは少し感心する。
そんな感じで、三人目、四人目と続いていった。
「…スープ、火…太陽?……風呂?は?…」
説明される作品が変わるたびに、ぶつぶつと声を洩らすシルバー。
「…なんか、どれもこれも、変わんねえな。つまんねぇ」
「そうですか?風呂とか、出場者の方には失礼かもしれませんが、私結構ツボに入りましたよ?」
「てめぇはそれでいいかもしれねぇけどな。どいつもこいつも、陽を表す形しか考えてねぇ。中身が、ねぇよ。…まあ、唯一しっかり込められてんのは、今の所、あの手の魔石細工くらいか」
なかなか、シルバーの評価は厳しいものであるようだ。
「続いて、本日最年少の出場者、ジャックの作品に移りましょう!!」
ついに、ジャックの番が来た。
途端、ザワザワと騒めく会場。
「お、おい…アレって」
「…今回のテーマは、陽だよな?」
「あれは、陽とは関係ないんじゃないか?」
観客達の戸惑うような声。
司会者も、少々その声に困惑の色を滲ませた。
「おや…?これは、一体…」
一瞬、言葉を詰まらせた司会者に、ジャックは自分の作品の説明を始める。
「俺の作った形に、皆さん戸惑っていることでしょう」
そう、前置きをしてから、言葉を続けた。
「俺の陽は、」
そこで、一呼吸。
「俺の陽は、今まで俺を支えてくれた人達。両親、友達、師匠ーー。その人達への、感謝の気持ち」
子供とは思えぬ、静かな口調、深い色を見せる、紺色の瞳。
「それと、俺の今の気持ち。夢を叶えたい、前へ進みたいという、俺の願望、決意。ーーーそれが、俺の陽です」
会場の騒めきは消え、マイクを通したジャックの声だけが、こだまする。
まだ、13、4歳くらいの子供に、みんな呑まれている。
「だから俺は、そういったものを、この魔石細工に込めて作りました。ーーー以上です」
そうして、ジャックの作品の説明は、静かに終わった。
あの子は、本当に、すごい。
リオは、ごくりと喉を鳴らした。
「子供が成長するのって、早いですね」
「……ああ」
ジャックが作ったのは、初めてシルバーに見せたのと同じ、青い鳥だった。
けれども、あの時とはまるで違う仕上がりになっていた。
上手く言葉でそれを説明することは出来ないが、シルバーの言葉を借りて言うならば、きっと、そう。
生命が宿っている、と言うのだろう。
ジャックの姿を見つめながら、シルバーは優しい声で言った。
「ーーやっぱり、あいつは、天才だよ」
***
こうして、大会は幕を閉じた。
会場の外で、リオとシルバーはジャックが出てくるのを待つ。
そして、会場の奥から紺色がこちらに向かって近づいてきた。
「ーーシルバー、リオ」
顔を上げたジャックに、リオは優しく微笑む。
「ジャック、すごかったですよ。本当に、素晴らしい魔石細工でした」
その言葉に、ジャックは目に涙を溜めた。
「でも、でもっ…俺ーーーーーーー優勝出来なかった…!」
小さく叫ぶジャックに、リオは少し眉を下げる。




