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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第七章
46/123

弟子? (1)

 

 

 

 



 

 ジャックが来てからは、まあ、毎日が騒がしかった…いろんな意味で。

 

 例えば、ちょこまかとシルバーの後をついてまわるのを鬱陶しがったシルバーの怒号が響いたり。

 勝手に作業部屋に入ったことでシルバーの怒号が響いたり。


 もともと、ジャックもシルバーに似たところがあるものだから、二人して喧嘩しているのもすでに見慣れた光景だ。

 …………なんだか、怒鳴り声ばかり聞いている気がする。

 

 けれどもジャックは結構しっかり者で、進んでリオやシルバーの手伝いをしてくれる。

 リオが掃除道具を手に取れば、ジャックもすぐに駆け寄ってくるし、おつかいにだって、荷物を持つのを手伝いに来てくれる。

 皿洗いだってやってくれるし………まあ、何枚か皿を割ったのは大目に見よう。

 

 

「リオ、リオ!聞いて!」

 


 店番をしていたリオのもとに、瞳をキラキラと輝かせたジャックがやってきた。

 客の来ない店番に退屈していたリオは、微笑みながら彼をむかえる。

 …そう言えば、アルジェンテの客足の少なさに、ジャックは結構ショックを受けていたなあ。

 


「今日はどうしたんです?」

 

 こうして、ジャックはしょっちゅうリオのもとにやってきては、その日あった出来事や、その他にもいろんなことを話していく。

 どうもリオはジャックに懐かれたらしかった。

 


「今日、俺、シルバーの作業部屋に入れてもらったんだ!!」

 

 

 ジャックは嬉しそうに笑う。

 どうやら、ようやくジャックはシルバーに作業部屋へと入るのを許されたらしい。

 

「それでな!静かしてるんだったら、そこにいていいって言われたから、今日はシルバーが作るところ、ずっと見てたんだ!」


「それは良かったですね。で、どうでした?」

「ああ!やっぱりシルバーはすげえよ!!」

 

 そこからは、もう、凄まじかった。

 シルバーがいかに凄いかを語る口は、止まることなくずっと動き続ける。

 

「…へえ。そんなにあの人って凄い人なんですかね。私は魔石細工について詳しくはないから分からないんですが」

 

 あまりにもジャックがすごいを連発するので、リオがそう言うと。

 


「何言ってんだよ!リオは知らねえのか!?」

 

 何故か、カッと目を見開いたジャックに怒られてしまった。

 


「シルバーは、秋の王都での大会で、優勝してるんだぞ!それで、その後に王宮にも勤めてたんだからな!!」


「え、シルバーが?王宮に?」

 


 今度はリオが思わず目を見開いてジャックの言葉を反芻する。

 


「ああ!まあ勿論、王宮に勤める中でも王宮お抱えと言われる職人は、アルビオン王国一の魔石細工職人ハイラム・フィニアンだけど。シルバーは、それに並ぶ魔石細工職人だ、って有名だぞ?」

 

「ハイラム・フィニアンって、あのハイラムさん?え、あの人、そんなに凄い人だったの?っていうか、それに並ぶシルバーって…」

 


 次々と明かされる驚愕の事実に、リオは頭がパンク寸前である。

 

 

 

 

 


 

 ーーー『そうだ、シルバー。これ、やるよ。今は腹が空いてなくてな』


 ーーー『なんだ?こんな美味そうなもん、いいのか?なら、遠慮なくもらうぜ………ーーーーうっ、ゴホッゴホッ!ーーハイラム!てめぇ、なんだこれは!!』


 ーーー『はっはっはっ!ひっかかったな!それは今王都で流行りの激辛シュークリームだ!!』


 ーーー『てめえ、ふっざけんな、この野郎!っゴホッ!こんなのが、流行ってるワケ、ねぇだろ!!』


 ーーー『今日俺が作った。これから、流行る』



 

 

 

 ……あの人たちが?

 

 王都での日々を思い出したリオは、人違いではないかと頭を抱えたくなった。

 

 キラキラと尊敬の色に目を輝かせながら語るジャック。

 ……ジャック、君は目を覚ましたほうがいい。

 あの人たちは、君が思っているような人たちじゃないよ。

 本性知ったら、絶対がっかりするよ。

 


「おい、ジャック」


 と、そこへシルバーがひょっこり顔を出した。

 声をかけられたジャックが、元気よく返事をする。

 

「明日、てめぇが作るの、見てやってもいいぞ」

 

 その言葉に、今までで一番強く目を輝かせるジャック。

 

「ほ、本当に!?お願いします!!」

 

 ジャックは、勢いよく頭を下げる。

 どうやら明日、シルバーはジャックに魔石細工作りの指導をしてやるつもりらしい。

 その熱のこもった返事に、シルバーは少しだけ口元を優しく緩めると、くるりとこちらに背を向ける。

 シルバーが去った後で、ジャックはリオを振り返って嬉しそうにガッツポーズをしてみせた。

 

 なんだかんだで、シルバーはジャックのことを気に入っているようだ。

 もしかしたら、弟子でもできたような気がしているのかもしれない。

 

 

「じゃあ、そろそろ店を閉じますか」

「俺、札をひっくり返してくる!!」

 

 リオがにこやかにそう言うと、ジャックは飛び跳ねるような勢いで店の入り口へと駆けて行った。

 

「……やっぱり、子供は元気ですね」




 ジャックが再び戻ってきたところで、二人一緒にリビングへと上がる。

 すでに、キッチンにはシルバーが立っている。

 


「さあ、シルバーを手伝いましょうか」

「おう!…あ、その前に手、洗ってくる」

「そうですね」

 

 

 この子が来てから毎日が本当に明るく、賑やかだ。


 そう思っているのはきっと、リオだけではないはずだ。

 


 


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