帰りの道にはご用心を (2)
「いやあ、あなた方だったんですか!セリーナから話は聞いていますよ。このペンダントを作ってくださったんですよね」
リオの話に、笑いながら礼を言うこの男は、やはり、セリーナの恋人で間違いなかった。
彼の胸元に輝くのは先日シルバーが作ったものだったからだ。
「それにしても、世の中狭いものですね。こうして、このペンダントの作り主と出会うことになるとは」
眼鏡の男、セネットは感慨深そうに頷く。
「今日、怪我一つしなかったのも、このペンダントのおかげですね」
「……こいつには、お守りなんて必要ねぇだろ」
先ほどのセネットの戦いっぷりを見ていたシルバーは、真面目な顔で言う。
その隣で、こっそりリオもそれに頷いた。
「実は、私とこの二人は先ほどの魔獣の討伐任務を遂行しに来たんですよ」
「そうしたら、人が襲われていて驚きました」
ギルドの女性もセネットの後に言葉を続ける。
「一つ、聞きたい」
「なんでしょう?」
「アレは、何だ?あの魔獣は群れる習性なんか、ねぇはずだ」
そのシルバーの言葉に、セネットは声色を真面目なものに変える。
「ええ、そうなんです。最近、そういったおかしな現象が各地で起こっているんです」
「原因は?」
「それが今のところはまだ、何も…。なので、被害が出る前にこうしてギルド員や騎士団が討伐に行くしかないんです」
セネットは、少し目を伏せた。
「しかも、最悪なことに、群れるのは普段そんな習性のない、高ランクの魔獣ばかりだ」
既に、被害は出てしまっているのだろう。
もう一人のギルド員の男が悔しげに言った。
「今回の魔獣も危険度はかなり高いものでした。正直、駆けつけた時にあなた方が無事だったことに驚きました」
セネットは感心しているようだ。
「別に。俺は、王立魔法学校に通ってたからな」
「なるほどそれはお強い訳だ」
ギルド員の男がシルバーを見て頷く。
「キーランの方でもあったぞ。群れてはいねぇが、普段そこには出るはずのない、同じく高ランクの魔獣がいやがった」
キーランとは、あの雪の降る町の名だ。
「…そうですか。分かりました、そちらも報告させていただきます。情報をありがとうごさいます」
「セネット、そろそろ戻らなくては」
「ええ」
女性ギルド員の言葉に、セネットは頷く。
「では、シルバーさん、リオさん。私たちはギルドに戻ります。あなた方が無事に帰れることを祈ります」
そうして、セネットたちは外套を翻して去っていった。
それを見送ったリオとシルバーは馬車に乗りこむ。
そこで、リオは先程から気になっていたことをシルバーに尋ねた。
「ギルドと騎士団の違いって、何ですか?」
「騎士団は、王家を守る、王直属の護衛部隊であると同時に、王の下で国家を守る軍隊のようなものだ。それに対して、一般の民を守るために各地に作られたのがギルドだ」
「そうですか」
ギルド、騎士団………本当に、ファンタジー用語で溢れているな、この世界は。
それに、初めて魔獣も見たし。
いろいろあって疲れた。
アルジェンテに帰ったら、しっかり休もう。
***
「カール!!あの、クソ野郎!!」
アルジェンテに着いてすぐに、シルバーの怒号が響き渡った。
それもまあ、今回は仕方ない。
アルジェンテに帰ってみたら、留守番をしているはずのカールはいなかった。
かわりに、リビングのテーブルの上に一枚の置手紙が。
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お帰り〜
やっと帰ってきたぁ?
もう、あまりにも長い間帰ってこないから
僕待ちくたびれちゃったよぉ
退屈で退屈で仕方ないしぃ
だからぁ、僕は、また旅に出ることにしたよぉ
あ、戸締りはちゃんとしとくから安心してぇ?
じゃあ、またねぇ〜
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「あいつ、自分から留守番役を買って出たくせに!次会ったら、シめる!!」
ぐしゃ、とその置手紙を握りつぶすと、シルバーはその塊をゴミ箱に突っ込んだ。
その手紙を見た時は、流石にリオも顔が引き攣ったが、まあ、カールらしいと言えばカールらしい。
取り敢えず、パッと見たところ、カールが戸締りはしっかりとしておいてくれたおかげか、店に変わったところはなさそうだ。
「シルバー、先に夕食にしません?」
早く寝たいリオは、あくびをこらえながらそう言うのであった。




