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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第六章
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◆学生達の会話

 






 

「ごめん、遅くなった」


 そう言って、屋上に現れたのは青い髪をした少年。



「いや、思ったより早かったな!」


 橙色の髪の少年ーーエーディは、彼を明るく出迎え、青髪の少年の手にあるものを半分、手に持つ。


「なあシアン。メリナとラヴィンは?」


 エーディの声に、シアンの後ろから黄色い髪の少女が姿を見せた。


「メリナ!」


 それに、声を上げるのは赤髪の少女。


「フェドラ、お待たせ」

「いや、全然待ってなんかないよ。ほら、早くこっちこっち」

「うん」


 そして、ワンテンポ遅れてドアから現れたのは、薄い水色の髪の少年ラヴィン。

 

「遅れてすみません」

「おお、ラヴィン!よし、これで全員揃ったな」


 エーディは、ようやくいつものメンツが揃ったことで、嬉しそうに笑う。

 そして、男三人で料理や飲み物を持って集まる。

 そこへ、女子達もやってきた。



「にしても、お前達は本当に、大変だよなぁ」



 シアン、メリナ、ラヴィンの三人の顔を見ながら、エーディはつくづくそう思う。

 この三人は、自分とは違って、貴族なのである。

 故に、パレードの際も、家の方の都合で一緒に見ることは叶わなかったのだ。

 

「僕もエーディ達と一緒にパレード見たかったなあ」


 そう言うのは水の貴族のシアン。

 そこでふと、あることを思い出したエーディ。


「そういえばシアン。お前の兄貴、最近結婚したんだろ?」

「ああ、うん。今日は、そのタレイア義姉さんも一緒だったんだ」

 

 相槌をうちながら、エーディは料理に手を伸ばす。


「パレードは楽しかった?」


 メリナが微笑みながら尋ねた。


「もっちろん!騎士団も、王子様も見てきたよ。しかも最前列で!ね、ヨランダ?」


 赤い髪を靡かせながら、フェドラは、隣に座る薄紫色の髪の少女の方を振り向く。



「…え?あ、うん。すごかったよ」

 

 突然話しかけられて驚いたのか、少し遅れて反応するヨランダ。

 しかし、そう答えた後もどこかぼーっとしていて、心此処にあらずといった感じだ。

 そんなヨランダの様子に、メリナが心配そうに言う。


「大丈夫?」

「へっ?…うん、大丈夫大丈夫!そんな心配そうな顔しなくても平気だよ」

「本当?」

「フェドラまで…本当に大丈夫だって。ただ、少しさっきのこと思い出してただけだから」

 

 ふわり、と笑うヨランダに、ラヴィンたちが首を傾ける。


「さっきのことって?」


 そう尋ねたラヴィンに、ヨランダは先程、ラヴィン達が来る前に屋上にいた先客の話をした。

 話を聞き終えたシアンが、飲み物を飲みながら言う。


「へぇ、そんなことがあったんだ」


 そこで、フェドラは何かに思い至ったのか、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。


「はっはーん。ヨランダがぼーっとしてたのって、もしかして…」


 ニヤニヤと笑うフェドラに、ヨランダは首を傾ける。



「さっきの人のこと、考えてたんでしょ」

「なっ、」

 


 フェドラの言葉に、分かりやすいくらいにヨランダはその顔を真っ赤に染めた。

 

 

 初めて見るヨランダのその反応に、シアンは飲んでいた飲み物を吹き出し、メリナは手にしていたお菓子を落とした。

 ……お前ら、仮にも貴族だろうが。

 心の中でそう思うエーディだが、自分も例に漏れず驚きで目を見開く。


 唯一、フェドラだけが楽しそうに笑う。


「あははっ!図星だ!!」

「ちょ、待ってよフェドラ!」

 

 慌てたようにフェドラに声を上げるヨランダ。


「一目惚れ?」


 首を傾けながらそう発したシアン。


「ち、違うよ!惚れてはいないから!!」

「惚れては、いないけど?」


 フェドラがニヤリとヨランダに詰め寄る。


「ただ、綺麗な人だったな、って…」


 プシューという音がするかのように、顔を真っ赤にして俯いてしまったヨランダ。

 そこへフェドラが「可愛いっ!」と言って抱きつく。

 そのやりとりを見ていたメリナがエーディに話しかけてきた。


「そんなに、綺麗な人だったの?」

「ん?あー」


 エーディは、先客の姿を頭に思い浮かべる。

 手足が長く、スラリとした華奢な身体つき。

 暗い茶色の髪を青いリボンで一つに束ねていて。

 顔は中性的で、その凛とした瞳が、笑うと優しげに細められていた。

 

「うん。確かに綺麗な人だったな。すごく感じが良くて、言葉も丁寧で。特に、笑うと本当に綺麗だった」

 

 ………この大陸ではみかけない顔立ちだったけど、異国の血を引いているのだろうか。

 


 エーディが、その人の容姿を述べると、ラヴィンが「あ、」と声を漏らす。


「その人、僕も見ました」

「え、本当?」

「ええ。さっき、僕たちが店に入ったときに、カウンターに座っていましたよ」

「…僕、カウンターに誰が座ってたかなんて覚えてないよ」

「私も」

「僕は、たまたま目が合ったので。綺麗な人だなぁ、と印象に残ったのですよ」

 

 ラヴィンは微笑みながらそう言って、料理に手を伸ばす。

 

「また、いつか会えるといいね!ヨランダ!」

「フェドラ…別に私は…うん、もういいや」


 何やら楽しそうにヨランダに話しかけるフェドラ。

 疲れたのか、ヨランダは最終的に何かを諦めたようだ。

 けれど、まだその頬に赤みが残っていることから、彼女がその人を忘れられないでいるのは明らかだった。

 


「………俺、彼女欲しいな」

「なら、まずはその馬鹿な頭をどうにかするべきね」



 つい口から出てきた言葉に、エーディはフェドラから容赦ない一言を浴びせられた。

 なんか、自分の扱いだけ酷くないか?

 最近……いや、常日頃そう思うエーディであった。

 

 

 

 

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