生誕祭 (1)
張り巡らされた、カラフルなフラッグガーランド。
そして至る所ではためくのは、白と金の国旗。
道には所狭しとたくさんの屋台が並ぶ。
人々は笑い、楽しそうに近くの人と喋り、とても賑やかだ。
雲一つない青空の下、リオは目を輝かせた。
「ーーすごい!王都の祭は、やっぱり、盛大ですね!」
以前セシリアと行った小さな公園の祭とは訳が違う。
規模も、賑やかさも、華やかさも。
そんなリオに呆れた視線を投げるのは、シルバーだ。
「てめぇは、本当に…一体、何歳だ?」
「19ですが?」
「……多分、そのはしゃぎっぷりなら、10歳くらいの餓鬼どもに混じっても、いけるぞ」
普段なら、ここでリオも反論するのだが、今はお祭りだ。
そんな些細なことで時間を無駄にはしたくない。
「それより、なんで俺まで行かなきゃならねぇんだ…」
「仕方ないでしょう。タレイアには一緒に行けないと言われてしまったので。私は他に王都に知り合いなどいませんからね。ハイラムさん、使用人の方々、…取り敢えず、消去法でいったらシルバーしか残らなかったんですよ」
「消去法かよ」
「あ!あのお店、一体何でしょうか?シルバー、行きますよ!」
「おい、」
ヒュン、と残像が残る勢いで駆けて行ったリオに、シルバーは溜め息をついてからその後を追うのであった。
「いやあ、本当、楽しいですね」
「俺は別に楽しくもなんともねぇぞ」
王城前の広場のベンチに二人は腰をかけていた。
両手に食べ物を持って幸せそうに微笑むリオ。
それとは対照的に、やや疲れた顔をしているシルバー。
あれから、軽く二時間は振り回されたのだから、無理もない。
「そういえば、もうお昼ですね。何食べます?」
「てめぇ、あんだけ食っておいて、まだ食うのかよ…」
「あ、あれ美味しそう」
「……」
その時だった。
人々のざわめきが大きくなった。
何事だ、とリオが辺りを見回すと、皆、同じ方向を見上げていた。
それにつられて、リオもその方向を見上げる。
そこにあったのは、王城のバルコニー。
そして、そのバルコニーに、奥から人が現れた。
より一層大きくなる歓声。
「国王陛下!!」
「国王陛下、万歳!!」
「陛下ー!おめでとうごさいますー!!」
その人物がさらに前へと進み出たことで、リオにもその人の姿がハッキリと見えた。
太陽の光に輝く金色の髪。
豪華な衣装に身を包み、こちらを見下ろすその姿は、威厳に満ち溢れている。
ところどころに皺が見える顔だが、決して老いなど感じさせない、鋭い眼差し。
あれが、国王陛下ーー。
「ーーー愛する我が民よ」
その一言で、先程までの歓声が嘘のように、辺りは静寂に包まれる。
「我が国、アルビオン王国は、数多の歴史を繰り返し、今という時を迎えた。そしてーーーー」
続く王の言葉を、皆が静かに、真剣な眼差しで受け止める。
リオも、その雰囲気に飲まれ、じっと国王陛下を見据える。
「ーーーアルビオン王国に尽きることのない繁栄と、栄光を、約束しよう」
そう締めくくった国王陛下は、片手を高く上げ、何かを描く。
そして、それまでの厳かな雰囲気を少し崩し、ニヤリ、と陛下は口角をあげる。
「さあ、今日は皆楽しむがよい」
その言葉と同時に、辺りが様々な色の光で溢れかえったーーーーー魔法だ。
同時に、再び湧き上がる歓声。
その歓声に包まれながら、国王は静かに民の前から姿を消した。
国王の姿が見えなくなっても、初めてその姿を見た衝撃からいまだ呆然とバルコニーを見上げていたリオに、シルバーから声がかかる。
「おい、リオ、どうすんだ?まだ残るのか、それとも帰るのか」
「…そうですね。もうあらかた屋台は見て回りましたし」
「まあ、後はもう少ししたらパレードが始まるだろうな」
「え?パレードなんてあるんですか?じゃあ、それを見てから帰りましょう!」
「………パレードのこと教えるんじゃなかったぜ」
若干げっそりとした表情でシルバーはリオの輝く目を見る。
それから、シルバーに案内してもらい、パレードの行われる場所まで移動した。
「うわ、人でいっぱいですね。これじゃああんまりパレードは見えなさそうですね」
「そりゃ、みんなパレードを楽しみにしてるからな。早くから場所取りしてんのは当然だろうが」
「んー…でも王都に来ることなんて普段ならあり得ないですし、折角なのでパレードを見て帰りたいんですよねぇ」
「……まさか、あの人混みの中を突っ込んでいく気か?」
「そのまさかです」
至極真面目に言い放ったリオに、シルバーは額に手を当てて溜め息を吐く。
「……仕方ねぇ。リオ、パレードが見える所に連れてってやるから、あの中に突っ込むのだけは、やめてくれ」
「本当ですか!?」
「ああ。けど、パレードが終わったら、帰るぞ」
「はい!」
顔をパアアと輝かせるリオを連れ、シルバーは人で溢れかえった通りを後にした。




