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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第六章
37/123

生誕祭 (1)

 

 

 

 

 

 

 

 張り巡らされた、カラフルなフラッグガーランド。

 そして至る所ではためくのは、白と金の国旗。

 

 道には所狭しとたくさんの屋台が並ぶ。

 人々は笑い、楽しそうに近くの人と喋り、とても賑やかだ。

 雲一つない青空の下、リオは目を輝かせた。

 

 

「ーーすごい!王都の祭は、やっぱり、盛大ですね!」

 

 

 以前セシリアと行った小さな公園の祭とは訳が違う。

 規模も、賑やかさも、華やかさも。


 そんなリオに呆れた視線を投げるのは、シルバーだ。

 

「てめぇは、本当に…一体、何歳だ?」

「19ですが?」

「……多分、そのはしゃぎっぷりなら、10歳くらいの餓鬼どもに混じっても、いけるぞ」

 

 普段なら、ここでリオも反論するのだが、今はお祭りだ。

 そんな些細なことで時間を無駄にはしたくない。

 

「それより、なんで俺まで行かなきゃならねぇんだ…」


「仕方ないでしょう。タレイアには一緒に行けないと言われてしまったので。私は他に王都に知り合いなどいませんからね。ハイラムさん、使用人の方々、…取り敢えず、消去法でいったらシルバーしか残らなかったんですよ」

「消去法かよ」

「あ!あのお店、一体何でしょうか?シルバー、行きますよ!」

「おい、」

 

 ヒュン、と残像が残る勢いで駆けて行ったリオに、シルバーは溜め息をついてからその後を追うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、本当、楽しいですね」

「俺は別に楽しくもなんともねぇぞ」

 

 王城前の広場のベンチに二人は腰をかけていた。


 両手に食べ物を持って幸せそうに微笑むリオ。

 それとは対照的に、やや疲れた顔をしているシルバー。

 あれから、軽く二時間は振り回されたのだから、無理もない。

 

「そういえば、もうお昼ですね。何食べます?」

「てめぇ、あんだけ食っておいて、まだ食うのかよ…」

「あ、あれ美味しそう」

「……」

 


 その時だった。

 人々のざわめきが大きくなった。


 何事だ、とリオが辺りを見回すと、皆、同じ方向を見上げていた。

 それにつられて、リオもその方向を見上げる。

 そこにあったのは、王城のバルコニー。

 そして、そのバルコニーに、奥から人が現れた。

 より一層大きくなる歓声。

 


「国王陛下!!」


「国王陛下、万歳!!」


「陛下ー!おめでとうごさいますー!!」

 

 

 その人物がさらに前へと進み出たことで、リオにもその人の姿がハッキリと見えた。

 

 太陽の光に輝く金色の髪。

 豪華な衣装に身を包み、こちらを見下ろすその姿は、威厳に満ち溢れている。

 ところどころに皺が見える顔だが、決して老いなど感じさせない、鋭い眼差し。


 あれが、国王陛下ーー。

 

 


「ーーー愛する我が民よ」

 

 

 その一言で、先程までの歓声が嘘のように、辺りは静寂に包まれる。

 


「我が国、アルビオン王国は、数多の歴史を繰り返し、今という時を迎えた。そしてーーーー」

 


 続く王の言葉を、皆が静かに、真剣な眼差しで受け止める。

 リオも、その雰囲気に飲まれ、じっと国王陛下を見据える。

 

 


「ーーーアルビオン王国に尽きることのない繁栄と、栄光を、約束しよう」

 

 


 そう締めくくった国王陛下は、片手を高く上げ、何かを描く。

 そして、それまでの厳かな雰囲気を少し崩し、ニヤリ、と陛下は口角をあげる。

 

「さあ、今日は皆楽しむがよい」


 

 その言葉と同時に、辺りが様々な色の光で溢れかえったーーーーー魔法だ。


 同時に、再び湧き上がる歓声。

 その歓声に包まれながら、国王は静かに民の前から姿を消した。

 

 国王の姿が見えなくなっても、初めてその姿を見た衝撃からいまだ呆然とバルコニーを見上げていたリオに、シルバーから声がかかる。


「おい、リオ、どうすんだ?まだ残るのか、それとも帰るのか」

「…そうですね。もうあらかた屋台は見て回りましたし」

「まあ、後はもう少ししたらパレードが始まるだろうな」

「え?パレードなんてあるんですか?じゃあ、それを見てから帰りましょう!」

「………パレードのこと教えるんじゃなかったぜ」

 

 若干げっそりとした表情でシルバーはリオの輝く目を見る。




 それから、シルバーに案内してもらい、パレードの行われる場所まで移動した。

 

「うわ、人でいっぱいですね。これじゃああんまりパレードは見えなさそうですね」

「そりゃ、みんなパレードを楽しみにしてるからな。早くから場所取りしてんのは当然だろうが」

「んー…でも王都に来ることなんて普段ならあり得ないですし、折角なのでパレードを見て帰りたいんですよねぇ」


「……まさか、あの人混みの中を突っ込んでいく気か?」

「そのまさかです」

 

 

 

 至極真面目に言い放ったリオに、シルバーは額に手を当てて溜め息を吐く。

 

 

「……仕方ねぇ。リオ、パレードが見える所に連れてってやるから、あの中に突っ込むのだけは、やめてくれ」


「本当ですか!?」

「ああ。けど、パレードが終わったら、帰るぞ」

「はい!」

 

 

 

 顔をパアアと輝かせるリオを連れ、シルバーは人で溢れかえった通りを後にした。

 

 

 


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