◆兄達の会話
「やっほ〜兄弟。久しぶりぃ〜」
とある一室で、カールは向かいに座る男に言った。
「カールか。久しぶりだな…何故此処にいるんだ」
「えーっとねぇ、仕事帰り〜」
「……それは分かっているが、魔法で無断で侵入するのはやめてくれ」
少し遠い目をしているこの男を見て、カールはクスクスと笑った。
ほとんど金色に近い茶色の髪に、同色の瞳。
綺麗だが、リオに性別を疑われたカールとは違って、男らしい精悍な顔立ち。
そして、かなり真面目な性格であることをカールは知っている。
「今回は悪かった。急に呼び出して」
「本当だよぉ。僕が王宮嫌いなの知ってるくせに〜」
「お前にしか頼めなかったんだよ」
「別に君でも良かったでしょぉ。っていうか、本来そっちの仕事でしょ〜」
「他の仕事が重なってな。どうしても手が離せなくて、けれども放置しておくわけにもいかないから、お前に急遽来てもらったんだ」
「あーはいはい。そんなことだろうと思ってたぁ〜。それにしても、相変わらずの仕事中毒だよねぇ…どっかの誰かさんと違って」
「…それはお前か?それともシルバーか?」
「シルバーのことだよ〜。全然変わってないの〜あいつ」
王都に来る前に再会した銀色の彼を思い出し、カールはケラケラと笑う。
「シルバーに会ったのか?」
「王都に来る前に、ちょっとねぇ。相変わらずジリ貧生活送ってるみたいだったよお」
「…馬鹿だな」
「そうそう、本当にお馬鹿〜。だってちょぉーっとからかっただけですぐ怒るし…まあそれが面白いんだけど〜」
「それは俺も同感だ」
「あはっ、だよねぇ」
金茶色の男は、カールの言葉に笑いながら頷いた。
「お前もシルバーも王都が嫌いだからなあ」
「んー正しく言うと王宮が、だねぇ。まあ王都に王宮があるから、強ち間違ってもいないけどぉ〜」
「一度は王宮に行ってみたいと夢見る者も少なくはないんだがな」
「だって、王宮なんか陰謀だらけでドロドロじゃ〜ん?それにぃ、おバカな貴族もたくさんいるしぃ」
「まあ、それは否定できない」
五大貴族や一部の貴族はいまだ実力も功績も確かだが、祖先の栄光にあやかって、甘い汁を啜っているだけの貴族がいることもまた事実。
その地位は先祖の人に与えられたものであって、自分たちはその地位を名乗るには値しないことに、何故気付かないのか。
自分たちの利益と、金と、贅沢しか頭にない連中だ。
そういう奴らの地位はさっさと剥奪してしまえばいいのに。
「僕からしたら、そっちの方が不思議で仕方ないよお。ホンットよく耐えられるよねえ…」
「ははっ、褒め言葉として受け取っておこう」
悪戯っぽく笑う目の前の男に、カールはジト目を向ける。
シルバーがシルバーなら、目の前の男も、本当に変わらない。
かく言う自分も、きっとそれに当て嵌まるのだろうなとカールは思う。
「そういえば、貴族といえばリースの弟が結婚したらしいぞ」
「へぇ〜そうなんだぁ」
カールは特に興味もなかったため、適当に相槌をうつ。
「相手は見事な赤毛の平民の娘らしい」
確か、リースは五大貴族のうちの、水を司る家だっただろうか。
昔とは違って、最近では貴族の結婚で相手の人物の色にこだわるケースも少なくなってきたと聞く。
より優れた魔法使いを輩出しよう、ということで、色に関係なく、魔法に優れた者と婚約をさせることが多いらしい。一方で五大貴族や、自分の色に誇りを持つ一部の貴族は、いまだに色に関して厳しい面がある。
おそらく、リースの弟は次男であり、父親の跡を継ぐわけではないから、その赤毛の子と結婚できたのだろう。
それに………確かあそこの家は変わっている。
なんというか、いい意味で貴族らしくない。
しばらくカールはこの男と他愛の無い話をした。
そして目の前の男がカールにたずねる。
「で?カール、お前この後どうするんだ?またあてもなくふらふらと彷徨うのか?」
「なぁーんかその言い方気に障るなぁ。せめてぇ、各地を渡り歩くとか〜旅をするとか言ってくれない?」
「そう変わらないだろう」
「ま、いいけど〜。そうだなぁ…次は東にでも行ってみようかなぁ」
そこまで言ってから、カールはふと、青いリボンをつけた人物を思い出した。
「…やっぱその前にもう一度シルバーの所に行こぉ〜」
何やら楽しそうにそう言うカール。
「なんだ、またシルバーに会いに行くのか?なら、シルバーに渡してもらいたいものがあるんだが」
「いいよぉ。ついでに持って行ってあげる〜」
「そうか。すまないな」
そして、シルバーへ渡すものを取りに部屋から男が出て行った。
一人残されたカールは、フードを被り、口元を歪める。
「さて、可愛い可愛い弟と、謎だらけの彼女に会いに行きましょうか〜」




