親友の結婚式
ついにタレイアの結婚式が行われた。
タレイアは鮮やかな青のドレスに身を包み、幸せそうに笑みを携えるその姿は輝かんばかりの美しさだった。
ウエディングドレスは白というイメージがあるリオにとってはなかなかに新鮮であったが、シルバーとともに新郎新婦を温かく見守った。
式が始まる寸前まで、今朝から様子がおかしかったシルバーはしきりに辺りを見回していたが、最後に何やら安堵したかのように息を吐いた後、再びいつもの彼に戻った……一体何だったのだろう。
また、タレイアの首にはシルバーの作った魔石細工の首飾りが輝いていた。
注文通り青を基調として、無数の星が散りばめられた繊細な造りの魔石細工だった。
無事式が終わると、リオたちは教会から披露宴が行われる会場へと移動した。
披露宴と言えどもパーティに近いカジュアルなもので、リオは様々な料理を食べに会場内を奔走していた。
なおシルバーは何処かに行ってしまったため、リオは一人で食べ続けている。
「ああ…本当にどれも美味しいものばかりですね」
至福、とでも言うような表情でリオは呟く。
「はぁ…リオ、貴女って本当に…」
そこへ、呆れを含んだ声がかけられた。
その声にリオは料理を頬張ったまま振り返る。
「タレイア!」
式の時とは異なるドレスに身を包んだタレイアは、リオが手に持つ皿を見る。
「やっぱり…リオ、食べてばかりいるのね」
「だって、どの料理も美味しくて」
そう言って、リオはごくんと口にしていた料理を飲み込んだ。
そこへ、聞きなれない声がリオの耳に入ってくる。
「タレイア、彼を紹介してくれないか?」
リオはタレイアの隣に現れた青年を凝視した。
リオよりも少し年上であろうか。真っ青な髪と瞳を持つ、整った顔立ちの青年だった。
あ、この人、タレイアの旦那さんだ。
すぐに気づいたリオは、タレイアが口を開く前にスッと姿勢を正し、微笑みながら綺麗に一礼した。
「初めまして、リオと申します。リン様、この度はご結婚おめでとうございます。タレイアの友人として、心よりお喜び申し上げます」
相手が貴族であるため、リオは失礼のないよう、普段の倍以上丁寧に言葉を並べた。
そんなリオに、リンは優しく微笑んだ。
「そうか、タレイアの友人か。今日は俺とタレイアの結婚式に来てくれてありがとう。タレイアの友人に会うことができて嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「…リオ、そんなに畏まらなくていいわよ」
リオの様子にタレイアがそう言うと、リンもそれに同意を示してくれたため、リオはその言葉に甘え少しばかり気を楽にする。
それから、リオはしばらく彼らとの会話を楽しんだ。
タレイアとリンの出会いや、リオとタレイアのテータムで過ごした日々、互いに話題に尽きることはなく、リオはリンともすっかり打ち解けた。
「…まったく、リオには少し嫉妬してしまうな」
「どうして?リオは友達よ」
「それでも、だ。こんなに綺麗で、俺の知らないタレイアのことも知っているだろう?タレイアの友人だと知らなければ、俺は心中穏やかではいられなかっただろうし、リオと笑って話すことなんてできなかったな」
「…リンさんは相当タレイアを愛していらっしゃるようですね」
リンは冗談っぽくそう言ったが、実は、最初にタレイアがリオに話しかけた時、リオはリンから突き刺さるような鋭い視線を感じていたため、苦笑いで言葉を返す。
この人、独占欲強そうだなぁ。
もちろんリオは女であるし、そんな心配するようなことは何もないのだが、現在リオは男の格好をしている。
タレイアもリオが女であると分かっているため、リンの言葉になんとも言えないような表情をした。
「リオは…そうね。友達だけれど、家族のようなものだわ」
「…タレイアがお姉さんで、私が弟かな?」
「…そうね」
年齢的にはリオの方が歳上だが、いろいろとこの世界について教わったり、面倒を見てもらったりしたため、タレイアの方が姉という方がしっくりくる。
タレイアは、リオの弟発言に微妙な顔をしていたが、ここで妹と言いなおすのもが面倒くさいと思ったのだろう。結局、何も訂正することはなかった。
そんな新婦の心中など知る由もなく、リンは「そうか!じゃあ、リオは俺の弟でもあるな」と喜んでいる。
それにリオも兄さんなどと言い始めてしまうものだから、タレイアは二人に聞こえぬよう、小さく溜め息を吐いた。




