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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第三章
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◆キョウダイの会話

 

 

 

 




「いや〜それにしてもシルバーは、相変わらずだねぇ」

 



 まるで我が物顔で、我が家のソファーに座る黄緑色。

 セシリアとノエリアが帰るということで、その見送りにリオも外に出たため、アルジェンテにはカールとシルバーの二人しかいなかった。


 その緑と金の双眸を見て、シルバーも言葉を返す。

 

「てめえもな」


 シルバーはカールの座るソファーの向かいにあるソファに腰を下ろした。

 本当に、こいつは変わらない。

 カールのお兄さん発言は全力で否定するが、シルバーと長い付き合いであるのは事実だ。

 初めて会ったときも、カールはふざけてるとしか思えない、やけにのんびりとした口調の奴だった。


 友人かと言われると、少し違う。

 どちらかというと家族に近く、そう考えると案外兄弟という言葉が合っているのかもしれない……いや、あいつが兄だというのは絶対ありえないが。


「で、あの子、リオちゃんだっけぇ?」

「ちゃんって…お前、」


「何かおかしい〜?あの子、女の子でしょぉ?」


 首を傾けてそう言うこいつが自分より年上だなんて。

 シルバーはいつも頭を抱えたくなる。

 

「…よく分かったな」

「あんまり僕を舐めないでよねぇ。っていうか、本当に驚きだよね〜人付き合いがド下手なシルバーが、他人と一緒に暮らしてるなんてさぁ〜」

「いろいろあったんだよ」

「もしかしてぇ、恋人ぉ?」

「あのクソガキが恋人?どうしたらそんな風に見えるんだ。拾ったんだよ」

「ふぅ〜ん。そうなんだあ」


 こいつ、自分から聞いておきながら、心底どうでもよさそうだな。

 シルバーは、まあいつものことかと諦める。

 カールはぐるりと店内を見渡すとクスクスと笑う。


「それにしても、ボロい店だよねぇ。相変わらず閑古鳥が鳴いてるんじゃな〜い?」

「…」

「あはっ、図星ぃ〜!!」

 

 今度はこちらを指差しながらケタケタと笑うカールに、ピキッと額に筋が浮かぶ。


「それにぃ、さっきの姉妹にもタダで魔石細工あげたみたいじゃん〜?ホンットよくやるよねぇ」

「てめぇだってあげてただろ」

「別にあんなのは作ったうちに入らないよぉ〜はぱっと適当に作っちゃったしぃ。それに、シルバーみたいに貧乏じゃあないしぃ〜?」

「…」


 …一言余計なんだよ。

 はぁ、と思わず溜め息が零れた。

 

「で?ホントに何しに来たんだよ」

「ん?別にぃ?本当にたまたま近くに来たから寄っただけだって〜。かわいいかわいい弟の様子を見に来たんだけどぉ〜貧乏ながらに楽しくやってそうだから安心したよ〜」


 ニコニコと言うカールの言葉に、シルバーはあからさまに舌打ちを鳴らす。

 

「まあ、本当はこんな近くにくる予定はなかったんだけどさぁ…」


 そこでカールははぁ、とでも言うように大げさに肩を落とす。


「王都からの召集が、かかっちゃったからねぇ。仕方ないよねぇ〜」


 あーやだやだ、と首を左右に振るカール。

 シルバーは王都という言葉に顔を顰める。

 

「依頼か?」

「そおだよぉ。それ以外ないでしょ〜。本当は行きたくないんだけど、命令に逆らって死にたくはないからねぇ」

「まあ、頑張れ」

「うっわあ。超他人事〜」

 

 シルバーの全く感情の込められていない励ましに、カールはおどけたように笑う。

 

「まあ、殺されないように、ちゃんと仕事してくるよぉ。ついでに、もう一人の兄弟にもあってこようかなぁ〜」

「…………あいつか」

「何その嫌そうな顔〜。本当にシルバーは分かりやすいよねぇ」


 王都にいて、カールが兄弟と呼ぶような奴は一人しかいない。

 

「たまにはシルバーも顔を見せてあげたらぁ?あいつも寂しがってると思うよぉ〜?」

「誰が行くか!!」


 そもそも、ここから王都に行くのに馬車を走らせ続けたとしても丸々五日はかかる。

 それにそこまでして会いに行きたいとは思わないし、むしろ余程のことがない限り会いたくない相手である。

 


 

「ただいま戻りましたー」

 

 

 下の店の方でリオの声がした。

 そういえば、今日カールはリオの奴にも魔石細工をあげてたな。

 よく見てなかったから、どんなものかは知らないが。


「あ、帰ってきたねぇ。それじゃあ僕も行くとするかなぁ〜」


 やっと帰ってくれるのか、とシルバーは溜め息をつく。

 しかしソファから立ち上がったところで、「あ、そうだぁ」とカールが思い出したように言う。


「なんだよ、まだ何かあんのか」

「大したことじゃあないんだけどぉ〜」


 こてんと首を傾けながら、そのフードの下でカールの口元が綺麗に弧を描いた。

 

 

 

 

「ーーーーー」

 

 

 

 

 彼から発せられた言葉に、シルバーは大きく目を見開く。

 


「お前っ、」

「だいじょーぶ。僕は誰にも言わないよぉ」



 くすくすと笑いながら、ばいばい、と小さく手を振り、次の瞬間カールの姿は部屋から消えていた。

 先程の言葉に思わず立ち上がってしまっていたシルバーは、ドスンと再びソファーに座り沈み込む。


「……あいつ、気づいてやがったのか」


 本当に、あいつは侮れない。

 

 くしゃりと前髪を掴み、シルバーはつい先程まで彼がいた場所を静かに睨んだ。

 

 


「シルバー?」

「…」

「おーい、シルバーさんやーい」

「…どうした」

「それはこっちの台詞です。ってあれ?カール、帰っちゃったんですか?」

「ああ、さっきな」


  リオの呑気な声を聞き、思わず溜め息が溢れる。


「そろそろ夕食にしません?」

「……そうだな。今日は、疲れた」

 

 

 

 リオの声に、シルバーは静かに同意した。

 

 

 





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