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赤字続きの魔石細工店  作者: 夜風
第三章
12/123

魔石細工の力

 





 

 

「なんでてめえがこんな所にいやがる」

 



 黄緑色の頭に緑の右目と金の左目という奇抜な見た目のカールが、シルバーの知り合いであることは本当であったようだ。

 …シルバーの表情を見る限り、歓迎されているとは思えないが。



「いやぁ〜たまたま近くを通ったからねぇ〜。久しぶりに間抜けなシルバーの顔でも拝みに行こうかなぁ〜って」

「誰が間抜けだって!?」

「それにしても大きくなったねぇ〜あんなに小さかったのに〜」

「てめえ…それはいつの話だ!だいたい、大人になってからだって、何回か顔合わせてるだろうが!」

「でもさぁ、僕びっくりしたよぉ〜。まさかシルバーが他の人と一緒に暮らしてるなんてさぁ」

「人の話を聞け!!」

「あ〜はいはい。相変わらずシルバーはうるさいねぇ〜。そんなに僕に会えたのが嬉しい〜?」

「誰が嬉しいって!?むしろ大迷惑だ、このボケナス!さっきから間抜けだのチビだの煩いだの…俺を怒らせるのがそんなに楽しいか!?」

「勿論〜楽しいに決まってるじゃん〜」

 

 

「ーーーっああ!もう我慢できねえ!カール、表へ出ろ!徹底的にぶちのめしてやる!!」

「あ、我慢してたんだねぇ〜僕分からなかったよ〜ごめんねぇ」

 


 なんだろうか、これ。

 

 リオは終わりの見えないこの二人のやりとりに呆れた視線を向ける。

 どうやらカールはシルバーを怒らせるのが面白いらしく、先ほどからシルバーをおちょくってばかりいる。

 シルバーもシルバーで、いちいちそれに反応するものだがら二人の応酬には果てがない。

 顔を真っ赤にして怒るシルバーに対し、カールはケラケラと笑いながら「何で勝負する〜?」と言いだす始末である。


「セシリアちゃん。間違ってもあんな大人になっちゃいけませんよ」


 にっこりと微笑みながら言えば、セシリアちゃんは呆然と二人のやりとりを見ながら、小さく頷いた。

 


「まったく、シルバーはもう少し言葉遣いに気をつけたほうがいいよぉ〜?お兄ちゃんには敬語を使ってもいいんだよぉ〜?」

 


「え、キョーダイなんですか?」

「ちげぇ!断じてちげぇ!何が悲しくて、こんな奴と兄弟にならなきゃいけねえんだ!!」

 


 あ、違うんだ。

 そしてカールのお兄ちゃん発言で彼は男であると判明。


「だいたい、似てるところなんかねえだろ!!俺はこんな奇抜な色じゃねえし、こんな間抜けヅラでもねえぞ!」


 憤ったシルバーが、グイッとカールのフードを引っ張る…カールの首が絞まっている。

 まあ、確かに髪も瞳の色も全く違うけど。

 しかし兄弟云々よりも、カールの方がシルバーより年上という事実に、リオは思わずカールとシルバーを何度も見比べてしまう。


「でもさあ、僕の方が年上だし〜?付き合い長いんだしぃ?」

「てめぇみたいな兄貴は死んでもごめんだ!!」


 はあ、とリオは深い溜め息を吐く。

 そろそろ止めるか。


「シルバーさんシルバーさん」

「なんだ!?つーかさん付けするなっていつも言って、」

「あーはいはい、すみませんでした。で、そろそろ戯れるのは終わりにしてくれませんかね?」

「誰が、誰と、戯れるって!?」


 こちらに怒りの矛先が向けられたが、内心「あ、これ確かに面白いわ」と、リオはカールがシルバーをおちょくる気持ちが分かってしまった。


「どうどう。実はお客さんがいらしてるんですよ」

「俺は馬じゃねえっ!!って客が?なら、先に言いやがれ!」


 意外にもすぐに鎮火したシルバーは、ようやく店内のセシリアとノエリアの存在に気がついたようだ。


「お久しぶりですシルバーさん」

「ああ、あん時のガキか」

「セシリアちゃんです」

「そっちは、てめえの姉か?」

「はい、妹がお世話になりました。姉のノエリアです」

 

 相変わらずぶっきらぼうな態度のシルバーに対し、しっかりと挨拶をするセシリアと、礼を言いながらお辞儀するノエリア。


「で?姉妹揃って、今度は何の用だ?」


 そこで、リオが二人はシルバーに改めてお礼を言いに来たのだと説明する。


「あの、シルバーさん、本当にありがとうございました!!」

「私からも、心から感謝申し上げます。あんなに素晴らしいものを作ってくださって…最初にあの魔石細工を見た時はあまりの美しさに声がでませんでした」


 感謝する二人の眼差しに、シルバーはそっぽを向く。


「別に。そんな礼を言われるほどのことでもねえよ」

「でも、本当に感謝してるんです。それに、この一ヶ月で姉の容態もお医者様が驚くほど回復したんです!きっと、これもシルバーさんの魔石細工のおかげです!」

「ええ、本当に」


 ねー?と姉を見て笑うセシリアに、ノエリアも優しく微笑む。

 

「んなわけねぇだろ」

「まあまあ。でも、良かったじゃないですか。魔石細工のおかげかは分かりませんが、実際にノエリアさんは病から回復したんですし」


「いやいや〜セシリアちゃん?の言ってることはぁ、間違ってないと思うよ〜?」


 それまで面白そうにこちらのやりとりを見ていたカールが、話の中に入ってきた。

 彼の言葉に、リオはカールの顔を凝視する。


「え、それって本当ですか?」

「あれぇ?もしかして、知らないのぉ?」


 少し驚いたように目を見開いた後、クスクスと笑うカール。

 

「リオちゃんは、魔石細工についてどこまで知ってるの〜?」

「えっと…ある魔石から作られていて、魔力を流し込むことによって形を変形させるんですよね?」

「うんうんそうそう〜合ってるよ〜。…でも、そっかあ。それだとほとんど何も知らないんだねぇ」

 

 その通りであると自覚しているリオは小さく頷く。

 拾われたばかりの頃は作業部屋にすら入れてもらえなかったし、今も集中する彼の邪魔になってはいけないと思い、魔石細工を作る工程をまじまじと見るようなことはなかった。

 

  「取り敢えず〜今回のことで言うとぉ、シルバーの魔石細工が〜そこのお姉さんのびょーきを治したのは本当かもってこと〜」

「そんなことが、可能なんですか?」

「魔石細工を作るときには、魔力を込めるって言ったでしょぉ?だから、治癒に関係する属性を帯びた魔力を込めればぁ、微力だけど、癒しの効果も無きにしも非ず〜。…みたいな〜?」


 その説明に、リオはとても驚いた。

 まさか魔石細工にそんな力があったとは。

 それはシナモン色の姉妹も知らなかったようで、リオと同じように驚いた顔をしていた。


「まあ、と言っても魔石に込められる程度だからぁ、おまじない程度にはなっちゃうけどねぇ〜。だから、そんな訳ないっていうシルバーの言葉も間違いじゃないんだよぉ〜」


 確か癒しの効果があるとしたらぁ…と何やらブツブツと言い始めたカールを他所に、セシリアとノエリアは再びシルバーに全力でお礼を言い始める。

 カールはおまじない程度だと言ったが、それでも魔石細工にそんな力があるのは事実だ。

  二人がシルバーにますます感謝の念を抱いたのは至極当然の流れであったと言える。

 


 感謝された本人は再びそっぽを向いてしまい、それを見たカールは腹を抱えて笑っていた。

 

 

 


 

 


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