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美しいもの
きらきら。
それは冷たい夜に浮かぶ月のように美しく輝いていた。
その色が特別な色であると知ったのは大分後のことであったが、初めてそれを目にした時、どうしようもなくその美しさに心を奪われたのを覚えている。
そして、その色と同じ色を持つ彼はそんな私の様子に可笑しそうに目を細めた。
繊細で、少し触っただけでも壊れてしまいそうなのに、その造形は何処か凛とした美しい強さも兼ね備えていた。
初めて目にしたそれは花の形をしていた。
「そんなにそれが気に入ったか?」
花に見惚れて半ばぼうっとした意識の中、その声に応えることは出来なかったが、彼は私の様子を見てその花を手に取った。
「なら、くれてやるよ」
気づけば、そっとその花が目の前に差し出された。
恐る恐る両手で受け取ったその花は、まるで生きているかのように輝いていて、私の心に、もう忘れかけていた温かい何かを灯してくれた。
あの日から、私はあの美しさに魅せられたままでいる。
※以前投稿していたサイトの閉鎖に伴い、なろうに移行してきました。